
70年代初頭、ビートルズが解散、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスンがこの世を去り、世間ではヒッピーやサイケデリック等のフラワー・ムーブメントが世界中を覆っていた。そんな混沌とした世界の中で、音楽界でもっとも危ないと言われていたのが、常にスキャンダルで世間を騒がしていたザ・ローリング・ストーンズであった。しかし、そんな世間の反発など意に介さず、彼らはヒット曲を発表しつづけ、その人気は衰えるどころかますます加速し、絶頂期に向かって上昇していた。まさに若きロック・スターを体現していたのである。
本作は1972年の名盤「メイン・ストリートのならず者」リリース後の北米ツアーをとらえたもので、1974年に一度は映画として完成したものの、一般に公開されることなく40年近くお蔵入りになっていた幻の作品である。
最強のライブ・バンドと言われているストーンズ、その歴史の中でもこの'72~'73に行われたツアーは、まさに最強のライブであったということはファンの間では有名で、ミック・ジャガーも後年この時期が最も音楽的に充実していた時期だったと語っている。そのため、翌73年に予定されていた日本公演がメンバーのさまざまなスキャンダル問題で中止になったことは、日本のファンにとっては悔やんでも悔やみきれない事件であった。
本作はこの'72~'73年のツアーを捉えた唯一と言ってよい正式なライブ作品で、映像・音ともに最新のリマスタリング技術で蘇っている。これは、最高のロックン・ロール・バンドの若き日のライブというだけでなく、ロックの歴史を体験することができる作品なのだ。
(1972年収録・2010年リマスター/83分/カラー)

「ひえー、まじ、ほんと?」。上映決定の知らせを受けて、驚き跳び上がった。
言うまでもなく「ライヴ演奏」を金科玉条とするローリング・ストーンズの最も才気あふれる充実した時期の「伝説となっていた映画の初公開」である。しかも最新技術を駆使してリマスターされたクリアな最新映像。その上、大画面上映ともなれば、狂喜乱舞せざるをえないだろう。
映画の舞台は、6月24日テキサス州フォートワースと25日ヒューストンで行われた昼夜2回、合計4公演を、あたかも1回のコンサートのように巧妙に編集されオーヴァーダビングされて出来上がっている。
セットリストはヒット曲をおりまぜて全15曲。何と言ってもミック・テイラーの珠玉のギター演奏が各楽曲を立体的に際立たせ、素晴らしく美しい。この映画の重要な脇役はミック・テイラーの卓越した技量である。
今ではなかなか見られない「ミックとキースの対面ワンマイク」歌唱シーンは興奮の域を超え息をのむ。また「オール・ダウン・ザ・ライン」でのキースのワイルドで本能的なギター演奏は、超絶プレーと言えよう。それ故にギター演奏を中核としたバンド・アンサンブルが最高潮に展開され、ストーンズ・ライヴ史上「絶頂期」と言われる所以だろう。
この映画は、1974年1月に完成し、4月15日ニューヨークのジーグフェルド劇場でプレミア公開が行われた。当初16ミリフィルムで撮影し35ミリに変換されたと言う。
ファンの間で妄想と現実が交錯し肥大したストーンズの’72年が、今になって奇跡的によみがえる。
蛇足だが、僕はこの約1年後の’73年9月にロンドン・ウェンブリーでストーンズを実体験して、人生が変わってしまったのである。すべてのロックファン必見の映画である。
※2010年の初上映の時のコメントです。