武満徹、一柳慧などと共に日本の現代音楽界を牽引し、数多くの映画音楽も手がけてきた林光。喜寿を迎える林光にとって今年は「林光の音楽」という彼の60年間に渡る軌跡を捉えたCD20枚を含む書籍の刊行、盟友 新藤兼人監督の新作『石内尋常小学校 花は散れども』公開など、記念すべき、注目すべき1年となっている。
この特集上映〈映画音楽家 林光の世界 −大島渚、新藤兼人から渥美清、勝新太郎まで−〉では「林光の音楽」に自選された映画作品から12作をセレクト。
林光の映画音楽という側面から、時にゲストのトークを交え、日本映画の傑作、秀作を捉えていく。
『第五福竜丸』
(1959年/モノクロ/107分/近代映画協会)監督・脚本:新藤兼人
脚本:八木保太郎
出演:宇野重吉、乙羽信子、小沢栄太郎
毎日映画コンクール音楽賞 受賞
キネマ旬報日本映画ベスト10 第8位
林光が盟友 新藤監督とコンビを組んだはじめての作品。ビキニ環礁沖での水爆実験のため被爆したマグロ漁船「第五福竜丸」の乗員と家族の物語をドキュメンタリータッチで描いていく。
『裸の島』
(1960年/モノクロ/95分/近代映画協会)監督・脚本:新藤兼人
出演:乙羽信子、殿山泰司
モスクワ映画祭音楽賞 受賞
キネマ旬報日本映画ベスト10 第6位
過酷な自然条件の孤島で畑仕事をしながら、黙々と暮らす家族の姿を描いたヒューマンドラマ。台詞は一切なく、自然音と林光の音楽で語れる世界は圧巻の一言。新藤監督、林光の代表的傑作。
『名もなく貧しく美しく』
(1961年/モノクロ/129分/東宝)監督・脚本:新藤兼人
脚本:八木保太郎
監督・脚本:松山善三
出演:高峰秀子、小林桂樹
ブルーリボン賞 脚本賞 受賞
キネマ旬報日本映画ベスト10 第5位
脚本家として活躍してきた松山善三監督のデビュー作。聾唖の夫婦が太平洋戦争から戦後にかけての困難を乗り切っていく姿を描いた感動的なメロドラマ。言葉のない主人公に林の音楽が効果的だ。
『秋津温泉』
(1962年/カラー/112分/松竹)監督・脚本:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、長門裕之
キネマ旬報日本映画ベスト10 第10位
女優岡田茉莉子の出演100本記念として、吉田喜重監督により撮られた悲恋メロドラマの逸品。男と女の情事を時代の変遷に重ねた演出も素晴らしい、松竹ヌーヴェルバーグの代表作。
『真田風雲録』
(1963年/カラー/100分/東映)監督:加藤泰
原作・脚本:福田善之
出演:中村錦之助、渡辺美佐子
真田十勇士の物語を独自に解釈した、ミュージカル時代劇。オリジナルは福田善之の戯曲。異色な展開、ミッキー・カーチスなどのキャスティング、ロック・・・、カルトに相応しい1本。
『白昼の通り魔』
(1966年/モノクロ/99分/松竹)監督:大島渚
脚本:田村孟
出演:川口小枝、小山明子、佐藤慶
キネマ旬報日本映画ベスト10 第9位
林光が新藤監督と共に印象深いと語る大島渚監督とはじめてコンビを組んだ作品。頻発する白昼の通り魔事件、知人であった犯人の男と襲われた女の関係を軸に人間の内面を抉るドラマ。
『アンデスの花嫁』
(1966年/カラー/103分/東宝)監督・脚本:羽仁進
出演:左幸子、アンセルモ福田
キネマ旬報日本映画ベスト10 第6位
羽仁進監督がアンデスでのオールローケーションで描く、ペルーへと嫁いだ日本人花嫁の異文化との邂逅、成長のドラマ。直感を働かせアンデスの風土を描いたという林の音楽も見事。
『白昼堂々』
(1968年/カラー/81分/松竹)監督:野村芳太郎
出演:渥美清/倍賞千恵子/田中邦衛
傑作喜劇『拝啓天皇陛下様』(1963)を生んだ渥美清と野村芳太郎のコンビによる“スリ集団”を主人公とした人情喜劇。この翌年、『男はつらいよ』で兄妹となる渥美、倍賞のスリ夫婦も見もの。
『少年』
(1969年/カラー/97分)監督:大島渚
出演:渡辺文雄、小山明子、阿部哲夫
キネマ旬報日本映画ベスト10 第3位
当時、世間を大きく揺るがせた「当たり屋」事件をもとに、大島監督が描くロードムービー的ドラマ。少年の細やかな心理描写、それに添う林の音楽が素晴らしい。大島、林コンビ最後の作品。
※ニュープリント
『やくざ絶唱』
(1970年/カラー/94分/角川映画)監督:増村保造
脚本:池田一朗
出演:勝新太郎、大谷直子、田村正和
大ヒット作『兵隊やくざ』(1965)の勝新太郎と増村監督のコンビが描く、血のつながりのない妹を異常なほど溺愛するばかりにトラブルを起こすヤクザの物語。増村らしさに満ちた愛憎劇。
『恋の夏』
(1972年/カラー/100分/東宝)監督:恩地日出夫
脚本:山田信夫
出演:ルノー・ベルレー、小川知子
『伊豆の踊子』、『あこがれ』など青春映画で新境地を開いた恩地監督が描く、フランス人男性と日本人女性の国境を越えたラブストーリー。恩地監督と林光にとっては待望の唯一のコンビ作品。
『三文役者』
(2000年/カラー/126分/東京テアトル)監督・原作・脚本:新藤兼人
出演:竹中直人、荻野目慶子、吉田日出子
キネマ旬報日本映画ベスト10 第6位
新藤作品には欠かせぬ役者であった名バイプレイヤー殿山泰司の死までの半生を描いた近代映画協会設立50周年記念作品。殿山、新藤監督にオマージュを捧げた林光の音楽も聞き所。
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