『呉清源 極みの棋譜』 田壮壮監督&主演チャン・チェン記者会見

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8月29日 東京・渋谷セルリアンタワー東急ホテルにおいて、この11月にシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー公開される『呉清源 極みの棋譜』の監督 田壮壮と主演 チャン・チェンの来日記者会見が行われた。先日、惜しくも亡くなってしまったエドワード・ヤン監督、ウォン・カーウァイ監督、ホウ・シャオシェン監督など中華圏を代表する監督たちの作品に出演し、ジョン・ウー監督の大作なども控えているアジア圏を代表する実力派俳優チャン・チェン、寡作ながらも圧倒的な世界観を持つ作品を送り出し、世界中で評価される田壮壮監督、揃っての来日会見ということで、会場には用意した椅子に座りきれないほどの取材陣が集まった。

初めての出会いにも拘らず、お互いに「“縁”を感じた」というふたりは、取材陣からの質問の最中にも小声で言葉をかけあい、笑みを浮かべるなど、その関係の良好さ、出来上がった作品に対する満足度をこちら側にも十二分に感じさせた。田監督はこの作品を撮った理由について「映画監督とは、映画という舞台を借りて、自分が言いたいことも表現していく職業だと私は思います。私は呉清源先生の人生を描いた書籍を読み、しっかりとした信仰を持ち、自分の精神を探求されていく呉清源先生の生き方に尊敬の念を抱きました。現在の社会の中ではそういう精神を持った人が少ないからこそ、私はこの作品を撮りたいと思いました」と発言。ただ、資金繰りや、撮影中の演出面、日本での撮影スタイル、コミュニケーションなど苦労も耐えなかったという。撮影自体はスタッフの家族的な雰囲気の中、順調に進んでいったというが、それを裏打ちするようにチャン・チェンは「(良い撮影環境のおかげで)自分も満足する演技ができました。このような感覚はなかなか体験することが出来ないと思います」と語っていた。

撮影に際し、田監督は呉清源先生と何度も深いコミュニケーションを取り続けたというが、チャン・チェンは呉清源先生に会い、色々な話を聞いた印象を「最初にお会いしたときは非常に穏やかな方だな、お話してみると特別な方だなという印象を持ちました。記憶力が飛びぬけて素晴らしく、いつ、どこで、誰と会ったのかということもはっきりと語り、昔のフィルムを観た後で、その対局の様子を碁盤に再現してくれます。我々、役者なんかとは格段に違う大きな器の方です。ひとりの人間がひとつのことに専念し、情熱を燃やし、通すということ、その精神力は本当に素晴らしいと感じました」と語った。会見の最後にはスペシャルゲストとして、呉清源先生が登場。体調があまりすぐれないということで、写真撮影だけだったが、田監督、チャン・チェンとの再会を喜び合っていた。そして、もちろん、その姿には言葉では語りつくせぬ圧倒的な存在感が漂っていた。

作品の主題のひとつでもある囲碁について、チャン・チェンは「この作品のおかげで、以前は全く知らなかった囲碁の世界に接することが出来ました。囲碁は奥深いゲームで、そこを通じて自分自身の性格も知ることが出来、物事を考えるとき、ひとつではなく、いくつかの考えも浮かびます。ただ、残念なことに、この作品以降、囲碁をやる機会はなく、未だに下手です」、田監督は「作品を撮り終えて、碁石を触らなくなりました。新布石、十番碁などを見て、囲碁が分かってきたという一瞬があったのですが、その一瞬のおかげで囲碁の世界の難しさ、奥深さ、自分が指し手ではないということにも気付きました。これ以上触ると恥ずかしいと思い、囲碁には触れなくなりました」と発言。


田監督らしい映像の美しさ、物語の持つドラマ性はもちろん、囲碁という世界、呉清源先生の生き方の持つ精神性に魅了され、その世界を感じたからこそ、生まれたであろう『呉清源 極みの棋譜』という作品世界。その世界を垣間見ることが出来る、記者会見だった。


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