『WHITE MEXICO』主演 大江千里インタビュー

内容

1990年に公開されたラブコメディ『スキ!』以来、17年ぶりの主演作となるこの作品『WHITE MEXICO』について大江千里さんは「脚本がとにかく面白かった」という言葉から語り始めた。「佐藤という全てをなくした男が究極的などん底状況の中で、天使のような女性と出会い、蘇生していく様子、その台詞の間からあぶりだされる景色がとにかく鮮やかで、この役をやってみたいと思ったんです」。もちろん、今までにない役柄には「出来るだろうか」という不安も抱えたが、「痛みや挫折、あきらめたくない気持ち、報われない部分を抱えながら生きてきた40代を役柄に滲み出すことが出来るのではないか」とも感じ、この作品への出演を決めたという。

井上春生監督からは撮影前に「髪も切らず、髭も剃らず、少し痩せてくれ」という指示があったというが、今現在、目の前にいる大江さんも白いものが混じった無精髭姿。まるで映画の中で演じた佐藤が飛び出してきたかのようでもある。撮影の1ヵ月ほど前から監督に指示された役作りを開始し、鏡の前に立つたびに「ホームレスチックだな(笑)」と感じていたというが、そうした風貌となり、脚本を読み、稽古をしだした頃には佐藤というキャラクターになりきっていたという。脚本は「繰り返し読み、“・・・・”の数まで記憶し、現場には一切持ち込まなかった」が、そうした部分も実際の撮影では監督に壊されることが度々だった。ただ、それはアドリブの応酬のジャズ・セッションのようなもので「壊される快感も含め、困惑ではなく、楽しかった」という。その楽しさも脚本を食べるほど読み込むことで確実に感じ取ったものがあったからこそである。大江さんはそうした部分を「この脚本の台詞はポエムであり、そのポエムとポエムの間にある“・・・・”を膨らませる作業がとてもイマジナリーで楽しかった。そこを持ちながら現場に入ったので、壊すにしても、戻すにしても、その場で作り上げていくにしても、監督たちと深いところまで力を込めてキャッチボールしている感覚がありました」と語っている。実際に出来上がった作品を観たときは「佐藤は“・・・・”の演技が多かったのですが、実は無言の間は心でずっとしゃべり続けている男なので、しゃべっているな」という役者としての手ごたえを感じたという。

この作品はひとりの男の希望を描いた作品でもあるが、その希望について「希望とは自分の中にあり、その心の中にある声を聞くことが出来るかにある。それが希望に繋がっていくと思う」と長い活動の中で、時には周囲の意見を振りきり、自分の心の声に従い、新しいことを始めることで、結果的に何かを捨ててきた経験から大江さんは語る。例えば、この作品に主演するということも大江さんにとっては大きなチャレンジであったはずだが、この作品で掴んだ手ごたえは自身にとっての勇気となり、確実に今後の活動へも繋がって行くという。それがどのような形で出てくるのか、ファンとしては興味深く、楽しみなところだろう。

この作品の上映の期間中は「愛情を注ぎ込み、何度も劇場に足を運ぶ」という大江さんは「69分という時間枠の中で綴られる今までにない流れをスクリーンで体感して欲しい」「特に同世代の方には諦めずにやってみようという気分、少しは気持ちが楽になるという部分は起こせると思う」と作品を観る方にメッセージを残してくれた。確かに多少なりとも人生に疲れ、行き詰まっている同世代にとっては少しの勇気となる作品だろう。しかも客席を見渡せば、主演者本人がすぐ傍にいるかもしれないのだから、たまらないはずだ。

『WHITE MEXICO』は8月18日より、お台場シネマメディアージュ他で順次ロードショー。シネマート六本木で9月8日より、ロードショーです。

また、9月19日には、作品の中でも強い印象を残す、大江千里さんによる挿入歌『静寂の場所』がシングルとしてリリースされます。

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