プロダクション ノート
原作は、全世界の少女たちに夢を与え続ける
ジーン・ウェブスターの最高傑作『あしながおじさん』
女流作家ジーン・ウェブスターが、1912年に発表した児童文学の最高傑作『あしながおじさん』。全編が書簡形式という特殊な構成で成り立っているこの小説は、資産家の評議員(あしながおじさん)に文才を見込また孤児院の少女ジュディが、資金援助を受けながら彼宛の手紙に学校生活の様子などを綴っていくというもの。最後にジュディが、あしながおじさん(実は彼女の密かな想い人だった青年)と愛を成就させるシンデレラ・ストーリーには、多くの少女たちが胸をときめかせてきた。『ふたつの恋と砂時計』の企画・脚本を担当したキム・ヒョンジュンは、インターネット・コミュニティでの自分のIDを“あしながおじさん”とするほどの原作の愛読者。その彼が、“あしながおじさん”の隠れた愛情の実践は男女間のロマンスを越えて、より大きな意味での愛を盛り込むことが可能だと考え、シナリオを構想した。
埃だらけのLPレコードが無数に詰まった資料室の撮影現場秘話
ヨンミが勤めるラジオ放送局内の資料室は、放送作家であるヨンミが音楽に関連するネタを求めて時間を過ごす日常的な空間であるとともに、初恋相手である資料室の職員、ジュンホとの初々しい愛がはぐくまれるロマンティックな空間でもある。そんな重要な役割を果たすこの資料室のロケ地は、実は清州大学の図書館だった。そして、大学の教材や専門書籍がうずたかく積み上げれた図書館を、本物そっくりの放送局資料室に変身させるために、なんと一万枚に達するLPレコード盤が運び込まれた。
CDやMDが当たり前になった近頃、レコード盤は簡単に入手できる小道具ではない。そのため小道具チームは老舗のレコード店を一軒一軒訪ね歩いた。そんな苦労の末、一万枚に達するレコード盤を確保した彼ら。しかし、そのレコード盤に一緒に付いてきたのが、長い年月にわたって積み重なった膨大な埃という伏兵であった! セットの準備の合間に一万枚のレコード盤のホコリを黙々と拭い取る小道具スタッフたち。そうしないと撮影場は白っぽく黴臭い埃でいっぱいになって、とても撮影などできなかっただろう。そこまでやっても、撮影現場では皆くしゃみが止まらなかったという。しかしその一方で、懐かしい時代のレコード盤を見つける度に、皆それぞれ思い出にふけり、辛い作業の合間の小さな楽しみになったという。
白っぽい埃と制作陣の貴重な汗で完成した資料室は、映画の中、最もリアルであるとともに、温かい雰囲気の感じられる空間として記憶に残るだろう。
最先端のMCC撮影で完成された幻想的なクライマックス!
『ふたつの恋と砂時計』のクライマックスは、ある空間のなかで現在と過去が交差する複雑な状況が絡み合う、後半部分の三分間。重層的な意味を帯びる空間、それ自体がひとつのストーリー効果を及ぼすものであるために、現場の物理的な制約をできる限り排除するとともに俳優たちの集中力を一瞬に最大化させる必要のある場面だ。よって、制作チームはそのシーンの撮影にあたって感情の流れを切らすことのないよう最先端のMCC撮影を選択した。前作『ベサメムーチョ』でMCC撮影を試みたことのあるパク・ヒジュ撮影監督は、一般のカメラで撮影するといくつものカットに割って撮影することになるため演出家の意図が十分にいかされないと判断し、MCC撮影を提案した。ひとつの空間の中に共存することのできない過去と現在という、二つの時の状況が一つのフレームの中に共存させるためにはMCC撮影は必要不可欠な選択であった。
 “モーション・コントロール・カメラ(MCC: Motion Control Camera)”は俳優やその他の被写体の動きのデータが入力されたコンピューターでカメラを制御し、決められたフレームの中で正確な撮影を可能にする最先端の装備のこと。同じアングルと動線のシーンを繰り返し撮影する必要がある今回の撮影には、反復可能でかつ正確な水平のラインだけでなく、多くの軸による直線的動作や曲線的動作を表現することが可能なこの装備が最適だった。3Dイメージとの合成や結合、またいくつものシーンの合成などのCG効果を通じ、創造的な作業が可能になるのである。MCCは『ロード・オブ・ザ・リング』や『ロスト・イン・スペース』など、主にSF映画や戦闘シーンのある映画によく使われる。韓国映画では『ブラザーフッド』での群集シーンで使用された。『ふたつの恋と砂時計』撮影当時、韓国には政府の情報通信部が所有する三台があるのみだった。
近年になりCFやミュージックビデオなど、さまざまなジャンルでMCCが使用されることが増えてきているが、撮影当時、映画撮影として使用するにはまだ珍しい装備だった。まるでロボットのような形の二メートルにもなる大きな装置のMCCを見てほとんどのスタッフたちが驚いたそう。しかし動線のあるいくつもの画面を重ねて表現するとき、平面ではなく三次元の座標を使うのでセッティングにじつに5〜6時間を要する大変な作業でもあった。それだけに、スタッフたちの徹底的な事前準備が不可欠となる。こうしてMCCによる撮影が行われる間中、すべての現場スタッフたちは超緊張状態を強いられたのだった。
このように徹底して計算され制御されたセッティングのもと、俳優たちは現実にはありえない過去と現在が共存する状況から生じる繊細かつ微妙な感情に十分に没頭することができた。彼らの感情が絶妙にマッチしたクライマックスシーンはスクリーンの中に見事に再現されている。
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