インビジブル・ウェーブ

イントロダクション&ストーリー

マカオにある自分の粗末なアパートメントで女と逢引をしているキョウジ。料理人である彼は手料理を振舞った後に彼女を殺す。翌日、勤務先である香港のレストランに出向いた彼はボスに閉店による休暇を言い渡され、事前に用意されたチケットで船に乗り、タイのプーケットへと向かっていく。

タイのプーケットへと向かったキョウジは船中で不思議な出来事に遭遇しながらも、赤ん坊を連れた美しい女性と出会い、楽しいひと時を過ごしていく。しかし、船にはそんなキョウジをつけまわしているような、アロハシャツ姿の不審な男もいた。そして、プーケットでキョウジは大きなトラブルに見舞われていく。

コラム・見どころ

この作品は世界が評価するタイ映画界の才能であるペンエーグ・ラッタナルアーン監督、作家だけでなくアート・シーンでも活躍するなど、タイのカルチャーシーンを牽引する、脚本のプラープダー・ユン、独自のカメラワークで世界的な注目を浴びている、撮影のクリストファー・ドイル、そして日本映画界を代表する俳優である浅野忠信が再び集結した作品である。その彼らの出会いとなった『地球で最後のふたり』はヴェネチア国際映画祭コントロコレンテ部門の主演男優賞を浅野忠信にもたらすなど、世界的に高い評価を獲得。この作品もベルリン映画祭コンペティション部門への正式出品をはじめ、世界各国の映画祭で上映され、高い評価を獲得してきている。

この作品は女を殺し、マカオの粗末なアパートメントから船とケーブルカーに乗り、香港の高みにある職場のレストランへ。そこから下り、船に乗り、今度はプーケットへ向かうキョウジの足跡、放浪を描いていくロードムービーである。ペンエーグ・ラッタナルアーン監督の作品はひとりの男がここではないどこかにある居場所を求めて、身体はもちろん、心も彷徨わせていくというテーマが多いのだが、この作品でもキョウジはあるはずもないが、あるかもしれない居場所を求めるかのように移動させられていく。

クリストファー・ドイルによる魅惑的な映像、クラブ・ジャズ・テイストの音楽、映像に捉えられた自然音・・・・、これらと一体になったキョウジの足跡が生み出す“波”にゆったりと包み込まれていくように物語は進む。この波のような揺れ、謎、ノワール、コミカルなノリも取り込んだ展開はこの作品の大きな魅力になっている。

出演は主演の浅野忠信のほか、韓国からカン・ヘジョン、香港からエリック・ツァン、日本から光石研、タイからトゥーン・ヒランサップなどアジア映画界を代表する個性派が集まり、それぞれの持ち味を存分に発揮している。ペンエーグ・ラッタナルアーン監督はこの作品について、前作『地球で最後のふたり』とは違い、物語と展開がある古典的な映画スタイルを目指したが、映画の方がひとり歩きしてしまったとインタビューで語っているが、そのひとり歩きは監督自身が目指したものでもあり、映画的魅力に溢れた世界を生み出している。

マカオ、香港、プーケット(タイ)という東南アジアの土地、タイ、韓国、香港、日本というアジアの映画界を代表する俳優やスタッフたち、この作品はアジアのコラボレーションが生み出したこの魅惑的な、今後に繋がっていくであろう1本だ。

キャスト・スタッフ

出演:
浅野忠信/カン・ヘジョン/エリック・ツァン/光石研
監督:
ペンエーグ・ラッタナルアーン
撮影:
クリストファー・ドイル
脚本:
プラープダー・ユン
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