サイドカーに犬

イントロダクション&ストーリー

不動産会社に勤務する薫。彼女は久々に弟に会い、披露宴の招待状をもらう。両親が離婚したことで離れて暮らしていた姉弟。彼女が思い出すのは、その離婚の直前、20年前の夏の日の出来事だった。その時、薫は小学校4年生。夏休みが始まる前日に母親は突然家を出て行き、父親と弟との暮らしの中にある女性がやって来る。

その女性の名前はヨーコさん。彼女は父親に頼まれ、薫たちの食事の面倒などをみるためにやって来たのだった。タバコはスパスパ吸うし、つっけんどんとしてて、強いヨーコさんは麦チョコを山ほど買ってくれたことで、薫と弟に強烈な印象を与える。そんなヨーコさんに薫は興味を抱き、自然と引き寄せられていく。

生活力のない駄目な父親に愛想をつかして、突然消えてしまった母親。そこに突然やって来た謎の女性。子供にとって最高の時期である夏休み。この作品の監督である根岸吉太郎は「“夏休み”という語感が好きです。“謎の女”というイメージにも心惹かれます。そのふたつをいっぺんに味わえる映画を撮らない理由はありません」と語っている。何をしているのか分からない“謎の女”ヨーコさん、片手間のような怪しい中古車業を始めた父親など、子供たちだけでなく、大人たちの生活はその場しのぎで、先が見えず、自由奔放な永遠の夏休みのようだ。

コラム・見どころ

主演のヨーコさんを演じるのは人気若手女優 竹内結子。2年ぶりの映画出演作となるこの作品で彼女は今までのイメージとは全く違うキャラクターを見事に演じ、女優としての新たな成長を示している。彼女自身も「これまでにない役所だったこと」を作品への出演動機として語っている。薫を演じるのは『ハリヨの夏』でデビューした期待の子役 松本花奈。その他、古田新太、ミムラ、山本浩司、鈴木砂羽、トミーズ雅、椎名桔平など個性的な面々が出演している。原作は芥川賞作家 長嶋有の同名傑作小説。

大人から見たらどうしようもない奴らかもしれないが、子供の頃はそうした大人の自由さに憧れを抱いてしまう。そんな大人は子供を子供扱いせずにきちんと向かい合ってくれる。時には子供の前で涙するし、深刻な話もする。かと思えば、自分勝手な理由で突き放したりする。そういう大人に出会えた幸せさをこの作品は爽やかなタッチで描いていく。女優としての大きな成長を手に入れた竹内結子の素晴らしさ(間違いなく、彼女の代表作になるだろう)はもちろんだが、映画全体をいい意味での軽いタッチで演出した根岸吉太郎の手腕が素晴らしい作品だ。「ああ、ああいう人いたよな」「ああいう人になれているかな」などと感じてしまうこと間違いなしの、大人だからこそ感慨深くなるだろう夏休みの映画だ。

キャスト・スタッフ

出演:
竹内結子/古田新太/松本花奈/谷山毅/ミムラ/鈴木砂羽/伊勢谷友介/樹木希林/椎名桔平
監督:
根岸吉太郎
脚本:
田中晶子
撮影:
猪本雅三
原作:
長嶋有 『サイドカーに犬』( 文藝春秋刊『猛スピードで母は』所収)
音楽:
大熊ワタル
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