檸檬のころ

イントロダクション&ストーリー

東京の大学への進学を決めている秋元加代子は教師との進学に関する面談を終え、教室に残っていた次の順番のクラスメイトに声をかける。彼女の名は白田恵。彼女も東京への進学を決定している。成績優秀で、吹奏楽部の指揮者でもあるクラスのリーダー的存在の秋元、いつだって音楽にのめり込み、ちょっと斜に構えた性格の白田。高校卒業を目前に、ふたりは様々な経験を重ねていく。

高校卒業までの半年。この作品が描くのはその期間にふたりが経験する初めての恋、友情、将来への希望や現実との葛藤である。それは劇的なものではなく、誰もがあの頃に経験したことのある気持ちだ。秋元は同じ中学からこの高校に進学してきた野球部の西との間にお互いに伝えきれない気持ちを抱えつつ、同じ野球部のエース佐々木に告白され、大きな戸惑いを抱える。いつだって音楽のみのことを考え、音楽ライターを目指す白田は同じように音楽を愛する軽音楽部の辻本に出会う。

秋元は佐々木の告白から付き合うことになり、お昼休みに一緒に弁当を食べたりするが、東京に進学することを決意している彼女と地元の大学にしか行く道のない佐々木の間には気持ちとは裏腹の亀裂が徐々に走り始める。白田は文化祭でバンドをやる辻本に作詞を頼まれるが、うまく書くことが出来ない。しかも、親友の批評が音楽雑誌に採用された事実を知り、自分の才能に自信をなくしていく。そんな中、文化祭という高校生活最後の一大イベントは近づいてくる。

コラム・見どころ

原作は新鋭若手女性作家のひとりとして大きな注目を浴びる豊島ミホの同名連作短編集。豊島ミホは「地味な高校生活を送っている子たちの、そんな生活に輝く一点の星にスポットを当てようと思った」とこの連作小説を書く動機について語っているが、この映画はそうした豊島ミホの世界を見事に切り取っている。そうした世界を築いたのが、監督と脚本を手がけた、この作品が劇場長編デビュー作となる新鋭監督 岩田ユキである。出演は榮倉奈々、谷村美月、柄本佑、この作品が映画初出演となる兄弟ギターデュオ平川地一丁目の林直次郎、石田法嗣などフレッシュな面々が揃った。このフレッシュな面々の中でも出色の出来なのが、谷村美月だ。

多くの方が経験しているだろう高校時代。そこには楽しい思い出もある一方、忘れられてしまいたい出来事もあるはずだ。そうした、永遠に続くことなどない他愛もなく続いていく日常の中で起こっていた瑞々しさや、切なさなどをこの映画は本当にうまく切り取っている。同世代もだが、その時代を経た世代の方がより共感を呼ぶであろう、フレッシュなスタッフ、俳優たちによる清々しさに満ちた青春映画の傑作だ。

キャスト・スタッフ

出演:
榮倉奈々/谷村美月/柄本佑/石田法嗣/林直次郎/浜崎貴司/石井正則/中村麻美
監督:
岩田ユキ
プロデューサー:
黒谷瑞樹
脚本:
岩田ユキ
原作:
豊島ミホ 『檸檬のころ』(幻冬舎刊)
撮影:
小松原茂
  • コメント

一覧へ戻る