あしたの私のつくり方

イントロダクション&ストーリー

小学校時代、寿梨(ジュリ)が欠席している間にクラスの人気者だった日南子(カナコ)はクラスの全員から無視される存在となっていた。卒業式の日、寿梨は本を返却しに行った図書館で日南子と偶然会い、印象的な言葉を交わす。中学でも日南子へのイジメは続き、寿梨は彼女と言葉を交わすこともなかった。そんな中、寿梨の両親は離婚し、母親と暮らすようになる。そして高校生となった寿梨は日南子が引っ越したという話を耳にし、その話をしていた同級生から日南子のメールアドレスを教えてもらい、コトリという偽名で日南子にひとつのメールを送る。すべてはここから始まっていく。

寿梨が日南子に送り始めたメールはお互いの名前をもじり「ヒナとコトリの物語」と名付けられ、ふたりにそれまでとは違う、充実した日々を与え始める。いじめられっ子のままで数年という日々を過ごし、引越し先でも不安を抱える日南子はコトリからのメールを支えに、そのアドバイスに従いながら、クラスの人気者としての日々を送り始める。一方、文芸部に所属し、課題である小説の提出と再婚したげな母親の存在にちょっと憂鬱な寿梨は「ヒナとコトリの物語」を書き、それを顧問の教師に褒められること、そこに持ち場を得ることで自信を取り戻していく。もちろん、日南子は寿梨のことには気付いていない。

「ヒナとコトリの物語」は日南子から寿梨への相談、それに対する寿梨から日南子へのアドバイスという形でひとり歩きしていく。日南子は寿梨のアドバイスに従い、行動をし、寿梨は日南子のために実体験ではない、マニュアルのようなアドバイスを繰り返していく。そんな中、「ヒナとコトリの物語」で手に入れた充実した日々は本当の自分とは違うというジレンマを日南子や寿梨に与え始めていく。結局、それは小学校の頃から感じていた、自分の存在とはという部分へと繋がっていくのだ。

コラム・見どころ

寿梨を演じるのは、注目の若手女優 成海璃子。日南子を演じるのは、この作品が映画デビュー作となる前田敦子。このふたりの若手女優の素晴らしい演技が作品を本当に共感できる素晴らしいものにしている。共演は石原真理子、石原良純、高岡蒼甫、近藤芳正、奥貫薫、田口トモロヲなど。監督は市川準。若い女優の持ち味を出すことでは定評のある監督の手腕がふたりの若手女優の素晴らしさを生み出したことは確かだろう。

この作品の原作者である真戸香は「この小説を読み、映画を見ることで、今年三十歳になった私と同世代の女性、『大人になったジュリやカナコたち』が何かを感じてくれたら、これ以上のことはないと語っている。どうしても流されてしまう日々、「ヒナとコトリの物語」の世界に閉じこもることが出来ず、周囲に関わっていく中で、自分の現実の場所、本当の自分かもしれないもの、その瞬間を手に入れる姿をこの作品は描ききっている。市川準らしい繊細な表現も見事だ。


“大人になったジュリやカナコたち”はそこで見つけた自分は実は本当の自分でありながら、そうでないことも知っている。でも何よりも、その過程や踏み出す1歩が大切なことも知っている。だからこそ、この作品はより多くの大人たちの何処かにしみこんでくる作品になっているはずだ。

キャスト・スタッフ

出演:
成海璃子/前田敦子/高岡蒼甫/近藤芳正/奥貫薫/田口トモロヲ/石原真理子/石原良純
監督:
市川準
原作:
真戸香 『あしたの私のつくり方』(講談社刊)
脚本:
細谷まどか
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