フライ・ダディ

イントロダクション&ストーリー

日々、家族のために働き続けている、平凡なサラリーマンのガピル。ある日、彼の大切な娘が暴行を受け、入院したという知らせが届く。ガピルは娘を暴行した生徒のいる高校へ乗り込むが、先生は「これは子供たちの喧嘩」と取り合わず、娘を暴行した生徒たちに脅され、ガピルは萎縮してしまう。実は娘を暴行したのはテウクという高校ボクシングのチャンピオンで、学校側も名誉のために彼を守っているのだった。病院に戻ったガピルは逆に娘を叱るが、娘は父親のやり取りを全て知っており、父親を拒絶する。立場のなくなったガピルは包丁を手に、その高校へと向かうが、テウクに出会う前に包丁を落とし、その場で気絶させられてしまう。

家族の信頼すら失ったガピルは自暴自棄になり、高校へと乗り込むが、これも失敗。しかし、そこに思わぬチャンスがやってくる。テウクを気絶させた高校生のスンソクの仲間たちが、ガピルの状況を理解し、スンソクがガピルを特訓し、テウクと勝負をさせればいいと提案するのだ。スンソクはその提案を最初は拒絶するが、ガピルの熱意とガピルの娘の状況、やりたい放題のテウクの存在から、コーチを引き受けることになる。

コラム・見どころ

この作品の原作は直木賞も受賞している人気作家 金城一紀による「フライ、ダディ、フライ」。現在、韓国では“日流”という流れがあり、日本の小説などが若者を中心に大きな人気を獲得しているのだが、金城一紀のこの小説も大きな支持を得ているという。実はこの小説は一足先に日本で『フライ、ダディ、フライ』というタイトルで映画化されているのだが、原作の持つ雰囲気をうまく抽出し、エンタテインメント的な面白みをもたらしているのは、この韓国版の方である。

韓国版の方が、日本版より原作の持つ雰囲気を上手く抽出した理由は、父親役(この作品ではガピル)に負うところが多い。このガピルを演じるのは、『公共の敵』『ビッグ・スウィンドル!』など数多くの作品でバイプレイヤーとして活躍するイ・ムンシク。この作品のために体重を15キロも増やし、作り上げたブヨブヨの体と、優しく、でも臆病な人柄がにじみ出たキャラクターが、クールな高校生であるスンソクの訓練により、見違えるように変わっていく様子(この撮影中に15キロの減量をしている)は、父親世代には大きな共感と勇気を沸き起こすはずだ。

そのガピルを特訓する高校生スンソクを演じるのが、『王の男』で一躍ブレイクした俳優イ・ジュンギ。妖艶な女形役だった『王の男』とは180度変わり、ここではクールでカリスマ性を持つ高校生スンソクを熱演している。このスンソクはイ・ジュンギ自身が自分と似通った部分もある等身大のキャラクターと語っているが、そうした部分も含め、役者イ・ジュンギの魅力を存分に味わうことのできる役柄ともなっている。

ブルース・リーのトラックスーツを着こなしたガピルはスンソクの指導の下、小銭を山ほど身に付けての山登り、動体視力を鍛えるためのボールよけ、ロッククライミングなど、過酷なトレーニングをこなしていく。もちろん、禁煙、禁酒。帰りは自宅のあるバス停まで、通勤バスと速さを競い合う。こうして、ガピルの体は見る見るうちに若かりし日の肉体を取り戻していく。そして、このトレーニングの裏ではスンソクの仲間たちが、40日後に設定されたテウクとの決戦にむけての下準備を進めている。

ドキュメンタリー監督として活躍し、この作品が劇映画デビュー作となったチェ・ジョンテは「心が暖かくなるような気持ちのいい映画を作りたかった」と語っているが、ガピルの家族への気持ち、ガピルとスンソクの関係、後味の良さなど、正にその発言どおりの作品に仕上がっている。、通快かつ、ほろりとした気分にさせてくれる幅広い層が楽しめるエンタテインメント作品だ。

キャスト・スタッフ

出演:
イ・ジュンギ/イ・ムンシク/イ・ジェヨン/ナム・ヒョンジュン
監督:
チェ・ジョンテ
脚本:
チェ・ジョンテ
原作:
金城一紀 『フライ、ダディ、フライ』/(角川書店刊)
撮影:
チェ・ジュヨン
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