ひいろ

イントロダクション&ストーリー

上海で学生生活を送る呉彩陽に実家から祖母が倒れたという連絡が入った。急いで実家へと戻った彼女は祖母から「あなたの父親は日本人だ」という耳を疑うような事実を告げられる。太平洋戦争の末期、陶器を探しに上海の祖母夫妻の家を訪れていた父親の実の両親は、ソビエト侵攻という混乱状態から逃げ出すために「必ず、連れ戻しに来る」という約束の下、幼い息子を祖母夫婦に託したというのだった。彼女に証拠の手紙や写真を見せた祖母は自らの自責の念を込めたこの告白の後、亡くなった。そしてその事実を知った呉は単身日本へ向かう決意をする。

戦争の混乱の中、違う国家に置き去りにされてしまった子供たちは数多く存在する。この作品の主人公である女性の父親もそのひとりである。ソビエトの侵攻という混乱の中で一時的に預けられただけだったはずの父親は結果的に中国人夫婦の息子として育てられる。日本からは「迎えに行きます」という手紙が届き、夫による「お待ちしています」という返事も書かれていたが、祖母はその返事を投函することなく、今の土地へ引越し、音信不通となった。祖母が返事を投函しなかったのは父が可愛かった、そして自分が子供が出来ない身体であったからだった。自分の身勝手な行動、後悔の念を祖母は最後に孫に託すように告白したのだった。

窪元を営む父親はすでに亡き祖父から知らされていたその事実を胸に秘め、生活してきていた。父親は祖母、娘、そして自分の想い込め、娘を日本へ向かわせるためにお金を工面し、ビザを取得する。そして、娘に「母親に会えたら、これを渡して欲しい」とひとつの陶器を渡す。それは彼が実の両親と上海を訪れていた時、育ての父が焼いてくれた子供サイズの茶碗だった。

半年のビザで日本語学校へと入学した彼女は学校の先生、アルバイト先の料理屋の女将、そこのなじみ客などに助けられながら、父親の実の母親、彼女にとってのもうひとりの祖母に出会うことになる。この日本での情景は日本語学校に留学する学生たちの姿、異文化での困惑、その困惑が生み出す優しさや更なる困惑をユーモラスかつ時には辛辣な視点を交えながら描いている。物語のクライマックスは彼女が日本で窯元を営む祖母に出会い、邂逅するシーンだ。父親に託されたあの茶碗の果たす役割など、祖母を演じる南田洋子の演技と共にじんわりとした感動がやってくる。

コラム・見どころ

主演は小崎さよ。彼女は自らの留学経験を活かし、台詞のほとんどが中国語の役を上手く演じている。祖母を演じるのは南田洋子。その他、麻丘めぐみ、ルー大柴、金子昇、桜金造、梅津栄というバラエティーに富んだ面々が脇を固めている。監督はTV番組のプロデューサーとして活躍する徳江長政。この作品でも主演している小崎さよが主演した『しの』に続き、2作目の映画監督作品となる。

作品のタイトルになっている『ひいろ』とは“緋色”または“火色”とも書かれ「焼き物を焼く窯で偶然的に生み出されるほの赤い色の炎であり、情愛を感じさせる色として“想いの色”とも呼ばれている」という。中国の窯元と日本の窯元、それぞれの家族には確かに“ひいろ”の炎が燃え続けていたんだなと感じさせる作品だ。

キャスト・スタッフ

出演:
小崎さよ/麻丘めぐみ/ルー大柴/金子昇/桜金造/真由子/梅津栄/南田洋子
監督:
徳江長政
脚本:
徳江長政
製作:
奥村紀八郎
撮影:
鍋島淳裕
音楽:
松岡誠司
  • コメント

一覧へ戻る