許されざるもの

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イントロダクション&ストーリー

列車に乗ったひとりの兵士がヘッドフォンで音楽を聴いている。彼の名はスンヨン。兵役中の彼は休暇のため、列車で故郷へと向かっている。

どちらかといえば内向的な性格のスンヨンは軍隊に入った当初、その状況になかなかなじめずにいた。ある日、彼は“性格が悪い”という上官に呼び出される。上官の顔を見ることもできず、怖気づくスンヨンだが、逆に上官が優しい声をかけてくる。上官はスンヨンが中学時代の同級生であると気付いたのだったのだ。上官の名はテジョン。彼は軍隊のしきたりに慣れようともせず、時に揉め事を起こすスンヨンを出来る限りかばっていくのだが・・・・。

コラム・見どころ

韓国に暮らす男性には兵役の義務(要するに徴兵)があるのは、人気俳優、タレントらの入隊、除隊が常に大きなニュースになっていることから、多くの方がご存知だろう。この兵役義務は19〜29歳の間の2年間(配属させられる軍隊によって若干異なる)であり、その判定のための徴兵検査は19歳のときに行われる。この検査にパスしなければ、兵役は免除されるため、医師に虚偽の健康診断書を書いてもらうなどといったことも相次ぎ、社会的な問題ともなっている。例えば、人気俳優、タレント、スポーツ選手らの虚偽による入隊回避のスキャンダルを記憶している方も多いだろう。要するに、義務ではあるが兵役は避けられるものなら避けたいのだ。そうした一方で、「軍隊生活を経験しなければ男ではない」という思想がまかり通っているのも事実で、兵役の有無が就職を左右してしまうこともあるのだという。多分、避けたいが避けられないというのも兵役の義務に対する一般的な当事者たちの在り様なのだろう。この作品はそうした軍隊生活の当たり前ともいえる状況を個人の視点で描き、問題を提起している。

軍隊生活を重ねたスンヨンの所にも自分よりも下の新兵が入り、その中でもウスノロなジフンという新兵に手をかけるようになる。テジョンの庇護を受けているから、手出しはされないが、周囲から睨まれているスンヨンとその下でスンヨンの影響を受けたジフンはどんどんと孤立していく。そして、テジョンはひと足もふた足も先に除隊してしまい、予想されていた自分の立ち場のなさ、その予想を超えた出来事が起こってしまう。

古くは『愛と青春の旅立ち』など軍隊生活の過酷さを描いた映画は数多く作られているし、軍隊内でのこうした出来事は表立ってではなくとも伝えられている。そこにあるのは軍隊の過酷さ、逆に無理してでも慣れてしまえば過酷ではないかもしれない環境であり、そこを受け入れられるか、受け入れられないかという個人の精神力の葛藤である。スンヨンはそこにはまり込めずに「間違えている」ということを吠え続ける。でも、それが出来るのもテジョンという存在がいたからである。軍隊において、スンヨンのような“一般的な正当性”を主張する奴は山のようにいただろうが、それにより何か変化が生じたのかは分からない。

精神的に追い詰められているスンヨンは「休暇で出てきているんだ」とすでに軍隊生活は過去のものとなっているテジョンに連絡を取る。テジョンは嫌々ながらもスンヨンと会うが、まっとうな話も出来ず、付きまとわれるのみでイライラだけが高まっていく。軍隊では“先輩と後輩”で繋がっていた糸も隔離されていた軍隊から現実の世界へと戻れば、半ば危ういものへとなっているのだ。それでもその執拗さからテジョンはスンヨンの休暇の1日に嫌々付き合うことになる。

大学の卒業制作であるというこの作品は2005年釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式招待され、同映画祭で最高の栄誉賞とされるPSB観客賞など4部門を受賞している。監督、脚本、プロデュースを手がけたのは、この作品が長編デビュー作であるユン・ジョンビン。彼は役者としてもジフン役を演じている。この作品は自らが体験した軍隊生活を通し「個人ではなく、暴力的な状況を作ってしまう組織や社会制度といったものに対する怒り」を表現したかったと監督は語っている。

「軍隊生活の映画なんて誰も観ない」と監督は言われたらしいが、この作品は軍隊全体ではなく、主人公が所属していた場所での小さな人間関係をリアルな視点で捉えていく。しかも、軍隊生活を除隊していった者、行き場のない軍隊にまだいる者との関係性を上手く活かしながら描いている部分が秀逸である。社会的に徴兵という制度のない私たちには捉えにくい部分もあるかもしれないが、ここで描かれていることは先ほども書いた体育会系における“先輩と後輩”、会社の組織における“上司と部下”など監督の語る“組織や社会制度”に重ね合わせることも可能だろう。こうした抑圧的な状況がきっちりと作用することもあるが、そこで損失しまうものも山のようにある。そうした一端を徹底的にリアルに描ききろうとした意欲作である。

キャスト・スタッフ

出演:
ハ・ジョンウ/ソ・ジャンウォン/ユン・ジョンビン
監督:
ユン・ジョンビン
脚本:
ユン・ジョンビン
製作:
ユン・ジョンビン
撮影:
キム・ビョンチョル
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