夏物語

イントロダクション&ストーリー

大学教授のユン・ソギョンのもとにかっての教え子で、現在はTV局で働く女性イ・スジンが「もう一度、会いたい人はいないのですか」という企画を携えて訪れた。ソギョンの心はあの若かりし日の出来事、出会いへと戻っていく。

それはソギョンが大学生だった、1969年の夏である。周囲では政治的な運動が盛り上がっているが、彼はそういった会合や女子大生を交えた飲み会に参加しつつも心は常に別のところにあった。要するに政治的なポリシーがないのだ。そんな彼が仲間に誘われ、ボランティアの農村活動へと参加する。その裏にあったのは、大企業の社長をする父親への反発だった。しかし、そこで彼は生涯忘れられない女性に出会うことになる。

田舎の農村へと入り、すでに「ソウルへ帰りたい」とぼやいているソギョンはある家で歌いながら洗濯をしている女性の姿を目にする。彼女はこの村の図書館で働くジョンイン。彼は一目で彼女のことが気になり、事あるごとに追いかけ始める。町に一緒に買い物に出掛け、バスに乗り遅れて、歩いて帰ることになったり、夜の席で彼女が歌った下手な歌をからかったりしながら、ふたりは徐々に気持ちを通わせていく。でも、ボランティアには終わりのときが必然的にやって来る。

ソギョンらが従事するボランティアである農村活動とは都会の学生が農民たちを啓蒙することによって、農村という底辺から社会を変革していこうというコミュニケーションを通じた運動である。彼らがこういうことを行うのは当時、軍事政権(所謂、独裁支配体制)にあった韓国国内の政治体制を変えよう、叩き壊そうとしていたからである(この軍事独裁態勢は、この後も10年以上続いていくことになる)。余談ではあるが、1969年前後の数年間は、20世紀という時代を振り返るときに重要なキーとなると認識されつつある。それはこの時代に世界中で様々な形での学生運動、市民運動が盛り上がったからである。それは高潔な思想であり、チープな流行でもあったのだが、こうした運動は結果的に現在のNPOの萌芽などにも繋がっている。

ボランティアも終わりに近づいた頃、村ではある重大な事件が起こり、元々、孤独がちだったジョンインは村人から完全に外れた存在となってしまう。そんな彼女と別れることがソギョンには耐えられず、彼女をソウルへと連れて来る。しかし、ふたりにとって、ここから始まるはずだった幸せな生活は時代という渦に呑み込まれてしまう。前半の田舎での牧歌的な情景に対し、この後半の展開はあまりにも強烈で、ドラマチックである。この物語は作られたものだが、こうした時代にこのような現実が転がっていたことだけは確かだろう。

コラム・見どころ

主演のソギョンを演じるのは“韓流”を代表するスターであるイ・ビョンホン、ジョンインを演じるのは“涙の女王”としてドラマで人気を獲得し、映画発主演作『ファミリー』で圧倒的な評価を獲得した注目の人気若手女優スエ。この作品に出演した理由について、イ・ビョンホンは「完成度以上に、私の感情を動かしたシナリオだった」、スエは「シナリオの情緒的な部分がとても気に入りました」と語っている。監督は『品行ゼロ』のチョ・グンシク。この作品が劇場長編第2作目となる。

この作品の絶対的な背景にあるのはふたりの“若さ”とあのように政治的に揺れていた“時代”である。こうした時代は今も世界のどこかに存在するし、再びやってくるかもしれない。ただ、そうした部分だけではなく、この作品はひとりの男が長い年月抱え続けていた愛する人への想いの物語、“悲恋”の物語、後悔の物語、消し去ることの出来ない記憶の物語、深い愛情の物語、癒しの物語など世代や性別により様々な受け止め方、感情の入れ方が出来るものになっている。イ・ビョンホン、スエの熱演、韓国の抱えていた時代背景はもちろんだが、そうした部分からも楽しんでもらえればと思う。

キャスト・スタッフ

出演:
イ・ビョンホン/スエ/オ・ダルス/イ・セウン/チョン・ソギョン/ユ・ヘジン
監督:
チョ・グンシク
脚本:
チョ・グンシク/キム・ウニ
音楽:
シム・ヒョンジョン
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