エレクション

イントロダクション&ストーリー

香港で最大の組織である“和連勝会”で2年に一度行われる会長選挙。長老たちの投票によって決定されるこの選挙を争っていたのは組織に忠実で年長者を敬うロク、短期だが強引なほどの力強さを持ったディーのふたりだった。公正さを第一とするこの選挙だが、裏では金や権力の約束が取り交わされている。そうした中、最長老の鶴の一声で選ばれたのはロクだった。ディーはこの決定に謀反を起こすことになる。そして、会長になったものだけが手にすることが出来る、証である“竜頭棍”(竜の頭の形をした彫り物)を巡り、争奪戦が始まる。

コラム・見どころ

この作品は『エレクション』というタイトル通り、ヤクザの会長選を巡る選挙(実質的には麻雀を打ったりしながらの長老たちに話し合い)からスタートする。会長の筆頭格とみなされたふたりの男はそれを巡り、様々な工作を重ねる。同じ組織に属しながらも、全く正反対ともいうべき性格を有するふたりだが、その結果を左右したのもこのふたりの性格だった。金をばら撒くなどやり過ぎたディーが信用をなくす結果になったのだ。でも、強引なほどの力強さを持ったディーはこの結果に納得できず、とんでもない暴走へと走り出す。

言うまでもないだろうが、法の網の外にある巨大な組織の後継者を巡る映画としてはコッポラ監督の傑作『ゴッドファーザー』がある(『ゴッドファーザー』は世襲を巡るクロニクルだったが)。この『エレクション』という作品が欧米の映画祭で公開された時に上がった声の多くは「アジアの『ゴッドファーザー』だ」というものであったという。それが的外れかどうかは観てから判断してもらいたいが、作品にはその『ゴッドファーザー』を超えるどす黒いものがうねり、流れている。

この作品の監督はジョニー・トー。ここ数年も『PTU』『ブレイキング・ニュース』『マッスルモンク』『イエスタデイ、ワンスモア』『柔道龍虎房』など、年間数本のペースでジャンルを超えた監督作を発表し、絶大な評価を獲得している。正直、作品の内容の良さに対し、日本での興行成績は良くない(これはジョニー・トーに限らず、全ての香港映画にいえることだ)。香港に居座り続ける覚悟を決めているかのように活動し続けていたため、欧米での認知も一般的とはいえない(最近はこの作品でのカンヌ招聘などそういった部分は開かれてきたが、本人はハリウッド資本で撮るなどということは考えていないようだ)。ただ、ジョニー・トーという監督の作品の水準の高さと面白さは現在の世界でも屈指のものである(繰り返して言うが、数年に1本とかいう監督ではないのだ)。その中でも、この作品はジョニー・トーの濃い色が出たものである。

出演は『恋戦。 OKINAWA Rendez-vous』『『天上の恋歌』のレオン・カーファイ、『PTU』『ブレイキング・ニュース』などジョニー・トゥ作品ではおなじみのサイモン・ヤム、『柔道龍虎房』のルイス・クーなど、香港映画ではおなじみの面々。

“竜頭棍”をめぐってのやり取りとチェイスの活劇的な面白さ、ディーの長老たちに対する身体に響いてくる残忍さ、ディーとロク以外にも渦巻く因縁、それらが終結していく“組織”というものが持つ説明しようのない強さ・・・・。そして、暴力的なノワールだけではなく、人間ドラマとしてのノワールという深み。間違いなく、今を代表するノワール作品であることは間違いないだろう。でも、ここではあえてヤクザもの好きもドラマ好きも必見のヒューマン・ドラマと書かせてもらおう。この続編は日本公開がいまだに決定していないらしいが、この作品のヒットでその状況を何とかしてもらいたいと切に願う。

キャスト・スタッフ

出演:
サイモン・ヤム/レオン・カーフェイ/ルイス・クー/ニック・チョン/チョン・シウファイ/ラム・シュー
監督:
ジョニー・トー
脚本:
ヤウ・ナイホイ
製作:
デニス・ロー/ジョニー・トー
音楽:
ルオ・ダー
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