ユア・マイ・サンシャイン

イントロダクション&ストーリー

ひとりの男が店の前で金を返せと暴れている。男の名はソクチュン。彼はフィリピンへの嫁探しツアーに参加したものの、思った結果が出ず、参加費の返金を要求して暴れていたのだった。ソクチュンだけではなく、農業に携わる者にとって、嫁不足は深刻な問題だった。その騒ぎを傍目で眺めながら通り過ぎていく女性がいた。彼女の名はウナ。喫茶店で働いている。ある日、スクーターで出掛けたソクチュンはスクーターに乗った喫茶店で働く女性たちの一団と擦れ違い、その中にいたウナに一目惚れしてしまう。友人と行った飲み屋で彼女と再会したソクチュンは彼女が喫茶店で働いていることを知り、毎日のように通いつめ、プレゼントを贈り続ける。そうした努力の結果、ふたりは結婚をし、甘く、子供のように無邪気な日々を送ることになる。しかし、永遠に続くかと思えたこの愛には大きなトラブルが降りかかってくる。

コラム・見どころ

日本と韓国で喫茶店という意味合いが全く違うことはご存知だろう。喫茶店は日本ではお茶をするところだが、韓国では女性が接待し、お茶やお話をするところである(ま、普通にお茶も出来るが)。出前もあり、出前先(主にホテル)では肉体関係もあったりするのだ。だから、喫茶店の女となれば、曰くつきであり、結婚相手としては・・・・となる。それに喫茶店に勤めている女性自体がそれぞれの過去を背負っている。もちろん、この作品の中でもそういった部分はきちんと描かれ、彼女の過去は物語の大きなキーとなっている。

その過去とは暴力的だった前夫の存在であり、喫茶店で不特定多数の男と関係を持ったことから生じたであろうHIVキャリアという現実である。ウナにとって逃げ続けた末にやっと手にした幸せは前夫の登場と共に終わりを告げ、再び、逃げ出さざるをえないことになる。そうした事態が起こっていた頃、ソクチュンはウナを訪ねてきた保健所の男から、ウナがHIVキャリアであるという事実を知る。その事実を告げられないうちに、ウナはどこかへ逃げ出してしまうのだ。消えたウナはある歓楽街で自分がHIVキャリアとは知らずに体を売り続けている。そして逮捕される。

実はこの作品は韓国国内でスキャンダラスに取り上げられたある事件をきっかけに生まれた、実話ベースの作品である。その事件の主役はHIVキャリアでありながらも体を売り続け、逮捕された女性、この作品ではウナである。事件に対するマスメディアと大衆の反応は「そんなことをするなんて信じられない。殺人だ。」というものだった。もちろん、彼女のプライバシーも晒されたはずだ。でも、その事件の経過をそうした一方的な視点ではなく、熱心ではないものの、追い続けていたのが、この作品の監督と脚本を手がけたパク・チンピョだった。ドキュメンタリー出身である監督は裁判を傍聴し、このふたりの存在を気にかけ、親密に接し、取材していくことで、事件の裏側にあったふたりの関係を見出していく。脚色した部分も当然あるだろうが、ここに描かれているのは真実の物語なのである。

物語は前半と後半で全く異なる色合いを呈している。喫茶店の娘に対する一途な想いが実るまでの前半は苦難はあっても、互いが無邪気なほどの愛情に包まれている。でも、彼女がいなくなり、お互いが離れ離れになってからの後半(数年後)は人生観の変化、経験したことの重さを表すようにふたりの人相は一変している。今までは優しく接していてくれた友人や家族も誰もが彼らに対して大きな距離を置き始めている。そんな中でも結局、途切れなかったのがお互いへの想いというやつだったのだ。これだけは譲れないのが互いへの愛情だったのだ。

主演はチョン・ドヨンとファン・ジョンミンという韓国映画界を代表する演技派のふたり。作品はもちろん、ふたりも韓国国内の数々の映画賞を受賞しているが、それも納得の素晴らしい演技を示している。また、タイトルにも使用されている、誰もが歌ったことがあるであろうスタンダード・ナンバー「ユア・マイ・サンシャイン」も効果的かつ印象的に使用されている(特に主演の二人が歌うエンディング・テーマはいい余韻を残してくれる)。

ふたりの強い愛情に泣くのもいいが、ああいう立場に自分がいたらということを当事者、周辺者として考えさせてくれる視線にも満ちている。このあたりがドキュメンタリー出身の監督ならでは手腕なんだろう(『もし、あなたなら〜6つの視線』という人権問題を考えた秀作オムニバスの中で英語教育の壮絶さを描いた作品を監督したのも彼だ)。韓国映画ファン以外にもお勧めしたい作品だ。

キャスト・スタッフ

出演:
チョン・ドヨン/ファン・ジョンミン/リュ・スンス
監督:
パク・チンピョ
脚本:
パク・チンピョ
音楽:
パン・ジュンソク
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