天軍

イントロダクション&ストーリー

2000年6月、韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記との間で行われた、分断後、初となる南北首脳会談。これを受け、南北の間では極秘の軍事的な連携により核兵器の開発が開始された。そうして完成したのが核兵器「飛撃震天雷」だった。しかし、2005年10月、アメリカ、中国、日本など各国の反発により、この兵器はアメリカへ引き渡されることが決定した。ただ、それに納得できない北朝鮮軍のカン・ミンギル少佐らは「飛撃震天雷」の開発者で女性核物理学者のキム・スヨンを拉致し、核弾頭を盗み出し、逃走を始める。韓国軍のパク・チョンウ少佐らは逃げた北朝鮮軍を追い、川で両軍による激しい銃撃戦が繰り広げられる。被弾するものが続出する中、ひとつの異変が起きる。433年周期で飛来している彗星が上空を通過したときに、軍人たちは突然何かに巻き込まれてしまうのだ。そして彼らが目を覚ましたとき、目の前で繰り広げられていたのは槍、弓矢が飛び交い、刀が振り回される戦だった。

コラム・見どころ

軍人たちが目覚めた世界は、お分かりだろうが過去の戦場である。そうした部分から、この作品は韓国版『戦国自衛隊』とも呼ばれている。『戦国自衛隊』で彼らが迷い込んだ地は戦国時代であり、その中で彼らは分裂し、それぞれの運命を辿っていく。この作品の中で韓国と北朝鮮の軍人たちがたどり着いたのは蛮族による攻撃を受け続けている片田舎の村である。『戦国自衛隊』では後の上杉謙信となる長尾平三景虎が重要な歴史上に人物として登場してくるが、この作品では朝鮮(当時は統一されていた)の歴史的な英雄になる、若かりし日の李舜臣(イン・スンシン)に軍人たちは出会うことになるのだ。

李舜臣といっても知らない方も多いと思う。李舜臣が歴史的な英雄となっている理由は、数の上で圧倒的に有利だった日本の豊臣秀吉による朝鮮制圧の野望を打ち砕いたからである。李舜臣がいなければ、朝鮮は日本の手に落ちていてだろうから、彼が韓国で英雄となっている理由は自ずと分かるだろうし、そのときの戦略は韓国のみならず、日本を含めた軍人たちからも賞賛を受け続け、参考にされてきた。ちなみに、韓国国内では昨年まで、この李舜臣を主人公とした大河ドラマ「李舜臣」が放映され、圧倒的な視聴率を獲得していた。

出演は韓国映画のみではなく、ハリウッド映画でも活躍してきたパク・チュンフン、『ライターをつけろ』『人生の逆転』など幅広い作品に出演し、人気を獲得しているキム・スンウ(ここでは徹底的にシビアな演技をみせている)、『ユア・マイ・サンシャイン』『チャーミング・ガール』などで大きな注目を浴びるファン・ジョンミン、『火山高』『品行ゼロ』のコン・ヒョジンなど。監督はこの作品が劇場デビュー作となるミン・ジュンギ。

目覚めたときに蛮族を銃などで追い払った軍人たちは民衆から「天軍だ」と称えられる。この天軍とは神の軍隊的な意味合いであり、神の軍隊(神軍)が敵を攻撃したという短い記述が歴史書には残されているのだという。作品のアイデアはこの神軍がタイムスリップした現在の軍隊だったらという発想から始まっている。そうした場に李舜臣、盗賊のようなことをしたり、嘘八百を並べたりという、どうしようもない程情けない、後の歴史を知る者たちからすると信じられない性格の彼がいるのは面白いと思う。現代の軍人たちは英雄であるはずの李舜臣の不甲斐ない状態に混乱するが、彼を目覚めさせるために奮闘していくのだ。

現代からやってきた軍人たちの奮闘や様々な出来事もあり、李舜臣は大きく成長していく。そして自らが民衆と共に立ち上がり、自らが戦略を練り、この後の華々しい道筋の第一歩となる戦いへと臨む。作品クライマックスでもある、この戦闘シーンはなかなかの迫力に満ちている。そして、その戦いに参加するはずだった軍人たちには現代へのタイムスリップという機会が同時期にやってくる。タイムスリップ、歴史上の偉大な人物との出会いなどはよくあるものかもしれないが、コミカルさも前面に押し出しながら、男泣き的な部分に持ってくる展開は(それが分かっていても、「あれ?」という部分があっても)エンタテインメントとして十二分に楽しめるものに仕上がっていると思う。そして、もちろんここには統一国家としての朝鮮半島への願いがこめられている。

キャスト・スタッフ

出演:
パク・チュンフン/キム・スンウ/ファン・ジョンミン/コン・ヒョジン
監督:
ミン・ジュンギ
脚本:
ミン・ジュンギ
撮影:
パク・チェヒョン
音楽:
ファン・サンジュン
  • コメント

一覧へ戻る