靴に恋する人魚

イントロダクション&ストーリー

トドという名の可愛い少女がいる。彼女の楽しみは両親に絵本を読んでもらうこと。父はそんな絵本好きの娘のためにたくさんの絵本を買ってくるが、そのうちの1冊を娘の手の届かない棚の上に置いてしまう。娘はそれを何とか手に取り、読み始める。その絵本のタイトルは「人魚姫」。実は彼女は両足が不自由だったのだ。足の手術を目前にしていた彼女は「人魚姫」を読みながら、足が良くなったら、声を失うのだろうかとうろたえる。手術は声を失うことなく、無事に成功し、彼女は初めてスニーカーを履き、自らの足で歩き始める。その手術中、彼女は「きれいな足とたくさんの靴と王子さまがあなたのものになる。でも、本当の幸せは黒い羊と白い羊を手に入れること。」という予言を魔女から夢の中で受ける。そして、大人になった彼女は予言通りに美しい足を持った、靴を愛する女性へとなり、王子さまに出会う。

コラム・見どころ

オープニングのシーンから、ファンタジックな要素、ユーモア、そしてちょっとした毒がこの作品には満ちている。部屋は少女チックで色彩もカラフル、少女もすごく可愛いのだけど、彼女は両親に読んでもらう絵本の物語の先を勝手に予想しながら、クールに聞き続けていく。そして「人魚姫」を読んで、少女らしく恐怖に震えるのだ。

成長した少女は美しい足を持ち、靴を買うことに無上の喜びを感じる女性となっている。靴屋のディスプレーを眺め、靴屋に入ってしまい、何足もあるお気に入りの中からひとつを決定するのに苦労をする。何しろ、彼女は靴の声が聞こえるのだ。そしてすべての靴は彼女こそご主人となるべき、美しい足の持ち主と感じ、選ばれないと涙を流す。それは彼女にとって限りなく悲しいことでもある。

彼女が働いているところは飛び出す絵本で有名な出版社。ちょっと変わり者の社長と社員たちに囲まれながら、経理や雑務を行っている彼女は姿を見せない変わり者のイラストレーターの所に原稿を引取りにも行く。そして、ある朝、歯が痛くなった歯医者へと出向き、そこで運命となる王子さまに出会う。そして何度にもわたるデートを重ね、ふたりは結婚する。その先には幸せしか広がっていないように思えるのだが、そこから試練が始まっていく。

その試練は際限なく増え続ける彼女の靴だった。専用の部屋まであったのに、そこにも収まりきらなくなった靴は玄関やリビングまでも侵食していく。彼女への優しさに溢れる夫だったが、その靴がカエルにまで見えてきて、さすがに辛抱たまらなくなり、彼女に靴を買うことを控えるように頼む。靴屋の前を迂回して進む彼女、休日はショッピングではなく、野鳥観察などに出かけけるが、どうしても靴のことが忘れられない。結局はある時に彼女は靴屋に立ち寄ってしまう。そして靴屋で悩み、外へ出て、マンホールへと落ちてしまい、大切なものを失い、自分の殻に閉じこもってしまう。でも、彼女が閉じこもってしまうことで静止してしまう世界がそこにはある。

主演は日本でもバラエティ番組を中心に活躍していた台湾の人気女優 ビビアン・スー、『僕の恋、彼の秘密』で日本でもブレイクした感があるダンカン・チョウ。監督と脚本はこの作品が長編デビュー作となる女性監督ロビン・リー。製作はアンディ・ラウ自身が立ち上げた制作会社フォーカス・フィルムズが行い、アンディ・ラウ自身も物語の語り手であるナレーターとして全面的に参加をしている。

邦題にも使用されている「人魚姫」やマンホールへ落ちるという部分が「不思議の国アリス」であるように、この作品には絵本や童話からの様々な引用がされている。例えば、彼女が勤める会社の社長はジャックであり、「ジャックと豆の木」の飛び出す絵本で成功を収めている。こうした引用を探すのは絵本、童話好きにとっては大きな楽しみになるはずだ。

自分自身が静止してしまった後、彼女は本当に大切なものは何なのかということに徐々に気付いていく。それは彼女がいなくなることで静止してしまう現実というものに気付くということでもある。このエンディングの展開がなかなか上手く出来ている、日々忙殺されながらも大切なものを探し続けている大人のためのファンタジー作品だろう。

キャスト・スタッフ

出演:
ビビアン・スー/ダンカン・チョウ/タン・ナ/チュウ・ユェシン/ラン・ウェンピン
監督:
ロビン・リー
美術監督:
ワン・イーフェイ
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