ディア・ピョンヤン

イントロダクション&ストーリー

朝鮮総連の幹部として、北朝鮮のために尽くしてきた両親を持つ娘。彼女の3人の兄たちは帰国運動の最中、率先して、見たこともない祖国 北朝鮮に帰国し、そこで暮らし続けている。両親は朝鮮総連の幹部だったとは思えないほど、あけっぴろげな性格だが、今でも祖国である北朝鮮に忠誠を尽くし、息子たちのために日用品、お金を送り続けている。彼女は両親に対して深い愛情を抱きながらも、思想的には受け入れられない部分を抱き続けている。そんな彼女が父親の4年遅れの古希の祝いのために、両親とともに北朝鮮へと渡ることになる。

コラム・見どころ

15歳のときに済州島から日本へとやってきて朝鮮総連の幹部となった父親、父親とともに運動を続けた日本生まれの在日2世の母親、そんな両親のもとに4人兄妹の末っ子として生まれた娘。この作品はそんな娘が10年という長い期間をかけて撮影し続けた父親という存在であり、撮影し続けていくことによって生じた心の面での邂逅の記録である。

対外的にはミサイルの発射問題、拉致問題、対内的には後継者の問題、大雨による再度の食糧危機の問題など様々な懸念を抱えている北朝鮮だが、そこがユートピアのように謳われた、それを信じ、在日コリアンを中心とした多くの人々がそこへと渡っていった時代が確かに存在した。彼女の父親や母親はその運動に第一線としてかかわり、まだ10代だった彼女の兄たちは北朝鮮へと向かった。年老いた両親に対し、彼女はそこに「後悔はないか」と何度となく、問い続けていく。その回答は最初は北朝鮮という国家への忠誠と同様にまったく揺るぎのないものである。しかし、北朝鮮の状況が悪化し、年老いていく中、その態度は微妙に変化していく。

とにかくあけっぴろげな、オヤジらしいオヤジという父親を撮り続けていきながら、彼女は物心ついたときからずっと抱え続け、解消されることがなかった気持ちの問題を問い続ける。それは愛すべき自分の父親、でも、受け入れられない父親の思想というものだ。それが決定的に表出するのが、父親の古希を祝うための両親との北朝鮮への訪問である。

彼女はこの北朝鮮へ行くという行為に「大好きな兄たち、会いたくても国交の関係からなかなか会えない大切な家族に会える」という気持ちを重ねていく。彼女にとっての北朝鮮と日本の問題はこの「会いたいと思っても会えない」という部分に集約されている。しかし、大切な兄たちをはじめ、多くの人々が集まった古希を祝うパーティーでたくさんの勲章をつけたスーツを着た父親は「息子や娘を革命戦士にするのが私の役割だ」と語り、彼女は父親の真意が全く分からなくなる。でも、彼女は自分たちの息子たちだけではなく、その場に集まった祖国 北朝鮮へと戻った人々にも両親が様々な日用品、お金を送り続けていたことを知る。そうした両親の気持ちに彼女は揺れ続ける。

早く嫁に行けと娘に会うたびごとに言いながらも、日本人と結婚することはだめだと断言し続けてきた父親は10年という時間の経過とともに、日本人でもいいから結婚しろとその態度を和らげていく。そして、強気一辺倒だった北朝鮮への忠誠心の中にも少しずつ、本心が覗きはじめる。そうしたものが娘に父親の気持ち、言葉面では分かりつつも違和を感じていた思想を超えた理解を生じさせ始める。そして、そんな頃に父親は突然の病に倒れてしまう。

朝鮮総連の幹部だった父親を愛しながらも、その思想的なものは受け付けなかった娘との心の面での邂逅を描いたこの作品は朝鮮総連、北朝鮮という部分を取り除けば、多くの方が気持ちを重ねることができるであろう父と娘(息子)の葛藤、自分の家族への想いを描いた物語になっている。多分、単純に胸を打ってくるのはそうした部分であろう。それとともにこの作品にはなぜ、北朝鮮へユートピアを見たのか、在日コリアン1世と2世の考えの差(3世以降になれば、それは更に広がっているはずだ)などが自然に興味深く描かれている。そして、北朝鮮という国に家族を持つ者たちの想いもきっちりと描かれている。政治に翻弄され続けているが、そうした想いはきっちりとこちらを捉えて続けるはずだ。

キャスト・スタッフ

監督:
梁 英姫(ヤン・ヨンヒ)
脚本:
梁 英姫(ヤン・ヨンヒ)
プロデューサー:
稲葉 敏也
撮影:
梁 英姫(ヤン・ヨンヒ)

※ドキュメンタリー作品です

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