愛と死の間で

イントロダクション&ストーリー

若き、有能な外科医であるコウ。外科医として多忙な日々を過ごす彼は愛する妻との時間をなかなか持てずにいた。彼の仕事を理解する妻もそれは承知していたが、ペンディングされた約束をノートに書き綴っていた。この夜、仕事を予定通りに終えられそうな彼は妻に食事でもしようと電話を入れるが、やはり、直前になってその約束は中止となってしまう。それは108回目の変更であり、最後の変更でもあった。その帰りに彼女は事故に遭い、亡くなってしまうのだ。

それ以降、彼は外科医を辞め、救護隊員として働き、彼女の両親と共に時間に忠実に暮らしていた。ある日、彼は救護の帰りに交通事故に遭った車を見かける。時間に忠実な彼は報告が来るまで無視して本部へと戻ろうと思うが、突然、妻の記憶が甦り、事故車両から女性を救護する。彼は彼女のことは一切知らなかったが、見た瞬間に何かが共鳴する。そこから、彼は彼女への関心を深めていく。一方、救護されたユンサムという女性も忘れられない過去と限られた未来を持っていた。

コラム・見どころ

アジア各国で大ヒットを記録した、アンディ・ラウ主演による、事故で亡くなった愛する妻の記憶から離れられない男の切なくも美しいラブ・ストーリー。

この作品は“泣けるラブ・ストーリー”である。もちろん、そのための仕掛けもある。でも、そうした部分が気にならないほど、自然に物語の中に入っていける作品になっている。物語の最も大きなキーとなるのは現実の世界の中で男、亡くなった妻、救護した女性という3者を繋ぐものである。それは亡くなった彼女の心臓である。彼女の心臓はそれを必要としていた人物、男が救護した女性の中で生き続けているのだ。でも、実際に彼女がその人物なのかは医師の守秘義務により、男に明かされることはない。男が感じたのはあのドクンドクンという亡くなった妻の鼓動だけなのだ。そこから、男は女性にこだわり続けることになる。そして、その女性も男と同様に大きな傷を抱えていることに気づいていく。

男は亡くなった妻との間に大きな未練と果たすことが出来なかったいくつもの約束を抱えている。いつものように急用から妻との食事を取りやめた日に妻は事故で亡くなった。それは残された彼女の手帳に綴られていた108回目の中止だった。その事実は彼自身のその後の生き方にまで大きな影響を及ぼしていく。彼は医者をやめ、救護隊員になり、時間に対し厳格な、そして仕事で娘の発表会に行けないという同僚のグチには「絶対に行くべきだ」とも答える人間になっていたのだ。だから、ひと仕事を終え、事務所へ戻る途中に見かけた事故車から、命令が下されていないのに女性を救護したのは異例のことだった。その理由は彼の中の何かが共鳴したからだった。それはあのドクンドクンと響く心臓だ。

男は女性を密かに追い続け、女性の抱える痛みを知る。そして、その痛みに対して自分なりに対処できるかもしれないということに気づく。それは心臓だけではあるが、亡くなった妻への埋められなかったものを埋めるという気持ちであり、自分自身の埋められなかったものを埋めるという試みでもあるのだ。この試みは同じように娘の損失を信じていなかった父親の気持ちも大きく動かしていく。

主演は、1980年代後半以降の香港映画ブームをレスリー・チャン、トニー・レオンらと共に引っ張り、最近では『インファナル・アフェア』シリーズで新たなファンも獲得しているアンディ・ラウ。制作も彼自身が新たな才能の育成、よりエンタテイメント性に満ちた作品のために設立した映画制作会社フォーカス・フィルムズで行っている。アンディ・ラウのこの会社は今後の香港映画を引っ張っていく存在のひとつとなるのは間違いないだろう。共演は救護された女性を演じるチャーリー・ヤン、妻を演じるTwinsのシャーリン・チョイの他、アンソニー・ウォン、ホイ・シウホン、ラム・シューという香港映画に欠かせない面々である。とはいっても、この作品は一人二役を演じるアンディ・ラウに尽きるといってもいい作品だろう。

どこかで観たようなテーマやエッセンスが仕掛けとして取り入れられているが、それを無理に取り入れたのではなく、過剰さを押さえ、上手くまとめあげることによって生まれた切なくも美しいラブ・ストーリーである。香港映画ファンはもちろんだが、泣けるラブ・ストーリーが好きなら見逃せないだろう。

キャスト・スタッフ

出演:
アンディ・ラウ/チャーリー・ヤン/シャーリーン・チョイ/ラム・シュー/アンソニー・ウォン
監督:
ダニエル・ユー
脚本:
ダニエル・ユー
共同監督:
リー・コンロッ
撮影監督:
ジェイソン・クワン
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