エンター・ザ・フェニックス

イントロダクション&ストーリー

一触即発の緊張感とそれが爆発してしまった瞬間に想像もしていない出来事が起きる。一方の組長がもう一方の組長を身を挺して守ったのだ。この行為により、これまでの対立は全て無に帰り、手打ちが行われる。しかし、この手打ちに納得しない少年がいた。殺された組員は彼の父だったのだ。

それから25年の時が流れる。あの時の組長である洪一は病気による死を迎えようとしていた。跡取りのいないはずの洪一だったが、彼の口から息子がいることが右腕的存在のハチに打ち明けられる。その息子を新たな組長にすべく、ハチと部下で息子のキンはタイへと向かう。内緒だが組長の息子はゲイらしいのだ。なんとか組長の息子に出会えたふたりは息子と同居していた青年と共に香港へと戻る。実は彼らが組長の息子だと思っていた青年は別人で、彼の補佐役として一緒にやって来た青年が本物だということなんぞ組長が亡くなった今では知る由もない。そしてこの組長の息子の存在を恨みを晴らす好機と感じていた男がいた。それは25年前に父親を殺されたあの少年だった。

コラム・見どころ

物語は組員の殺しを行った人物の引渡しを巡って対立するヤクザ組織の交渉のシーンから始まる。

『ジェネックス・コップ』シリーズ、『拳神/KENSHIN』などに出演し、香港映画界の“小四天王”のひとりとして大人気の俳優 スティーヴン・フォンが監督デビューを飾った作品が、この『エンター・ザ・フェニックス』である。スティーヴン・フォンは監督だけでなく、脚本も手掛けた上、重要な役どころで出演までしているという八面六臂の活躍ぶりを示している。これはスティーヴン・フォンの師匠でもあるジャッキー・チェンなど~受け継がれる香港映画の伝統ともいっていいだろう。

物語を読んだだけでは今風の香港ノワールものか、と感じる向きがあるかもしれないが、この作品はそうしたノワールなテイストに香港映画らしいコミカルな部分を取り入れた、あの1980年代の勢いがあった頃の香港映画ともいうべきノリを持ったものに仕上がっている。大体、息子を探し出すという行動からして可笑しいのだ。組長の息子はゲイらしいということを知ったハチとキンは「女を探すならモンコック(香港の繁華街)、ゲイを探すならタイだ」と言って一路タイへとひとっ飛び、残されていた写真と手紙の住所からその息子をあっさりとみつける。でも、ここでもうひとつ大きなトラブルが起こる。実は彼らが息子だと思っていたのはその部屋の同居人でノーマルの青年、本当の息子はその青年の付添い人としてついてくることになった青年だったのだ。本当の息子は組長になんかなりたくない、愛する人とタイで暮らしたいと思っており、勘違いされた青年はこんな機会めったにないと組長の地位を楽しもうと本当の息子の同意の下で成りすますが、そこには彼の命を狙おうとするあの男の存在があるというわけだ。

そもそもの勘違いがその後の面白い展開を生んでいくのだが、この面白さを演出するのがロー・ガーイン演じるハチとチャップマン・トゥ演じるキンのコンビネーション。掛け合い漫才、凸凹コンビのように彼らは新しい組長がゲイでないことを知られないよう、でも組長のお気に召すように尽力をしていくのだが、とにかくその行動のテンポのよさと几帳面だかいい加減だか分からない支離滅裂さが最高の面白さを生み出していく。

このテンポの良さに加えて、見逃せないのが、スティーブン・フォンの監督デビューを祝福し、集ったともいうべき豪華な出演者たちだう。先に書いたロー・ガーイン、チャップマン・トゥに加え、本当の組長の息子役にはダニエル・ウー、勘違いされる青年にはイーソン・チャン、そしてカレン・モク、カメオとしてユン・ピョウ、ニコラス・ツェー、サミー・チェンなどが出演。スティーブン・フォン自身も重要な役を自ら演じている。製作総指揮は師匠でもある御大ジャッキー・チェン。ジャッキーはおいしい出演もしているのでファンは見逃せないだろう。

もちろん、ただ面白いだけでなく、香港映画の真髄であるアクションもふんだんに取り込み、グイグイとテンポ良く物語を運んでいくスティーブン・フォンの手腕は、これが劇場長編初監督とは思えないほどである(しかも脚本も手掛けているのだ)。ジャッキーは次世代の映画監督としてスティーブン・フォンを絶賛しているが、それも納得のこれぞ香港というエンタテインメント作品である。

キャスト・スタッフ

出演:
ダニエル・ウー/イーソン・チャン/カレン・モク
監督:
スティーヴン・フォン
製作総指揮:
ジャッキー・チェン
製作:
ウィリー・チャン/ソロン・ソ
撮影:
プーン・ハンサン
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