五月の恋

イントロダクション&ストーリー

台湾に暮らす大学生のアレイは人気ロックバンド メイデイのギタリスト シートゥの弟。そうしたことから彼はメイデイのスタッフとして仲間たちとWEBの運営などに関わっている。ある日、彼はファンから来たメールにメイデイのボーカリスト アシンの名を使い、返事をしてしまう。何度なく続く彼女とのやり取り。そして、彼女は台湾に行くので会いたいというメールを送ってくる。彼女は台湾のある地方にある「五月の雪」と呼ばれる花が見たいのだという。彼はアシンの名でそのことを承諾する。

彼女の名はシュアン。中国のハルビンで京劇団員の学生生活を送っている。彼女はこの京劇団の公演で台湾へ行くことになったのだった。友人にアシンに会えると嬉しそうに語る彼女。台湾につき、友人の協力の下、病気のフリをして団体行動から抜け出した彼女は待ち合わせ場所である本屋へと向かう。そこにはアシンではなく、アレイがいることを彼女はもちろん知らない。

コラム・見どころ

台湾だけでなく、アジア全域で活躍をする人気若手俳優、チェン・ボーリン、中国を代表する人気若手女優リウ・イーフェイ、台湾の人気ロックバンド メイデイがコラボレートしたラブ・ストーリー。

偽りのメールを送ってしまったアレイはスタッフとして働く仲間たちに「そんなことをしたらこの仕事をなくしてしまう」など当然のように大きく責められる。彼にもそんなことをしてはいけないという事ぐらいは分かっている。でも、それをやってしまうのは成功した兄に対する羨み、自分の今の立場に対する苛立ちがあるからだ。アレイが兄にデモテープを渡し、それがうまく行かなかったことをきっかけに兄弟喧嘩になるシーンがある。そこで兄はギターでワン・フレーズ弾き、アレイに弾いてみろとギターを手渡す。上手く弾くことが出来ないアレイに兄は「お前は何か熱心にやったことがあるか。俺はお前より指も短いが10年もギターを弾いているんだ。」と言い放つ。切れたアレイは一緒に暮らすアパートを自分のテリトリーと兄のテリトリーに分割してしまうのだが、アレイの状況はここに見事に語られている。物語はアレイの恋だけではなく、兄との関係を再生していくものにもなっていく。再生のきっかけになるのはもちろん、恋だ。

一方、台湾へとやって来たシュワンはアシンに会えると思いながらも、待ち合わせ場所の本屋に現れなかったアシンに「当然という」想いを抱え、自分が行きたかった場所へと向かっていく。それは「五月の雪」と呼ばれる花(その散る様が雪のようなのだ)が咲き、散る地方。彼女はここで確認したいものがあったのだ。不慣れな長距離の列車に乗り、そこへと向かう彼女をアレイはつけ続けている。自分の存在などばれていないと思っていたアレイだが、彼女は自分をずっとつけ続けている男の存在に気づき、逆に問い詰める。そして真実が発覚し、彼女はアシンに会わせること、「五月の雪」と呼ばれる花の咲く地に一緒に行くことを罪償いの要求とする。そうしたことを契機にお互いの想いが少しずつ近づき始める。でも、そのお互いの気持ちを深く確かめることなく、彼女の帰国の日がやって来る。

彼女に想いを告げられなかったこと、「五月の雪」の降る地に隠された物語。そして物真似ではなく、アレイの心の底から生まれた素晴らしい曲は兄やメイデイのメンバーを捉えていく。こうしたことを抱えたアレイにひとつのチャンスがやって来る。メイデイの中国ツアーに兄からスタッフとして誘いを受けたのだ。全てを知る兄はアレイにハルビンまでのチケットと日程を手渡すことも忘れない。そしてハルビンで全てが始まる。

単なるラブ・ストーリーではなく、兄弟の関係、自立、そして過去に隠れていたもの(これは中国大陸と台湾を巡る政争が生み出したものでもある)をシュワンが演じる京劇、台湾の田舎の美しい風景(「五月の雪」は本当に素晴らしい)などを織り込みながら、情緒的に描いていくこの作品は正に台湾映画らしい雰囲気に満ちている。過剰ではなく、でも徐々に切なさが募ってくるような展開にはきっと心のどこかを打たれるはずだ。

日本と中国の合作映画『アバウト・ラブ/関於愛』での伊東美咲との共演も記憶に新しい、今後のアジアを担っていく俳優になるであろうチェン・ボーリンはもちろん、中国では若きトップ女優として活躍し、チャン・ツィイーに続く女優として期待されているリウ・イーフェイも本当に素晴らしい。このふたりの若手俳優の清々しさが作品の大きな魅力を形作っている。また、主題歌はもちろん、作品中でライブも披露するメイデイの魅力も満載されているのでファンは必見だろう(兄役を演じるシートゥは難しい役どころを見事に演じている)。

東京ではレイトショーのみの公開だが(全国でも主要都市のみだろう)、それがちょっともったいないなと感じるほど切なさ、初々しさ、清々しさに満ちたラブ・ストーリーだ。美しい映像が一体となった台湾映画らしい良作と言っても過言ではないだろう。

キャスト・スタッフ

出演:
チェン・ボーリン『アバウト・ラブ/関於愛』/リウ・イーフェイ/メイデイ
監督:
シュー・シャオミン
エグゼクティブ/プロデューサー:
ペギー・チャオ
プロデューサー:
ティエン・チュアンチュアン
サウンド/デザイナー:
トゥ・デュチー
編集:
リャオ・チンソン
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