風のファイター

イントロダクション&ストーリー

1939年、日本統治下のソウル。少年 チェ・ペダルは使用人のボムスに古来から伝わる武術“テッキョン”を学んでいた。しかし、独立運動に関わっていたボムスは逮捕され、行方不明となってしまう。そんな中、ペダルは戦闘機のパイロット募集のビラを偶然手に取り、日本へと密航し、なんとか、航空学校に入学する。しかし、航空学校で彼が出会ったのは差別だった。ある日、その差別にたまらず、彼は教官を殴るが、加藤大尉の前で無残にも破れてしまう。この加藤大尉はペダルの後の最大のライバルとなっていく。戦争が終わり、親友と闇市でパチンコの露天を開いていたペダルはヤクザにコテンパンにされる中、ボムスとの再会を果たす。この再会でペダルは武道への興味を呼び覚ましていく。そして、米兵に襲われそうになっていた女性を助けることがきっかけとなり、彼女への想いを募らせていく。

コラム・見どころ

2004年の夏、韓国で最大のヒットを記録した、極真空手の創始者 大山倍達の若き日の姿を圧倒的なアクションを盛り込みながら描いたエンタテインメント作品。

作品はチェ・ペダルが挫折を味わい、再び立ち上がり、過酷な修行を経て、最強の格闘家として認められるまでの若き日々、あまり知られざる日々を描いていく。このチェ・ペダルという名の主人公が後の極真空手の創始者である大山倍達となっていくのだ。そう、この作品は大山倍達が大山倍達として世界中に認められる、その前夜までの物語であるのだ。

日本でも大山倍達の若き日々を描いた作品が存在している。それは「空手バカ一代」である。若い人でも名前だけは知っているだろうこの作品は梶原一騎が原作を手掛け、極真空手ブームを日本中に湧き起こした劇画であり、後にTVドラマ化されることによって、更なるブームの波を大きくしていった。

実はこの『風のファイター』も韓国で人気となった劇画を原作としている。この作品の原作は韓国のスポーツ紙に1989年から1992年にかけて連載され、単行本は100万部を超えるベストセラーとなっている。原作は人気TVドラマ「チェオクの剣」の原作者でもある人気コミック作家のパン・ハッキによるもの(なお、この春に公開される韓流の話題作である『デュエリスト』も「チェオクの剣」を基にしている)。パン・ハッキはこの原作を書くに当たり、徹底的な資料調査と大山倍達自身への長期にわたるインタビューを行っている。だから、これは大きな脚色がされているだろうけれども、真実も含めた大山倍達の物語となっている。当然、「空手バカ一代」と重なるエピソードも、ほとんど知られていないエピソードも登場してくる。

地場のヤクザにコテンパンにされ、小便を漏らした上に屈辱的な行為をしいられ、“池袋の小便漏らし”と嘲笑された頃。襲われそうになった女性を自らの手で助け、その女性に想いを寄せていくと共に、その戦いを契機に横暴な行為を行っている米兵(進駐軍)をみつけるとコテンパンにやっつけ、自信をつけていった頃。助けた女性と心を通わせていく日々。あの師匠ボムスとの再会と無残な死。航空学校で辛酸を舐めさせられた加藤大尉との再会。それは多くの人が知らなかった大山倍達の姿だろう。そして、あの片方の眉毛をそり落とす、石を叩き割る、1本指で逆立ちをするなど過酷な、自分の道を貫くための山に篭っての修行、その後の痛快な道場破りと世間への波紋という「空手バカ一代」でも描かれていた多くの人が知っている大山倍達の姿もある。

作品は舞台の90%が日本であるため、脇役の言葉などディテールの粗雑さがどうしても目に付くのだが、CGもワイヤーもスタントもない迫力感に溢れた肉感的なアクション・シーン、山に篭っての修行や道場破りなど劇画の味わいを残したワクワク感に溢れたシーンがそうした部分を埋め合わせてくれる。姫路城での決闘のシーンなんて「なんだこれは」という面白さだ。主演のペダルを演じるヤン・ドングンの寡黙さ、朴訥さは格闘家らしさをうまくかもし出しているし、そのペダルを陰で支える平山あやの可愛らしさ、ペダルのライバル加藤を演じる加藤雅也もなんともいいがたい味わいを生み出している。その加藤の右腕的な男はいかにも劇画というスタイルでこのあたりのバランスも面白い(加藤も劇画的だが、右腕はルックスからしてとにかく最高なのだ)。徹底的な調査による実話をベースにしながらも、このように劇画の面白みをうまく閉じ込め、エンタテインメントにしたところが、韓国での大ヒットに繋がったのは間違いないだろう(2004年夏のナンバーワンヒットを記録している)。そして、このエンタテインメントは単に面白いだけではなく、チェ・ペダル=大山倍達の生き様から観客を鼓舞していく部分も持っている。

ちなみに先行して公開された『力道山』、この『風のファイター』の大山倍達など朝鮮半島出身で異国の地で活躍したヒーローたちの作品は今後も色々と作られていくことは間違いないだろう。どういった形で、どういう人物が描かれていくのかという部分は興味をひかれるところだ。

キャスト・スタッフ

出演:
ヤン・ドングン/平山あや/加藤雅也
監督:
ヤン・ユノ

(C)KOREA PICTURES.

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