アブノーマル・ビューティ

イントロダクション&ストーリー

物語の主人公は大学で美術を専攻する女性ジン。美しい容姿に、類まれな美術の才能を発揮する彼女は学内だけでなく、美術界からも一目置かれている。今回の美術展でも彼女の発表した絵画は最優秀賞を受賞していた。ジンには同じ大学で美術を学ぶアンソンが熱心にアプローチをしていたが、彼女が行動を共にするのは同じクラスのジャスミンという女性だった。ふたりはカメラを片手に香港の街中を納得行く写真を求め、歩き回っていた。ある日、ジンは交通事故の現場に偶然遭遇し、死にゆく人間、死体の写真を撮影する。それは香港の街を徘徊し、納得のいく写真を求めていた彼女が遂に見つけた最高の瞬間、作品であった。その瞬間から彼女は死体、血の美に取り付かれ、死と血の写真を求めて、それに突き動かされるように行動し始める。しかし、それは思わぬ落とし穴へと彼女を誘い込んでいく。

コラム・見どころ

香港で圧倒的な人気を誇る女性アイドル・ユニット“2R”主演による、予想のつかないスタイリッシュ・サスペンス作品。

香港では2004年10月に公開され、ボックスオフィスで2週連続NO.1を獲得し、大ヒットしたこの作品は香港フィルムアワードへの最優秀新人賞などへのノミネートと共に、ロッテルダム国際映画祭などにも出品され、高い評価を獲得している。監督はアジアを又に活躍し、ハリウッド・デビューも決定しているパン・ブラザースの片割れオキサイド・パン。作品のプロデュースはパン・ブラザースが担当しており、正に彼ららしいノリを持った作品ともなっている。

この作品のテイストを一言で表すとしたら、“美しい(けど摩訶不思議)”ということになるだろう。この作品で美しいのは映像である。ダークだけれども、スタイリッシュで美しい映像がとにかく印象に残るのだ(特に暗室のシーンなど)。一方、摩訶不思議なのは物語展開である。サスペンス的な味わいを持っているのだが、ストレートなサスペンスではなく、摩訶不思議としかいえない展開を持っているのだ(特に後半はその間が強い)。

摩訶不思議さを抱かせるのは、ここに登場する人物たちがノーマルとは多少かけ離れた位置にある部分も大きい。主人公の類まれな美的才能を持つジンは死と血の美に取り付かれているし、ジャスミンとは同性愛的な面を持っている(しかもジャスミンは嫉妬深い)。アンソンはストーカーのようにジンの姿を撮影し続けている。ジンが同性愛的な面を持ち、死と血に取り付かれているのは彼女が幼少期に抱えてしまったトラウマに端を発しているのだが、そのトラウマゆえに彼女はどんどんと自らの死へと吸い寄せられていくのだ(彼女が好む写真集としてNYの事件をスナップし続けたウイジーやダイアン・アーバスなどが出てくる)。このジンが死に吸い寄せられていくまでの物語が、作品の第1部ともいうべきものになっている。ジャスミンの協力により、ジンは自らに付きまとっている死を、トラウマを振り払うのだ。ここから明るい前途が拡がると思いきや、物語は急展開する。

大学の彼女のロッカーに死体の写真が放り込まれ、自宅の玄関にはあるビデオが届けられるようになるのだ。そのビデオはSM的な責苦の上で女性が亡くなっていく様を捉え続けた“スナッフ・ビデオ”であった。死への執着を捨てた彼女に再び襲い掛かる誘惑、その誘惑は楽しみという部分を超え、ジャスミン、そして自らにまで迫り始める。ここが作品の第2部ともいうべき展開となっている。第1部が自らのトラウマを振り払う物語、第2部がトラウマを振り払い、生きることへの執着を手にした後に何者かにより追い詰められていく物語となっているのだ(ちなみに1部と2部はこの文章での表現であり、映画は1本の作品となっている)。

この作品に主演した“2R”は清純なイメージを押し出していただけに、香港のファンにとってはその部分も衝撃的な作品であったと思うが、ジンを演じ、香港フィルムアワードへの最優秀新人賞にもノミネートされたレースは難しい役柄を見事に演じきっている。ただ、役に余りにも入り込んでしまったために「撮影後、数週間経っても役柄から抜け切れなかった」と語っている。

注目すべき才能パン・ブラザースらしい作品であり、美しく、スタイリッシュで、摩訶不思議なその世界をぜひ、お楽しみください

キャスト・スタッフ

出演:
レイス・ウォン/ローザンヌ・ウォン/アンソン・リョン
監督・脚本:
オキサイド・パン『the EYE』シリーズ
製作:
オキサイド・パン/ダニー・パン

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