僕が9歳だったころ

イントロダクション&ストーリー

物語の舞台は1970年代の韓国の田舎町。主人公はここで暮らし、小学校へと通う9歳の少年ヨミン。ヨミンは正義感が強く、喧嘩も強い。年上の不良が絡んできてもクールに片手で蹴散らしてしまうほどの強さだ。そんなヨミンといつも一緒にいるのが同じクラスメートの男の子のギジョンと女の子グムボクだ。ヨンミはギジョンにとって兄のような、グムボクにとっては初恋的存在でもある。ただ、先生にとってのこの3人はちょっと問題児でもあり、廊下でお仕置きを受けることもしばしばだ。ある日、彼らのクラスにソウルから転校生がやって来る。この田舎町にはいない、とても清楚な格好をしたアメリカ育ちの可愛い女の子の転校生ウリムはあっという間にクラスの話題となっていく。ウリムを巡り、女の子を中心にクラスは分裂。グムボクはウリムをいじめる側になる。一方、ヨミンはウリムに初恋ともいえる一目惚れをし、グムボム、ギジョンとの関係もおかしくなっていく。

コラム・見どころ

韓国では出版以来130万部以上というロングセラーを記録している9歳の少年を主人公とした国民的な小説を映画化した、ノスタルジックな空気に包まれる作品。

1991年に出版されて以来、10代から50代を中心とした幅広い層に読み継がれてきたベストセラーの原作(邦訳タイトル「9歳の人生」河出書房 刊)が映画化されるということはもちろん大きな話題にもなっただろうし、その分、製作する側にも大きなプレッシャーがあったはずだ。そこに応えるために考えたのは、監督曰く「“あの頃はああだったなあ”という客観的な共感を導き出す」ことであった。そのため、この作品では町並み、格好、遊びなどディテールへの徹底的なこだわりをみせている。また、作品にも使用されたイメージ通りの面影を残していた小学校は壊されることなく“『僕が9歳だったころ』記念館”として保存され、訪問者を集めているという。こうした部分だけでもこの作品のインパクト、愛されかたが伝わってくるのではないだろうか。

監督が語る客観的な共感は“ノスタルジー”という言葉に集約されるだろう。1970年代は韓国が高度経済成長期に入る直前であり、日本でいえば1960年代くらいの雰囲気を持っている。昨年末に公開され、大ヒットを記録した邦画『ALWAYS 三丁目の夕日』と共通する世界がそこには横たわっているのだ。この作品のクラスの中にのあいつにあの頃の友人や自分を重ねたり、作品の暖かさにあの頃の雰囲気を思い出したりすることも間違いないだろう。時代のずれはあるが、同じアジアなんだよなという気持ちも抱くはずだ。

唯一、「ウーン」と思ってしまうのは主人公の男の子のキャラクター。子供らしい一面もあるのだが、正義感に満ち、喧嘩も強く、クールで優しく、母親にあることをしようと密かにアルバイトまでしている、こんなかっこいい奴、大人になった俺の周りにもいないぞというような奴なのだ。でも、このこともオリジナル英語タイトルを顧みればうなずける。『When I Turned Nine』、ここには作者にとって「自分が9歳だったら」という願望、こうしたこともやったかもしれないが、実はあのときにああすれば良かったなという想いが込められているのだ。だから、実はこの原作者は主人公のクラスメートのひとりなのかもしれない。ちなみに、9歳をテーマとしたことは、“9歳になるということは世界の大きさを知り、自分自身の力でやりぬきたいと感じる年齢”という作者の気持ちから来ているのだが、この辺の感慨は個人的には小学校の上級生になったな位のものでしかない(それは相当に大きかったが)。

監督はアメリカで『アポロ13』などの作品の助監督を経験し、『バリケード』、『マヨネーズ』という評価の高い作品を撮っているユン・イノ。日本で劇場公開される作品は、この3作目の『僕が9歳だったころ』が初めてとなる。子供が大好きだというユン・イノ監督は、出演する子供たちと寝食を共にし、一緒に遊び、悩むという打ち解けた関係を作り上げ、過剰ではない自然な演技を引き出している。子供たちは本当に自然で可愛いのだ。作品は子供たちの友情と初恋、そして家族を描いているのだが、主役は間違いなく端役までの登場する全ての子供たちである。数々のエピソードが積み重ねられていくことで描かれていく作品の最後にはその子供たちの子供らしい、素直な、心が暖かくなる感動も待っている。その展開はノスタルジックであり、大人にとっての忘れかけていたファンタジー、願望でもあるのだろう。

キャスト・スタッフ

出演:
キム・ソク/イ・セヨン<宮廷女官チャングムの誓い>/チョン・ソンギョン『あなたに私を捧げる』/チュ・ドンムン『純愛中毒』『春夏秋冬そして春』
監督:
ユン・イノ
原作:
ウイ・ギチョル 著「9歳の人生」
脚本:
イ・マニ『ワイルド・カード』
撮影:
チョン・ジョミョン『永遠なる帝国』『我が心のオルガン』
美術:
シン・ジョミ
音楽:
ノ・ヨンシム『寵愛』『最後のピクニック』
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