忘れえぬ想い

イントロダクション&ストーリー

物語の主人公である結婚を間近に控えたシウワイはいつものようにバス停でミニバス運転手の婚約者マンの帰りを待っていた。新居も決まり、結婚式に向けての衣装も発注済み。あとは本当に幸せな日々がやってくるのを待ちわびるだけだったのだが、突然の不幸が彼女を襲う。ミニバスの事故で彼が亡くなってしまったのだ。彼が彼女に残したものは幸せだった日々、焦燥していく日々、そして彼の連れ子だけだった。彼女は家族の説得にもかかわらず、自分が連れ子を育て、家庭を維持していくことを決意する。彼女が選んだ道は事故に遭ったミニバスを修理し、その運転手として生きていくということだったが、それがうまくいくはずもなかった。そこに無言で手を差し伸べるのが、マンの最期を看取った同僚のファイだった。

コラム・見どころ

2003年に香港で公開され、その内容の素晴らしさが口コミで広がり、観客の圧倒的な支持を受けたセシリア・チャン、ラウ・チンワン主演によるラブ・ストーリー。

前向きだけれども意固地な性格のシウワイと、その優しさや気持ちをストレートに出すことが苦手なファイはお互いに自然と惹かれあっていくが、その一方で互いの持つ過去に縛り付けられている。「好きなら好きと言え!」という気持ちも湧き上がってくるかもしれないが、この主人公の行動には子供や昔の恋という自分の人生を背負ってきた大人にはグッと来るものがあるはずだ。

簡単に言ってしまえば「もどかしい」だが、「もどかしい」という単純さでは片付けられない空気に覆われている。そうした作品のテイストを一言で表せば、メロドラマになるのだろう。メロドラマにも様々な種類があるが、それが行き着くのは泣き、涙である。この作品もオープニングの事故のシーンからそうした雰囲気に満ちている。でも、よくあるメロドラマのように、なだれ込むように涙へは向かわない。この作品の大きな魅力はここにある。それが「もどかしい」という単純さでは片付けられない空気でもあるのだ。

例えば、香港のミニバスの運転手は決して恵まれた商売とはいえない。時間的な縛りもきついし、法の網の目をかいくぐらなければならないのだ。こうした日々の生活のために必死に、時には楽しく仕事をしていく庶民の様子がこの作品にはきっちりと描かれている。そうした中、主人公のふたりは対照的ともいえる不器用な生き方をしていく。女は限りなく意固地だし、男は優しいけれど、肝心な所で1歩も踏み出せないのだ。そこを結びつけるのが子供だというのは分かりきっているだろうが、この主人公の大人の有り方が本当にじわりと胸に迫ってくるのだ。普通に撮っていたら出来すぎとも言われるだろうエンディングもそうした部分があるからこそ、自然に感じられる。

監督は1993年に公開され大ヒットを記録したラブ・ストーリー『つきせぬ想い』、最近では『ワンナイトインモンコック』という秀作を送り届けてくれたイー・トンシン。主演は『ワンナイトインモンコック』のセシリア・チャン、『つきせぬ想い』のラウ・チンワンというイー・トンシン監督作品で大きな評価を受けた香港を代表する俳優ふたり。共演には香港で人気の日本人子役俳優の原島大地、ルイス・クーなど。

物語はすごくシンプルだが、そこにある静謐さ、優しさなどはシンプルに作られたものではない。そして、そこを汲み上げ、自分のものとして演技した役者陣、特に主役のセシリア・チャンとラウ・チンワンが本当に素晴らしい。感動流行りだが、そうした中でもただ単に感動を押し売るだけではない、深みを持ったメロドラマとなっているこの作品は真の意味での大人のメロドラマであり、香港映画の底深さを示す秀作である。

キャスト・スタッフ

出演:
セシリア・チャン/ラウ・ チンワン/原島大地/ルイス・クー
監督:
イー・トンシン
  • コメント

一覧へ戻る