下流人生〜愛こそすべて〜

イントロダクション&ストーリー

第二次世界大戦後、日本の植民地から解放された朝鮮半島は北と南に分割され、1950年に朝鮮戦争が勃発。そして李承晩(イ・スンマン)大統領の独裁的な体制が始まり、反対運動が高まる1957年からこの物語は始まる。ある日、不良学生のテウンは弟分がやられた仕返しにひとりで隣の高校へと乗り込む。そこで相手の番長らをなぎ倒すが、ひとりの生徒スンムンに後ろから太ももを刺されてしまう。スンウンの家へと乗り込むテウンはそこで野党の政治家であるスンムンの父イルウォン、姉のヘオクの態度に共感する。やって来た警察はスンウンを逮捕することで父も挙げようとするが、テウンは警察に訴えず、イルウォンに息子の立場として引き取られる。そして、時代はどんどんと流れ、テウンはヤクザの世界に生きていくことになる。

コラム・見どころ

『酔画仙人』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した、韓国映画界の巨匠イム・グォンテク監督が描く、激動の韓国の現代を生き抜いたひとりのヤクザの物語。主演は『マラソン』のチョ・スンウ。

この作品は20年近くという長い時間を1時間40分という短い時間枠に収めている。この時代は韓国が李承晩の独裁体制的な時代から、クーデターによる軍事政権となり、その軍事政権が民政へと移行していく激動の歴史でもある。この激動の歴史が分かっているか、いないのかは作品に入り込む上で、相当に大きなウエイトを占めるだろう。韓国に暮らす人々にとっては体験し、歴史で学んできた重要な出来事ではあるが、そこへの実感がこちら側にはほとんどない。韓国の歴史にとって重要な出来事と男の人生がリンクしていくのは分かるのだが(そこまでではないが『フォレスト・ガンプ』的な流れである)、そこの重要さが頭で体で理解できないのが辛い。しかも途切れない展開で時代がどんどんとジャンプしていくのだから正直「あれ」という部分もある(作品を観るにあたり、簡単な年表でもあるといいのだが)。

そういった部分を救うのが主役のテウを演じるチョ・スンウだろう。設定上の高校生の姿は仕方ないとしても仁義を重んじる一介のヤクザからヤクザ的企業家として成り上がっていく男の調子の良さ、精神的な苦しみ、凄みを利かせた迫力のある肉弾戦的アクション・シーン(喧嘩)を見事に演じきっている。チョ・スンウのファンなら、こうした様々な状況を体験していく彼を観るだけでも存分に楽しめるはずだ。

一方、現代史的な部分が辛いと書いたが、そこがテウという人物に及ぼしていく影響は相当に興味深い。例えば、クーデターにより軍事政権となった韓国ではヤクザたちを追放していこう、クリーンな社会を目指そうという政府主導の動きが起こる。多くのヤクザがその場で逮捕されていくが、それを逃れた彼は映画業界に脚を踏み入れていく。その理由は映画が大きく儲かっていたことと、ヤクザという性格上からスターへのコネクションがあったからだった。テウ以外にもヤクザから映画業界に入り込み、大きな地位を築いている者もいる。でも、テウは映画業界のしきたりが分からず、山ほどの金を出資させた挙句に完成した映画を廃棄する。残ったのは借金のみ。それすらも踏み倒そうとするが、妻が友人から投資したお金の返済を迫られている現場を見て、なんとかしようとかってのヤクザの兄貴分に頭を下げる。この辺は一筋縄ではいかないのだが、それを契機に彼は土建業へと足を踏み入れていく。それもベトナム戦争を背景とした米軍特需があり、その事業をとるために賄賂と脅しをセットにしたヤクザ的なやり口、ヤクザが名目上の会社になっただけでしかない。この辺りは当時の韓国社会の裏事情としても興味深い。

家に戻ることも少なく、警察に逮捕され、獄中で数年も過ごしたテウを献身的に支えた妻はイルフォンの娘で、テウにとって義理の姉となるヘオクである。テウの横暴な態度にも耐え続けていたヘオクはある日、家を飛び出してしまう。義理の父であるイルフォンはヤクザによる散々な妨害、資金難にもめげず、民政化運動の波に乗り、国会議員の地位を獲得する。テウを指した義理の兄弟のスンムンは民主化を求めての地下運動へと潜り込んでいく。そして、彼が慕っていたヤクザの兄貴分、ボスにも様々な出来事が起こっていく。それらの出来事は必然的にテウを取り込んでいく。

作品はテウがヤクザから身を洗うきっかけとなるであろう約束事が裏切られたという出来事で終わる。その後、米軍特需の窓口となっていた政府機関も解散を余儀なくされる。自分勝手に自分の力のみで生きてきたテウの人生は偶然にもここで時代の、民衆の動きと重なる。それからの彼がどういう人生を歩んだのかは描かれないが推測は出来るよだろう。どうしても気になるのは、このテウという人物にモデルがいたかどうかなのだが、その辺りは明らかにされない(たぶん、いたのだろうとは思う)。最初にも書いたが、このドラマには1時間40分という時間は短すぎる。もう少し長く、背景を丹念に描いていけば、よりドラマチックで伝わる作品になってであろうと感じさせるところがどうしても悔やまれてしまう。

キャスト・スタッフ

出演:
チョ・スンウ『マラソン』
監督:
イム・グォンテク『酔画仙』

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