吹けよ春風

イントロダクション&ストーリー

物語の主人公は小説家のソングク。これから書く本の印税を元に手に入れた一軒家に暮らす彼は父の想い出を描いた本でラジオに出演し、素直さ、清廉さを押し出し、語ったりもする。本の売り上げはそのイメージほどには伸びておらず、これから書くべき恋愛小説のネタも浮かんでこない。何しろ彼は恋愛経験がほとんどないのだ。それは根っからの彼の性格に原因があるのかもしれない。彼は寒くても暖房をつけず、携帯ではなくポケベルを持つ(他人に携帯は借りる)などケチでセコイ、それを大切にする人間なのだ。そんな彼の家に突然、身に覚えのない間借り人がやって来る。間借り人はド派手な格好をした喫茶店で働く女性ファジョン。契約書を見せられ、契約をキャンセルすると法外な違約金を払わなければならい彼はしぶしぶ間借りを承諾。セコイ男と派手で人当たりのいい女性とのフロアを分けての同居生活がスタートするのだが。

コラム・見どころ

ケチでセコク、才能も枯れつつある小説家の家に突然やって来た自由気ままな女性の間借り人。『ライターをつけろ』のキム・スンウと『大変な結婚』のキム・ジョンウンが織り成す、可笑しくも心がキュンとするラブ・ストーリー。

この最初は全く分からない同居人がやってきた理由は彼の亡くなった父親だった。美しい想い出を本にまとめて出版するほどの父親が原因とは何事かあったのだろうかと思うだろうが、彼の書いた父親の美談は全部が嘘っぱち。彼が出演しているラジオの向こう側でも母親があんなにどうしようもない男はいなかったと怒りまみれに語っている。そのどうしようもない父親が死ぬ直前に勝手に賃貸の契約をしていたのだった。もちろん、そのお金は父親がどこかで使ってしまっていた。また、ラジオで彼自身が趣味として話していたジョギングも大嘘。これはゴミ処理代を出すのが嫌だからなのか、単なる嫌がらせなのか、ストレス解消なのか、毎週のように早朝、教会の前にゴミをばら撒き、追っ手から逃げる際の全力疾走のこと。世間ではこんなものをジョギングとは言わない。嘘まみれというわけではないが、セコサが嘘へと繋がっているのがこの男なのだ。

一方のファジョンは友人を家に呼び楽しんだり、役所で「お米を貰いに来た」姉弟の子供見かければ、ご飯をたらふく食べさせてあげたり、派手なスクーターに乗り、喫茶店の宣伝に奔走したりと、何をするにも悪気を持っていない純真で社交的な性格である。ルックスの可愛さもあるので、彼女がスクーターに乗りながら、喫茶店の宣伝をしていると男子高生たちが「可愛い!」と集団で追いかけてきたりもする。そんな彼女とソングクが合うわけがない。うるさいからと友人の出入りに規制をかけたり、寒いので床暖房のスイッチを入れたことに怒りまくったりとソングクは持ち前のセコさを爆発させる。性格のいいファジョンはそういったことを聞き入れながら暮らしていく。

ソングクは出版社から本の原稿を催促されるが、それは一向に進む気配がない。というより、恋愛経験のほとんどないこの男に恋愛小説を書き下ろさせること自体が無理な相談なのだが、出版社の社長に逆切れした時の行動が思わぬ幸運をもたらす。投げつけた原稿、アシスタントがファジョンから仕入れたネタを「傑作だ」と気に入られたのだ。ここからソングクのセコさが更に発揮される。彼は「友人が君の話を気に入り、本にしたいといっている」と本心を隠して、ファジョンに近づくのだ。でも、これが墓穴を掘っていく。社交的な性格ではないのに、自らの嘘を隠蔽するためにファジョンと彼の友人が出席する場には必ず顔を出さねばならなくなっていくのだ。どこかに行けば、金がかかる。彼にとっては本当にたまらないことだ。でも、そういったことからふたりの間には愛情が芽生えていくのだが。

ファジョンが働く喫茶店とは多くの方が知っているだろうが、日本の喫茶店みたいなところではなく、女の子が話し相手となってくれるようなところである。正直、喫茶店で働いているとなると面だって言いにくい部分もあるのだが、彼女はそういった後ろめたさを一切持っていない。そんな素直な可愛さを持つファジョンをキム・ジョンウンがはまり役のように演じている(『大変な結婚』といい、どこか田舎臭さのある女の子を演じさせるとこの人は上手いと思う)。セコさ丸出しのソングクを演じるキム・スンウもコミカルな持ち味を全開している。すぐに恋をしてしまう、ソングクの親友の小説家もありがちなキャラクターなんだけど、いい味付けになっています。

ヒッチハイクする若者を乗せるのを拒絶しようとしたが、お金を払うからのひとことでホイホイと車に乗せ、車を強奪されてしまったりとセコを全開させた笑いにも満ちているのだが、小説のネタを話し合う姿、箸使いが下手なソングクにファジョンが正しい持ち方を教える姿、床暖房のスイッチをオンにしてあげる姿など、ふたりの距離が縮まっていく様子はこちらにもその気持ちが徐々にダイレクトに伝わってきて、どこかで自らの経験と重ねてしまいそうだ。

作品のエンディングは多くの方が「ジーン」となってしまうだろうなかなかの名シーン。「恋は盲目」と歌われるけれども、ファジョンに出逢うことによって芽生えてくるソングクの気持ちと性格の変化を見ているとそういう部分が伝わってくる。恋だけでなく、人との出会いは自分に何かしらの影響を与えていくけれども、やはり恋だったよなと自分自身のことを考え、改めて納得するようなコミカルだけど「ジーン」としてしまうラブ・ストーリーだ。タイトルは母が語る父の思い出からきているのだが、きっと、相手の気持ちを思うようになれば、誰にでも春風は吹いてくれるのです。

キャスト・スタッフ

出演:
キム・スンウ『人生の逆転』
キム・ジョンウン『大変な結婚』
監督/脚本:
チャン・ハンジュン 『ライターをつけろ』
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