頑張れ!グムスン

イントロダクション&ストーリー

朝、赤ちゃんのソンイの泣き声で起こされる若い夫婦。母親のグムスンは眠いとベッドに潜り込み、充分な睡眠が必要な父親のジュンテがソンイをあやす立場に。起床後はこの日が初出勤となる夫の白いワイシャツの背中にはアイロンの大きな焦げ跡をつける始末。世間的にはダメなママのグムスンだが、そのことを後悔し、夫に電話をいれ、涙ぐむという可愛い、素直な面もある。この日の朝の騒動もつかの間、翌日の早朝にジュンテの両親がやってくることを知り、部屋の掃除やまともにやったことがない料理の準備に奮闘するが、そこに夫の携帯電話から見知らぬ男の声で「飲み代170万ウォンを持ってこなければ、夫を処分する」という連絡が入る。

コラム・見どころ

愛する旦那の携帯電話から見知らぬ男の声で夫の法外な飲み代を請求する電話が・・・・。『リンダ リンダ リンダ』で日本の映画ファンにもお馴染みとなったペ・ドゥナ演じる新米ママが夜の繁華街で夫を助けるために奮闘するノンストップ・コメディ。

赤ちゃんがお腹をすかせて泣いているのに自らの睡眠を優先し、寝過ごしてしまい夫の朝食は用意できないは、アイロンがけをしていたら、他の事に気をとられ、背中に大きな焦げ跡を作ってしまう。当然、部屋は散らかり放題。母親、主婦としては失格の烙印を押されることは間違いないであろう主人公がグムスンである。ほとほと疲れ切った彼女は近所の実家に戻り、母親に赤ちゃんを任せ、自らは睡眠を貪ったりもする。でも、夫や赤ちゃんへの愛情は誰よりも強いし、悪いと思ったらすぐに謝る素直さ、頑張りを持っている。家事がなかなか上手くいかないのは、母親曰く「お前はスポーツしか知らないんだから」という結果でもある。彼女はバレーボール一筋の実業団のバレーボール・チームのエース・アタッカーだった(今でも試合に脚を運んでしまう)。夫は彼女の熱狂的なファンで、彼女が故障中に出会い、子供が出来てしまったのだ。

そんな彼女に明日、夫の両親がやって来るという連絡が入る。夫に「牛骨は好きよね」などと両親の好きなメニューを聞きだし、部屋の片付け、レシピをみながらの料理に打ち込むグムスン。全ては万事快調のはずだったが、買い忘れたもの“サバ”が。夫に「市場は開いているから買ってきて」と連絡を入れ、一安心するグムスンだが、待てど暮らせど、夫は帰ってくる気配がない。その時、夫の携帯から連絡が入る。それは「夫の飲み代170万ウォンを払え」というものだった。食事の準備などを放り出し、引き出しの奥のカードを手にソンイを背負い、グムスンは真夜中の繁華街へと走り出していく。

物語が面白くなるのはここからだ。夫は酔いつぶれた末に場末の“キャッチ・バー”に捕まっているのだが、連絡の肝となっていた夫の携帯の電池が切れ、中途半端な情報で彼女は繁華街をふらつくことになる。うる憶えの店の名前だけを頼りに、不慣れな繁華街を歩いていく彼女はヤクザなど夜の世界の色んな人に道を尋ねながら、様々なシーンに出くわす。体をタッチされることが嫌な女性を理不尽なようにいじめるカラオケ・パブの店長、赤ちゃんのオムツを買うために入ったコンビニの店員の優しさ、夫が“キャッチ・バー”に捕まっているであろうことまで教えてくれた飲み屋の親切な老夫婦・・・・。そして女性を強引にホテルに誘い込もうとしていた男に手近の露店のボールを投げつけたことがより大きなトラブルへと繋がっていく。男から逃げながら、露店の商品を投げる彼女、その彼女の投げたトマトが出所したばかりの白で決めた服を汚したことがないヤクザの大ボス“白ヘビ”に当たってしまうのだ。ヤクザに追われる身となったグムスンはソンイを背負い、繁華街を縦横無尽に逃げ始める。そして彼女のこの行動は夜の繁華街に想像もしなかった事態を巻き起こしていくのだが、それは彼女には関係のないこと。彼女は夫を救い、早朝にやって来る両親を無事に迎え入れなければならないのだ。もちろん、“サバ”を手に入れることも忘れていない。

飲めない酒を飲まされ、破天荒になっていく夫を演じるキム・テウ(『女は男の未来だ』)も最高におかしいのだが、この作品はやはりペ・ドゥナである。夫に申し訳ないと泣いてしまう姿、必死になって夜の繁華街を走り抜ける姿、コメディエンヌぶりはもちろんなのだが、何よりも印象に残るのはその表情だ。特に夜の繁華街の人々を見つめる表情などは本当に素晴らしい。脇として登場する“白ヘビ”、飲み屋の優しいおじさん、おばさんなども印象的だ。

彼女が繁華街を走り回ることで沸き起こってくる出来事とスピーディーな物語展開の面白さ、家族への愛情(いつも男の子にしか見られないソンイが「お姫様」と呼ばれたときの喜びよう)が一体となった最高に面白いスクリューボール的な要素のあるこの作品はフランスで開催された2003年第9回アジアフィルム・カルチャーフェスティバルにおいて“観客が選ぶ最優秀映画賞”、“記者が選ぶ再収集映画賞”を受賞しているが、それも納得である。観ていると本当に「頑張れ!グムスン」という気持ちになってくる、韓流ファン以外にも楽しめる秀作だ。

キャスト・スタッフ

出演:
ペ・ドゥナ『リンダ・リンダ・リンダ』
キム・テウ『JSA』
監督/脚本:
ヒョン・ナムソプ『ロスト・メモリーズ』

2005(C)KOREA PICTURES

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