僕らのバレエ教室

イントロダクション&ストーリー

受験を目前した冬休み、ミンジェ、ドンワン、チャンソプの3人はいつものようにつるんでいた。チャンソプは進学をせずにダンサーを目指すことが決定し、ミンジェとドンワンは進学することだけは決定していたが、親の希望の大学には行けそうもなかった。しかもミンジェは長い片思いの最中。その相手は同級生のスジンなのだが、言葉すらかけることが出来ない。受験が終わった夜、いつものように3人で飲み、留守がちなのをいいことに、パイロットの父親の車で街に繰り出したミンジェは思わぬ事態に遭遇する。自分が進行する道路に轢き逃げされたらしき人物がいたのだ。しかも、その状況をおばさんに見られてしまい、無免許&飲酒運転であることも知られてしまう。数日後、ミンジェにあのおばさんから金をもってこいという連絡が入る。脅しに屈しまいと3人で約束の場所に足を運ぶと、それはバレエ教室の入学金へと変わってしまう。おばさんはバレエ教室の先生で、彼らは存亡の危機にある教室に無理やり入れられることになったのだった。

コラム・見どころ

進学など行き場のない気分を抱える高校三年生の少年たちの迷いと成長を描いた青春ドラマ。活動を停止した人気アイドル・グループ“GOD”のメンバー ユン・ゲサンが映画に初主演作。

物語の主人公であるミンジェは彼曰く「1年の半分は空にいて、もう半分は寝ている」父親とふたり暮しである。父親はミンジェにいい学校に進学して欲しい、俺の跡をついでパイロットになって欲しいと考えているが、ミンジェにはその実力がない上に、そうした気も起きてこない。大体、父親とのコミュニケーションも成り立っていない。ずっと片思いし続けているスジンは常に間近にいるのに声をかけることすら出来ず、「俺はダメな奴だ」と嘆き、ドンワン、チャンソプとつるみ、酒を飲んだりし続けている。

ミンジェの仲間のうち、進路が決まっているのはダンサーを目指すというチャンソプだけ。ドンワンは有名大学にいけないから予備校に通うであろうことをほぼ決めている。ミンジェもそうなるだろうなと思いつつ、スジンが通うことがほぼ決定しているソウルを遠く離れた地の大学を候補に入れてみるが、そこも無理という判定。しかも大学に行かないと結婚できないという訳の分からない強迫観念にまで囚われ、自分のダメさ加減を募らせていく。でも、ミンジェにだっていける大学はある。ただ、その大学が父親や親戚の反対に合うことは目に見えているのだ。

そんなミンジェはバレエ教室の人員不足に頭を悩ませている女性ジョンソクに轢き逃げされた男の前で立ち竦む姿を見られたことから、大きな誤解を受け、しかも飲酒&無免許を見破れ、それをネタにドンワン、チャンソプと共にバレエ教室へ無理やり入会させられてしまう。3人は嫌々なのだが、ビデオ屋のおじさん、出前持ちの兄ちゃん、痩せること目的にやって来たおばさんやら世代も年齢も超えた様々な人が集る中に、なんとスジンの姿が。彼女は姿勢が良くなるという母親の説得により、このバレエ教室へとやって来たのだった。嫌々始めることになったこのバレエ教室はミンジェたちの生き方に大きな影響を及ぼしていく。

バレエ教室でそのための衣装を着るシーンなどコミカルな面、10代ならではの恋愛感情などもうまく盛り込まれているが、この作品の大きなテーマは様々な人と出会うことにより生じてくる成長である。例えば、バレエ教室には噂だけでその場にいない他人を誹謗中傷する人もいれば、それをきちんと否定するビデオ屋のおじさんのような人もいる。彼らはビデオ屋のおじさんなどから噂になる人の真実を聞いたりしながら、表面だけでは窺い知れない人生を知り、バレエ教室に通うことを楽しみ始める。ミンジェにとってみれば、それは始めて自分でやり遂げることにも繋がっていく。そして、あのバレエ教室に入るきっかけとなった轢き逃げされ亡くなった男の息子が同じクラスメートで、両親を完全に亡くしたため、自らの手で弟などを養うために朝昼夜と働き続けていることも知る。同い年なのにこんなに違うやつが身近にいたことすら彼らは知らなかったのだ。楽しいこと、嫌なことに出逢いながら、彼らは少しずつ成長していく。

従軍慰安婦の問題をテーマとした『ナヌムの家』など社会派のドキュメンタリー作品を数多く監督してきた女性監督ビョン・ヨンジュンはこの作品にも様々な社会の現実を放り込み、少年たちがそれに直面することで痛みや不条理を感じ、退いたり、前へ進み出たりする様を描いていく。中でも強烈な印象に残るのが小児ガンの子供をアパートメントの住人が署名して、追い出したことをミンジェが知ったシーンだろう。恋愛はもちろん、この強烈な不信は彼のパワーとなっていく。ここからの主人公の生き方は心を打つものがあるはずだ。

出演は人気アイドル・グループ“GOD”のメンバー ユン・ゲサン、同じくアイドルとして活躍していたオン・ジュワン、『ホテルビーナス』にも出演していたイ・ジュンギというこの作品が映画初出演だった次世代を担う韓国の若手俳優たちと、子役から活躍してきたキム・ミンジョンなど。

例えば、国も時代も違うけれども自分たちのあの頃と同じような感覚をどうしても抱いてしまう、そんな作品だ。それは物事がそれ程うまくいくものでもない、超えなければならないものもあるけれど、超えなくてもいいものもあるということがなんとなく分かってきたこと。世の中に対してまだ圧倒的な善を感じているということでもある。年を取れば知ること、許せることも増えてくるけれども、忘れてしまうこともある。結局、年の功って何なんだろうかとも思う。今でも怒るべきところにはピュアに怒るべきだろう、そういう風に呼び起こすものがこの作品にはあるのだ。出会い、ぶつかることで成長していく青春ドラマであるが、社会的な状況をうまくフレーバーしているからこそ、普通の人を描いているからこそ、そういう想いが湧き上がってくるのかもしれない。そんな青春映画の秀作だ。

キャスト・スタッフ

出演:
ユン・ゲサン「兄嫁は19歳」/キム・ミンジョン「アイルランド」/オン・ジュワン『台風太陽』/イ・ジュンギ『ホテルビーナス』
監督:
ビョン・ヨンジュ『ナヌムの家』

(C)Good Harvest Pictures & FNH PICTURES

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