ダンサーの純情

イントロダクション&ストーリー

物語はダンス競技会のシーンから始まる。ここでは2人のダンサーが火花を散らしていた。ひとりはパートナーを育てることでも遺憾ない才能を発揮しているヨンセ。もうひとりはダンスの才能ももちろんだが、それ以上に金と権力にものを言わせているヒョンス。ヒョンスはヨンセが手塩にかけて育てあげたパートナーを自らの権力で奪い取り、ヨンセは「パートナー」は問題ではないとこの大会へと出場していた。しかし、そこでヨンセには信じられない自体が襲い掛かる。同じ大会へ出場していたヒョンスの手下により、演技中に倒され、膝を負傷させられてしまうのだ。

それ以降、ヨンセはダンスから身を遠ざける日々を送っていた。そんなヨンセをダンス・イベントの企画、プロモーションなどをやっている先輩が心配し、中国の朝鮮人自治区の才能に溢れるダンサーを呼んだのでパートナーとして一緒に踊れと声をかける。空港へ迎えに行き、何とか出会えた2人だったが、更なるトラブルが襲い掛かる。彼女は招聘したはずの人物チェミンではなく、その妹で、ほとんどダンス経験のないチェリンという少女だったのだ。チェリンは追い出されるが、ヨンセは世間知らずの彼女を放っておくことが出来ず、しかも彼女の熱意を汲み取り、3ヵ月後の大会を彼女をパートナーとして目指すことになる。

コラム・見どころ

『マイ・リトル・ブライド』のムン・グニョン主演による、韓国国内では250万人という観客動員を記録した競技ダンスを背景にした、心地よい感動に満ちたラブ・ストーリー。

主演はキム・レウォンと共に主演したロマンチック・コメディ『マイ・リトル・ブライド』で日本でも人気を獲得した“(韓国)国民の妹”ムン・グニョンと、ミュージカル俳優として高い評価と人気を獲得し、この作品で映画主演に大抜擢されたパク・コニョン。心地よさと感動に満ちたラブ・ストーリーとなっているこの作品だが、その肝となるのは本格的なダンスのシーンである。ミュージカルで活躍していたから色々なダンスの経験があり、それも大きな理由としてヨンセ役に抜擢されたパク・コニョンも競技ダンス(ソシアル・ダンス)の経験は皆無。ムン・グニョンに至っては、もちろん本格的なダンス経験などは皆無。ムン・グニョンは1日10時間以上の練習を半年ほど続け、基礎から映画で演じるダンスの演目を、パク・コニョンも自らの持った才能を発揮して、短期間でそれらをマスターしている。これはダンス界の常識を考えると異例のスピードで、しかもその腕前はアマチュアダンス大会への出場を誘われるほどにまでなったという。

物語で興味深いのは中国人自治区のダンサーを受け入れるためにヨンセがチェリン(当初はチェミンだと思っていた)との偽装結婚を強いられるという部分だろう。これはヨンセがチェリンを見放せない部分にも多少繋がっているのだが、こうした合法的な入国&長期滞在手段としての偽装結婚は韓国国内でも90年代以降、外国人労働者として中国・延辺の朝鮮族が入国するようになり、増加しており、その割合は出入国管理事務所によれば、10件中6件という高さなのだという。こうした結婚は2年という期間を経て、正式に住民票が交付されることになるのだが、その間の偽装結婚を抜き打ちで捜査、監視する様子から最後の面接調査までを、この作品は人情味があり、ちょっと間抜けな捜査官のコンビと共に描いていく(こうした部分は誇張はあるが、事実に即しているという)。別々に分かれての住民票交付のための最終面接調査はふたりの隠された想いが交差するかのように描かれていく。このシーンには主人公の2人はもちろん、こちら側にもつのる想いが湧き上がってくるはずだ。

この作品で注目すべきはやはりムン・グニョンだろう。彼女自身が「自分にとってとても大切な作品」とこの『ダンサーの純情』について語っているが、その言葉通り、彼女の役者としての魅力と成長がこの作品には詰め込まれている。映画で彼女が演じるチョリンは最初、本当に何も知らない、あどけない少女として作品に登場してくる。なまりが抜けない喋り、偽装結婚でも結婚をしたのだから、夜のベッドを共にしなければならないのかと泣きじゃくってしまうシーン、姉に成りすましたことがばれて、追い出され、自活しようと入った水商売の世界の裏を持ったボスを「すごくいい人たち」と語るシーンなどにそれは現れている。彼女の純粋な気持ちに打たれたヨンセは彼女をパートナーと決め、3ヵ月後の本番を目指し、練習を続ける。練習の初日の彼女の格好にもそういった微笑ましさがある。でも、これが見る見るうちに大きく変わっていく。練習に打ち込み、ダンスの面白さ、厳しさを感じながら、姿勢も表情も少女からひとりの女性へと変化していくのだ。そこに横たわっているのはダンスの最中だけの“擬似”とは思っていながらも、そうはではない、でも素直に言い出せない2人の間の相手への想いでもある。

その相手であるヨンセを演じるパク・コニョンも映画初主演とは思えぬほどの活力、魅力に溢れた演技を示している。端整で甘いルックスとモデル並みのスタイルを持っているだけにこの作品をきっかけに彼の虜になる方も多いのではないだろうか。韓国映画界にもこの作品で認められた彼はすでに次の主演作(コメディだという)の撮影に入っている。

物語はその後、また思わぬ展開へとなっていくが、そこは作品を観てのお楽しみにして欲しい。中でも先に触れた、あの偽装結婚から2年後の住民票獲得のための面接調査のシーンは本当に良く出来ており、ファンは徐々に胸の中に熱いものを抱えていくはずだ(その後のファンタジックな部分も印象的だ。蛇足になるが偽装結婚と永住権の獲得という部分では『グリーン・カード』というJ・ドパルデュー主演のいい作品もある)。そして、この作品はムン・グニョンという女優が本格的な女優への第一歩を踏み出したものとして記憶されていくはずだ。ムン・グニョン自身の「大切な作品」という気持ちはきっとそういう部分にも込められているはずだし、多くの韓流ファンにとっても愛すべき作品となっていくはずだろう。

キャスト・スタッフ

出演:
ムン・グニョン『マイ・リトル・ブライド』
パク・コニョン『DMZ非武装地帯 追憶の三十八度線』
ユン・チャン『顔のない女』
監督:
パク・ヨンフン『純愛中毒』
脚本:
パク・ゲオク
音楽:
チェ・マンシク『マイ・リトル・ブライド』『友へ チング』

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