女は男の未来だ

イントロダクション&ストーリー

初雪が降ったソウル。この日、大学で美術を教える後輩とアメリカから帰ってきた映画監督の先輩は久々に再会を果たした。もちろん、久々の再会につきものなのはお酒だ。ゆっくりと飲みながら、積もり積もった話をしているうちに行き着いたのは、ふたりが付き合っていたことのある女性のこと。先輩は彼女と付き合っている最中にアメリカへと逃避し、後輩は先輩がいなくなってから彼女と付き合っていたのだった。でも、それは過ぎ去ったこと。でも、こうして話していれば、ふたりの気持ちは自然と盛り上がり、彼女に会いに向かうことになるのだが、というのが物語の大筋だ。

コラム・見どころ

韓国映画界の“ニュー・ウェーブ”ともいうべき監督のひとりであり、韓国国内はもちろんヨーロッパで圧倒的な評価を獲得している映画監督ホン・サンス監督(『気まぐれな唇』)の最新作『女は男の未来だ』。

『気まぐれな唇』を観たことのある方なら分かるだろうが、この監督の作品の特徴は独特のテンポと間合いだ。ジェット・コースター的なノリや展開の速さ、感情の起伏の強さが売りとなっている韓流作品とは対照的に、長まわしの固定したカメラによる映像、少ない動き、言葉などが中心となるホン・サンス監督の作品はそういった部分では観る側の人間を選ぶのかもしれない。でも、このテンポや間合いが醸し出す笑いや皮肉には抜け出せない面白さが満ちている。こうした部分がヨーロッパからの圧倒的な評価に繋がっているのは納得できる(でも、ヨーロッパだけにしとくのはもったいない)。

この作品『女は男の未来だ』にもそうした独特の間合いのオフビート感覚は存分にいかされている。例えば、彼らが酒を交わしているレストランのウェイトレスをお互いが席を外している間に「僕の映画に出演しないか」、「僕の絵のモデルにならないか」と口説き始めたり(結果は総すかんなんだけど)、レストランの窓の外に立っている誰とも分からない女性を眺めながら、頭の中ではお互いに彼女と付き合っていた頃のエッチな行為を思い出していたりしているのだ。その末にどこかで抵抗しつつも「彼女に会いに行こう」となるのだから、彼らが望むものも、ダメさも分かるだろう。とにかく、この主人公の男たちはどうしようもない男の性としてのダメさを抱えているのだ(しかも後輩には妻もいるのに)。そういった部分ではこの作品タイトルも物凄く示唆に富んでいる。

作品のタイトルは監督がパリをブラブラとうろついていた時にみつけたポストカードに書かれていたものだという(原典はフランスのシュールレアリストのアラゴンの作品から取られている)。この作品についてのアイデアを練っているときにこのフレーズがよみがえり、頭から離れなくなった監督は作品タイトルに採用、その意味合いを「“未来”はまだ存在しない時間を表す。だからこのフレーズは“無”を意味する。“無”という明確なメッセージを持たないこのフレーズは、ささやかなカオスを作り出すのだ」と説明している。じゃ、作品の未来は何なのかは、劇場で確認して欲しい。

主演は『オールド・ボーイ』のユ・ジテ(見事に大学講師らしい中年太り)、『JSA』のキム・テウ、『スカーレットレター』のソン・ヒョナ。撮影は監督によりディテールまで徹底的にコントロールされた、細かな支持の中で行われたという。観ている側からはうかがい知れないが、監督の頭の中で作り上げられた世界がきちんと再現された世界がホン・サンス監督の作品なのだ。だからこそ、俳優にはそこに自然さ、自由さを感じさせるレベルが求められてくる。俳優たちにとってもホン・サンス監督の作品に出演するのは喜びであり、大きな挑戦でもあるはずだ。

とにかく癖になるような面白さを持った、韓国映画のそこの深さを感じさせる作品だ。友人などと観てワンシーン、ワンシーンを独自に解釈するのも楽しいだろう。もちろん、あの乾きながらもじめっとしたエッチなシーンも満載です。

キャスト・スタッフ

出演:
ソン・イェジン/チョン・ウソン
監督:
イ・ジェハン
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