私の頭の中の消しゴム

イントロダクション&ストーリー

物語の主人公は工事現場で働く無愛想な大工チョルスと、おっちょこちょいだが純粋な社長令嬢のスジン。別々の世界に住んでいる二人が、ある日コンビニでの思わぬハプニングから出会う。その後、スジンは父親の仕事の途中で訪れた工事現場で偶然チョルスと再会、そして何度かの出会いを二人は重ねながらまっすぐ、時に衝突をしながら恋に落ち、結婚にたどり着く。二人は幸せな新婚生活を送り、チョルスも無事に建築士の資格を得て、明るい将来の兆しが見え始めてきた。しかしそんな二人の幸せを壊すかのように、スジンに医師からある宣告がされる・・・・。

コラム・見どころ

韓国映画界若手ナンバーワンのカリスマ俳優チョン・ウソンと、03年に第40回韓国アカデミー賞新人女優賞を受賞し、『四月の雪』でヒロイン役を演じているソン・イェジン共演の悲しくとも愛の溢れるラブストーリー。韓国では3週連続1位を記録している。

若年アルツハイマーという重い病気を題材にしたストーリーには、単純に男女の色恋沙汰を描くだけではない重みがある。病気、しかも全てを忘れていってしまうというそれは、確かに死よりも辛いものかもしれない。別れではないのに愛する人との別れを余儀なくされてしまうその悲しみは、劇中でチョン・ウソン演じるチョルスが切ないほどに伝えてくれる。印象深かったのは、スジンが愛するチョルスのことすらも記憶の中に残せなくなった時、昔の恋人の名前でチョルスに愛していると言葉にしてしまうシーン。悲しみをこらえながらも必死で笑顔を作る彼の演技は素晴らしい。気持ちをストレートに伝えてくる説得力のある演技が本編の様々な場面で見られ、彼の映画に対する演技の大事さというものをスクリーンを通して如実に教えられたような気がした。

一方スジンを演じたソン・イェジンも、若年アルツハイマーを患った人物という役柄を巧みに演じる。ストーリーの序盤では物忘れの多い女性ではあるが、可愛くて芯の強い女性という印象。その表現の豊かさに存在感の大きさを感じさせられた。物忘れのひどさが増していく過程を演じる中にも、自分の記憶との葛藤や恐怖を細かく表している。

チョルスとの別れを決心したスジン、二人の思い出の場所であるバッティングセンターで交わされていた二人の会話の言葉の美しさに心を打たれる。韓国作品の素晴らしい点として上げられるものの一つが、台詞(言葉)だろう。日本語のそれよりもストレートで実直な言い回しが印象的で、翻訳される日本語も普段私達が聞く言葉よりも少々くさかったりもする。このシーンではそんな言葉のやり取りが最も大事にされていたように見え、試写会の会場からもあちこちから涙の音が聞こえた。

ラストシーンは悲しみに満ち溢れたものではなく、ささやかな幸せを感じさせる。エンディングのスタッフロールを見て涙してしまう人もいるのではないだろうか。個人的にはエンディングで流れる映像も強く印象に残った。

キャスト・スタッフ

出演:
ソン・イェジン/チョン・ウソン
監督:
イ・ジェハン
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