スカーレットレター

イントロダクション&ストーリー

カーステレオから流れるオペラにあわせ、優雅に車を運転する刑事のギフン。彼は妊娠している美しい妻スヒョンだけでなく、ジャズ・シンガーの美しい愛人カヒも手に入れ、刑事としてのキャリアも順調に積み重ねている男だった。この日、彼はある殺人事件の捜査に加わる。それは写真館の店主が惨殺された事件で、容疑者として浮かび上がってきたのは第一発見者である被害者の妻ギョンヒであった。ギフンはギョンヒを尋問し、尾行をつけるなどしながら事件の真相を追っていく。そうした状況でも、ギフンは愛人と妻の間を行ったり来たりしながら、生活を続けていた。しかし、そんな生活も次第にバランスを崩し始め、事件も真相が闇に隠れていく中で、早期解決を迫られていく。そして、事件の真相に迫ったとき、想像もできない事実が彼の前に現れる。

コラム・見どころ

『シュリ』、『八月のクリスマス』など韓国を代表する男優ハン・ソッキュ主演、そして先日、衝撃的な死をとげた女優イ・ウンジュの遺作となったミステリアスな愛の真実を描いた作品。

先日、自らの手で衝撃的な死を遂げた女優 イ・ウンジュの遺作となってしまったこの作品『スカーレットレター』。作品自体が死の引き金となったのではないかという憶測も流れたため(それは悲劇の一端を示すかもしれないが、全てを説明しているわけではない。真相は未だ闇の中だ)、韓流ファンの間では相当な話題となった。作品を観るにあたってどうしてもそういった部分に注目してしまうのは仕方のないことだろう。

イ・ウンジュが演じているのは主役の刑事役のハン・ソッキュの愛人であるジャズ・シンガー。この役柄について、彼女は完成後のインタビューで「撮影自体はものすごく大変だったが、この役をやったからには今後はどんな役でも演じることが出来る。」という風に語っているのだが、確かに刑事の愛人という単純な役ではなく、愛人というラインを超えたいという想いをより強くしながら、身体的変化も生じていく役柄を演じるということは撮影前の段階から相当な覚悟があったであろうし、撮影中にはその覚悟を超えたものが圧し掛かってきたはずだ。そういった部分を乗り越え、役に入り込み、演じきった彼女は本当に素晴らしく、物語が進んでいくほどに変貌していく様には目を瞠るものがある。裸、セックスのシーンなども死の原因として取りざたされているが、役柄にとっては必要なシーンであるし、これがイメージを損ねたのかという部分は疑問だ(正直、背中しか見せず、そんなに大胆でもない)。逆にこういったシーンが彼女の女優としての幅を拡げているのは確かだし、この作品を契機により大きな女優になれただろうということが確信できるために、本当に残念で仕方ない。

イ・ウンジュとともに素晴らしい演技を見せるのが主演のハン・ソッキュだ。オープニングのカーステレオでオペラを聴きながら、指揮者を気取って、運転する人生の順風さと本人の傲慢さを見事に表したシーンからラストまで、これも本当に難しい役柄を演じきっている。本当に彼は素晴らしい俳優だということを改めて感じさせてくれる。

物語は刑事と彼の妻、愛人、そして事件の容疑者となっている未亡人の行く末をミステリアスな物語と映像で描いていくのだが、最後に暴かれていく因果ともいうべき事実をどのように受け止めるかで大きく評価が割れてしまうのではないだろうか。

ちなみにタイトルの『スカーレットレター』とは同タイトルで映画化もされているアメリカ文学の古典であるホーソンの小説『緋文字』の原題に当たる。映画の中でもこの作品は印象的な台詞の中に現れているが、それが意味するのは、神の道に背いた者が見せしめに胸につけられる赤い“A”の文字であり、その“A”はadultery(姦通)の頭文字を示している。監督自身はこのことについて、タイトルを拝借しただけと語っているが、登場人物たちがこの文字を背負っていることと、韓国という国ではこの姦通が大きな罪として罪状規定もされているという現実の問題とのリンクは頭から外せないだろう。

物語には賛否があるだろうが、韓流ファンにとっては女優イ・ウンジュを観るだけでもこの作品は十二分の価値があるのではないかと思う。ぜひ、劇場に足を運んで下さい。

キャスト・スタッフ

出演:
ハン・ソッキュ/イ・ウンジュ/ソン・ヒョンア/オム・ジウォン/キム・ジングン
監督/脚本:
ピョン・ヒョク
撮影:
チェ・ヒョンギ
配給:
シネカノン
  • コメント

一覧へ戻る