中国式離婚 X 知らない男と話をするな イントロダクション

激変する「家族」への価値観、家庭内暴力、崩壊する夫婦関係を描く“私にもありうる物語”中国テレビドラマ史上に残る二本の大ヒット作は、刺激満点!!

Text by Kazue Okada
 各省ごとにテレビ局が存在する中国では、毎年多数のテレビドラマが制作される。ヒット作は各省で再放送されるため、一本のドラマが中国全土で何年も放映され続けている状況も珍しくはない。そんななかで、近年話題を呼んでいるのは、現実の社会問題を素材とした「社会派ドラマ」である。とりわけ「家族間のトラブル」モノは人気が高い。
 その背景には、70年代後半に開始された「改革開放」政策による経済発展と、それによる国民の意識変化がある。なかでも「家族」に対する意識は激変したと言える。父母との同居を避ける夫婦の増加など、社会の最小単位が「家族」から「個人」へと大きく変化するなか、それを如実に現す数字が年々右肩上がりを続けている離婚率だ。
 そこで、中国テレビドラマ史上に残る二本の大ヒット作が登場する。2001年放映の『知らない男と話をするな』は、家庭内暴力にサスペンスの要素を加えた作品だが、ある地方都市では視聴率が50%を超えたとされている。2004年放映の『中国式離婚』は、価値観のズレから崩壊していく夫婦を描いた作品だが、こちらも別夫婦の続編が制作されるほどの人気ジャンルとして定着した。
 二作品の共通項は「夫が医者、妻が教師」という中流家庭であること、妻か夫のいずれかが「壊れている」こと、劇中BGMが暗いことなどである。これは中国社会派ドラマの特徴ともいえるが、要するに「社会的に恵まれた人たちがひたすら暗い」。
というわけで、以上をもって「経済発展に伴う生活の変化が社会派ドラマを発展させ」
としたいところだが、広大な中国ではそう簡単な話でもない。
 「集団」が生活の基本単位だったかつての中国社会では、ご近所の「噂話」が貴重な娯楽だった。今でもプライバシーの壁が低い中国では「生き別れ家族の物語」などが、朝の番組で流れたりもしている。回を重ねるごとに定番化していった「知らない男」での暴力シーンや「中国式」での夫婦喧嘩シーンは、この延長線上にあるとも言えるだろう。主に地方の視聴者は「そんなバカな」などと呟きながら、「壊れていくヨソ様の家庭」を覗き見ていた……というわけだ。
 ここから、二作品の人気は「経済発展に伴う意識変化」に加え、「それでも変わらない覗き見精神の逞しさ」によるものだということがわかる。これはそのまま「私にもありえる物語」と感じる裕福な沿岸部と、発展に対し多少のジェラシーを抱く内陸部の性格にも置き換えられる。この両者の興味を引いた内容となれば、その過激さもおのずと想像がつくだろう。「そんなバカな」と呟いてしまうのは、ドラマを見た外国人も同じだろう。
 だが現実の中国社会では、「妻と愛人の3人で共同生活」「愛人が本妻を追い出し事業で大成功」「子供のDNA検査ブーム」など、事実はドラマより奇なりの話も増加中だ。変わらず覗き見精神も豊かな中国社会において、社会派ドラマが更に過激になることは確実。まずはこの2作品は必見である。