21回 理想の結婚相手は「エコノミー男子」?

 中国の流行語に、「経済適用男」(エコノミー男子)という単語がある。ウェブ百科事典の『百度百科』によれば、これは「身長とルックスは月並み。性格は温和で給料はしっかり家に入れる。月給2000~1万元で家賃を払える経済力がある。お酒・タバコ・ギャンブル・女遊びをしない」男性を指すとのこと。いわば可もなく不可もない無難な男性だが、中国の一部の女性の間では「嫁に行くならエコノミー男子」と人気が急上昇中である。

 普通、中国の男性と言うと日本以上に「肉食系」のイメージが強い。お酒・タバコ・ギャンブルは当たり前、お金や権力にギラギラしているかわりに奥さんには豊かな生活を保障する――というのが、中国で成功している「勝ち組」男性のイメージだ。かつては女性の側も、多少はヤンチャでもこのような男性と結婚したがる風潮が強かった。

だが、中国社会が豊かになり都市部を中心に庶民の生活が底上げされたことで、従来にはなかった安定志向も芽生えつつある。ひとまず安定した家庭生活を実現できそうな「エコノミー男子」のブームは、そんな社会背景に基づくものだとも言えるだろう。

中国の質問サイト『百度知道』に寄せられた、エコノミー男子の夫を持つ女性の投稿を紹介してみよう。『百度知道』には普段は恋愛や夫婦生活の悩みが投稿される場合が多いが、今回の書き込みは単なるおのろけである。

【夫がエコノミー男子です】 http://zhidao.baidu.com/question/116489675.html


 投稿者によると、彼女の夫はIT業界のサラリーマン。背は高くなく、ルックスも醤油顔、奥さんに甘い言葉を言うこともない。ただし、6年半の結婚生活は非常に平和で、日々の小さな出来事に幸せを感じてしまう毎日であるという。彼女と夫はネットで知り合い、恋愛の後に結婚したが、結婚生活には何の不自由もないそうだ。


「夫は何の趣味もない人でして、何をする時にも私と一緒です。
他人から見ればつまらない人かもしれませんが、私にとっては最高の夫。
結婚生活は幸せです」


 エコノミー男子を夫に持つ生活は、あまりに平凡な、しかし幸せな毎日であるようだ。こちらに寄せられた他のネットユーザーの書き込みも、投稿者を羨ましがるものが大部分を占めている。


「いいね。エコノミー男子と結婚してよかったじゃないか」(♂)

「まったく羨ましいもんだ。こういう家庭が一番だね」(♂)

「あ、私の夫もこういう人だわ」(23歳♀)

「本当にうらやましい!お幸せに!!」(♀)

 現在発売中のドラマ『中国式離婚』は、平々凡々とした夫に不満を抱く妻の物語だ。しかし、「60後」(1960年代生まれ)世代の妻の目には「不満」と思われるような夫の特徴も、現在の若い中国人の間ではそう悪くないものとしてとらえられているらしい。

 社会の変化に従って、「ダメな夫」の基準も変わっていくということだろうか。

20回 「フェニックス男」と結婚はできますか?

 中国のネット上で使われるスラングに「鳳凰男」(フェニックス男)という表現がある。これは、農村部などの貧しい地域の家庭の出身ながらも苦学の末に大学に合格し、都市部で働くことに成功した男性を指す言葉である。

 ちなみに中国において、都市部と農村部は人々の意識の上でも行政上でも明確に区分されている。中華人民共和国が建国されて10年後の1958年、農村部から都市部への人口移動を防止する目的で「農村戸籍」と「非農村戸籍」が作られ、農民の自由な国内移動を禁止しようとしたことが、この区分が生まれたそもそもの理由だ。当時の中国は生産力が乏しく都市の規模も脆弱だったため、より貧しい農村部に住む人々が無秩序に都市部に流入することは国家の基盤を崩壊させる危険があった。

 だが、貧しい社会主義時代につくられた戸籍制度は、現在もなお中国の農民を縛り付けている。「農村戸籍」を持つ農民は、大学合格や軍隊での成功といったチャンスを得ない限り、いまだに都市部への自由な転居が認められていない(そのため、都市部への違法の出稼ぎが増加することとなる)。正規の手段を通じて農村部から都市部への移住を果たした「鳳凰男」たちは、非常にデキる男たちだと言えるのである。

 しかしながら、農村部の出身者は、生活上のマナーや価値観の点で都市部の住民とは大きな差異がある(と、都市に住む中国人たちは一方的に考えている)。「鳳凰男」が苦労の末に都市へ移住しても、結婚や恋愛の相手としては一歩引いて見られるという、あまり良くない傾向もあるようである。中国の質問サイト『百度貼吧』より、そんな現地事情が垣間見える質問を紹介しよう。

【「鳳凰男」って、結婚対象としてOKだと思いますか?】 http://zhidao.baidu.com/question/175587764.html


 質問者は男性。年齢や出身地などのプロフィールは公開されていないが、ことによると彼自身が「鳳凰男」なのかもしれない。この質問に対する回答を見てみることにしよう。


「『鳳凰男』だって成功のパターンのひとつ。
確かに、あまりよくない噂は聞くけれど」(23歳♂)

「私のことを好きでいてくれる人ならそれでいいと思うよ」(♀)

「恋愛や結婚の対象としてはムリね。
人生観も世界観もライフスタイルも違い過ぎるもの。
ただの知り合いならいいんだけど...」(♀)

日本人の感覚からすると理解しがたいが、都市部の中国人にとって「鳳凰男」への抵抗感は思いのほか強いようなのだ。努力の末に都市に居住した有能な人たちに対してすら、厳しい視線が向けられるのである。

反日デモの報道などを通じて中国を見ると、彼らはとにかく愛国主義を掲げて一致団結しているという印象を受けがちだ。しかし、実際は中国国内においても、恋愛や結婚の障害になるほどの深刻な「待遇の差」が存在する。深刻な問題だが、これもまた中国社会の現実だと言えるだろう。

「腐女子」という言葉をご存知だろうか。これは「やおい」やBL(ボーイズラブ)と呼ばれる、男性キャラクターの同性愛を扱ったマンガや小説を好む女性のこと。日本では1970年代ごろからこの文化が生まれ、ここ10年ほどで一気に市民権(?)を得るようになった。世界各国を主に美形の男性に擬人化したマンガ『ヘタリア』のヒットも、こうした腐女子文化の流行が背景にあってのことだろう。

 そして、日本製のアニメやマンガの流行に伴って、実は腐女子文化は中国でも花開いている。中国語で腐女子は「腐女」。更に「攻めと受け」は「攻受」、「お兄さん萌え」は「御兄控」など、いわゆるBL専門用語は現代中国語の語彙にすらなりつつある。正直なところ、男性の立場としては流行の理由がさっぱり理解できないのだが、日本の腐女子文化には中国のオタク女子をも引き付けるだけの魅力があるようだ。

 だが、いくらBL作品を愛好しているとはいえ、腐女子は現実社会においては(おそらく大部分は)ノーマルな女性である。事実、日本の腐女子の中には普通の彼氏や配偶者がいる人が少なくない。

中国においても、これは同様であるようだ。現地のネット質問サイト『百度知道』より投稿を紹介してみよう。

【私は腐女子。やっぱりオタクの彼と付き合った方がいいんでしょうか...】 http://zhidao.baidu.com/question/44832702.html


 質問者は17歳の女性。書き込みにはネットスラングが大量に使われているため文意の把握が困難だが「超がつくほどの腐女子」である彼女は、「前の彼氏には自分の趣味がバレて振られちゃったんですぅっ!!」という悲しい過去を持つらしい。そこで、こういった相談を書き込んでいるのである。


「だからオタクの彼が欲しいんです☆
 でも、彼がデート中に萌えグッズを見つけて、
ワタシを放っておいてそっちに行っちゃったらキツいですよね~。どうしましょ」


原文が中国語だとはいえ、文体も質問内容も、いかにも痛々しい感じがする相談だ。こちらに寄せられた他の中国人の反応を読んでみよう。


「オマエの書き込みの意味が分からん。ちゃんとした中国語で書け」(♂)

「日本のマンガを読み過ぎてまともな中国語の書き方を忘れちまったのかい?」(29歳♂)

「彼氏云々、の前に人との付き合い方を考えるべき」

「考え過ぎじゃないの?」(河南省22歳 ♀

 腐女子であっても、やはり一般の質問サイトに書き込むときはしっかりした文法で文章を書かないとバカにされる、ということか。質問者の尋ね方があまりにも悪かったためか、回答する人たちも意地悪である。

ちなみに質問内容については、「腐女子とオタクって、合ってるようで意外と相性が悪いと思うよ」という男性からの書き込みが1件寄せられていた。「割れ鍋に閉じ蓋」という諺は、腐女子とオタクのカップルには当てはまらないのかもしれない。

第18回 彼氏が女装男子でした...

 最近、中国でひそかなブームになっている現象をご存知だろうか。それは、いわゆる女装男子。中国語では「偽娘」といい、ネット上を中心に話題が盛り上がっている。なかには、現地のネットニュースで報じられるなど地下アイドル化している安徽省のコスプレイヤー・「yoyo」君や、セーラー服姿で話題をさらった「桜塚澈」君など、カリスマ的な人気を誇る人々すら登場している。

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人気女装男子「桜塚澈」君のお姿。あまりに美しすぎるということで、「女性説」すらささやかれる。
画像は中国のウェブ百科事典『百度百科』より(http://baike.baidu.com/view/1561370.htm)。

 中国では近年、日本などのアニメキャラクターの格好をする「COS」(コスプレ)が一部のアニメファンの間で流行しているが、多くの「偽娘」たちはそんなコスプレ好きが高じて女装に行きついてしまったようだ。そのため、女装男子たちの大部分は性的にはノーマルな男の子であるらしい(たぶん)。事実、中にはガールフレンドがいる人もいる。

 今回、中国の質問サイト『百度知道』から紹介するのは、そんな女装趣味の男の子を彼氏に持った女の子の悩みである。傍から聞くとアホみたいな悩みに見えるが、彼女本人にとっては深刻な問題のようだ。

彼氏が「偽娘」です、どうしましょう http://zhidao.baidu.com/question/135328015.html


 彼女いわく、自分の恋人は基本的にはよい彼氏、外見もイケメンであるという。しかし「話をする際にいつも女の子みたいに話すんです」「しかも、わたしのことを『あなた♪』って呼んだりするんです...」とのことだ。アドバイスに困りそうな質問ではあるが、寄せられた反応をみていくことにしよう。


「そういう男は嫌いね。女の子を守れそうにないじゃない」(北京 28歳♀)

「なんでそんなヤツと付き合ってるのよ」(♀)

「女装男子だって別にいいじゃないか。落ち着きがあるし清潔好きそうだし、見た目もきれいなんだろ? 重要なのは彼氏が質問者さんに優しいかどうかだ」(広西チワン族自治区出身北京在住 25歳♂)

「へえ...、彼氏の女装趣味かあ...。まあそれもいいんじゃない? 彼は恋愛対象としては女の子が好きなんでしょ?」(山東省 21歳♀)

 否定派と肯定派にくっきり二分された感じである。まあ、恋人としてはあまり嬉しい趣味ではなかろうが、そこは本人の勝手...、といったところなのか。ひとまず現在の中国は、(少なくとも若者の趣味の面では)ずいぶん自由になったとは言えそうだ。

第17回 彼氏が出家しそうです...

 日本では明治時代以来、僧侶が肉を食べたり結婚したりすることは社会的にひとまず容認されている。実は、浄土真宗などの一部の宗派を除けばこれらは戒律の上で必ずしも許されていないらしいのだが、いちど世俗化した習慣は元に戻すことが困難だ。明治時代から100年余りが経ってしまった現代では、僧侶の肉食や結婚は(特に根拠はないものの)なんとなく当たり前のものとして世間に受け入れられている。

 だが、これは世界的に見れば特殊な事例だ。宗教への統制が厳しい社会主義国・中国においてすら、僧侶は戒律を守って暮らすべきであると人々からみなされており、肉食や男女交際は大きなタブーである。ましてや結婚となれば、還俗(僧侶が一般人に戻ること)をしなければ社会的にまず容認されないと考えていい。

 今回、質問サイト『百度知道』から紹介するのはそんな話題だ。質問者は17歳(当時)の女性で、彼氏が出家してしまわないか不安なのだという。詳しく見てみよう。

彼氏が出家しそうです!! http://zhidao.baidu.com/question/12354053.html


 質問者によれば、彼氏はもともと寺院の受付で働いており、チャットソフトなどで確認できる友人たちも全員が仏教関係者。数日前にある事件があり、彼女は心配しているという。


「一昨日に彼とケンカした際、彼は『お師匠様の所へ行ってくる』と言って高僧のいるお寺で2日間の修行に入ってしまったんです。今後、彼がストレスを感じることがあったら、お師匠様のもとに行って完全に出家してしまうかもしれません」

「どこの世界に、彼氏に出家してほしい女の子がいるもんですか。彼は『いや、ちょっと数日ほど袈裟を着て経文を誦しているだけのことさ。どうってことないよ』と言っていますが...。ああどうしましょう!」

「みなさん、彼をなんとかして一般人の世界に戻すことはできないでしょうか!? 出家なんて耐えられません」

 日本人の感覚からすると、ここまで僧侶を嫌わなくてもと思わないでもない。だが中国において、出家は文字通り「俗世間を捨てること」。結婚して子孫を増やし、一族の立身出世を願うのが一般的な中国人の価値観なのだが、これと相反する人間になるということなのだ。寄せられた回答を見てみよう。


「彼氏が本当に質問者さんのことを愛しているならそんなことはしないはずだ。それでも出家するなら別れるしかないね」(新疆ウイグル自治区 25歳♂)

「同情するよ...」(上海 ♂)

「うーん。彼が本当にそこまで俗世を脱したいと思っているのなら、将来はきっと高僧になるのだろうなあ」(陝西省 24歳♂)

「わはは。じゃあ、俺の彼女になってくれ。俺は出家しないから」(♂)

「君も尼になれば万事解決じゃなかろうか」(遼寧省 21歳♂)


 シュールな質問だけに、回答もユニークなものが並ぶ。質問者の彼氏がその後どうなったのかは知るよしもないが、彼女に愛別離苦の悲しみを味あわせないようにしてほしい。老婆心ながらそう思う次第である。

第16回 ストーカーの恐怖。しかも軍人

 中国ドラマ『知らない男と話をするな』はドメスティックバイオレンス(DV)を扱う話だ。日本でDVに対する関心が高まったのはここ10年ほどのこと。また、この時期に同じく関心が高まった男女間の問題に「ストーカー」もある。

 中国語でストーカー行為に相当する単語は「糾纏」という。もっとも、ストーカー規制法など関連法案が整備されつつある日本とは異なり、中国にはいまだ法的な規制が存在せず。相談を受けた警官が案件ごとに現場判断で対応する形になっているようだ。

 中国の質問サイト『百度知道』をのぞくと、ストーカー被害を訴える相談を見つけることができた。しかも、相手は軍人なのだという。相談を見てみることにしたい。

「軍人のストーカーから抜け出すには?」 http://zhidao.baidu.com/question/52651064.html


 質問者いわく、2年前に同級生の紹介で軍人の男性と知り合い、その際に相手に自分の職場の名刺を渡してしまったことで相手にストーカーされて困っているのだという。具体的な被害は原文から直接読んでみよう。


「2年にわたって、この人は私にしょっちゅう電話をして、ずっと付きまとい続けるんです。私は大抵は電話に出ず、いろんな方法で相手の電話が掛かってこないように試みましたがダメでした。私が携帯の機種を換えて迷惑防止機能を付けたことで彼の携帯電話からの連絡はブロックできたんですが、彼は軍用電話を使ったり特殊なソフトで発信番号を変えたりしてきて、連絡を阻止できないんです」


 さらにこのストーカー男は名刺に載っていた彼女の職場に電話を掛けたり、服や花を勝手に送りつけたりしてくるのだという。一度は職場に押しかけてきたことまであったが、偶然彼女は不在だったために難を免れた。彼の知人である同級生を通じて注意したり、「もう結婚しています」と告げてもやめることはなかったそうだ。

 そして、彼女の場合は中国独自の事情が関係していて、警察にも言えないようである。質問文の続きを見てみたい。


「彼は軍人なので警察も手出しできないですし。解決方法は彼の上官を探して相談するしかなさそうなんですが、やりたくなかったんです。まず、そうやっても解決できるかわからない。それに、彼を刺激することで復讐されても困ります」


 こちらの質問には大量のアドバイスが寄せられたが、警察に相談することを勧める意見と「そんなことをしてもムダ」という意見が拮抗し、解決を見なかった。警察権が及ばない軍隊という組織は、本当にやっかいなのだ。

 現時点において、DVと比較してもあまり注目されていないかに思える中国のストーカー問題。だが、ネット上のチャットソフトや携帯電話などのコミュニケーションツールが増えた現代は、ストーカーが従来以上に活動しやすい時代だ。行為を規制する法律が存在しない以上、中国でストーカー行為が社会問題化する日もそう遠くはないと思われる。

第15回 別れた恋人のチャットアドレスは消しますか?

 日本ではあまり知られていないが、中国人の間で携帯電話並み(もしくはそれ以上?)に普及しているコミュニケーションツールがチャットソフトだ。特に「QQ」と呼ばれる国産のチャットソフトは人気で、昨年末の時点でアカウント数はなんと9億9000万件。これは1人が複数のQQアカウントを持つことが一般的であるためだが、それでも同時にオンライン上にいるユーザーの数だけでも1億人に達するという。ほかにマイクロソフトの「MSNメッセンジャー」も人気であり、中国人にとってチャットソフトはすでに生活の一部ですらある。

 もちろんこれは恋愛の場でも例外ではなく、中国の若者たちはナンパや恋人同士の連絡においても積極的にチャットソフトを使っている。だが、ここで問題になるのが「別れた後」の元恋人のアカウントだ。日本でも過去の恋人の携帯番号やメールアドレスを消すかで迷う人はいるが、それと似たような悩みだと言えるだろう。そこで、中国の質問サイト『百度知道』から質問を見ていくことにしたい。

「恋人と別れた後、相手のQQやMSNのアカウントを消去しますか?」 http://zhidao.baidu.com/question/138860181.html


質問者は女性。なにやら、題名通りの事態がその身に降りかかって悩んでいるようである。さっそく、回答者たちの書き込みを見ていくことにしよう。



「消すなんて無理だよ!自分の気持ちがまだ残ってるじゃない」(海外スペイン 16歳♂)

「状況によるわね。自分が彼氏を振ったなら消すけど、振られたなら...。再逆転を狙って連絡先は残します!」(黒竜江省 14歳♀)

「別れたって友達にはなれるじゃん。アドレス消したらおしまいだよ」(山東省 21歳♂)

「相手にはもう会いたくない!と思って消すと、あとで後悔する。また会いたくなったりとか。矛盾してるよね」(江蘇省♀)

「彼女と別れてから連絡先は全部消したよ。残してどうするんだ? 残しておくと、夜に悪夢を見てしまうんだよ...」(浙江省 21歳♂)

 賛否両論である。ちなみに「再逆転を狙う」と言っているのは14歳の女の子であり、現在の中国の中学生もこの手の話ができるくらいには恋愛に対して開放的らしい。

 携帯電話の番号とは違い、チャットソフトは相手のアカウントのログイン状態や最近の写真などが表示されてしまう(場合によってはおせっかいな)機能を持つ。相手ときっぱり別れたい場合は、やはり消してしまった方がいいのではないかと思うのだけど...。

第14回 マッサージの女の子に恋してしまいました

恋愛や結婚に対してオープンな人が増えてきた中国。だが一方で、それに乗り切れない人たちも存在する。いわゆるモテない男性だ。ここで取り上げるのは、『百度知道』に投稿された、地方都市で公務員として働く25歳の喪男の恋愛相談である。彼はお気に入りのマッサージ嬢に恋してしまったという。

中国はタテマエでは社会主義国だということになっている。だが、過去の儒教の価値観の影響か、庶民の間では肉体労働者やマッサージ嬢といった「身体を使う仕事」を嫌う傾向が強い。指圧やマッサージはもともと東洋医学の治療法の一部で、真面目な店舗や施術師も数多く存在するのだが、中華文化圏では無資格のマッサージ店が風俗業の隠れ蓑になっているケースも多い。それが評判を落とす原因となっているようだ。

これらを踏まえた上で、投稿された質問を見てみてほしい。

「マッサージ嬢と結婚するのはアリですか?」 http://zhidao.baidu.com/question/53890897.html


質問者は広東省恵州市龍門県に住む25歳(当時)の男性。内気な性格で友達も少ない彼が恋したのは、他の田舎町から出稼ぎに来ているマッサージ嬢だった。もっとも、朝8時から午後5時まで働く公務員の彼と、毎日の午前中以外はすべて店にいて働き続ける彼女とはお互いの時間が合わない。彼は数年前から(!)携帯のメールで気持ちを伝え続けたにも関わらず、彼女はなかなかデートをOKしてくれなかった。

だが、最近になって彼女が「時間があるときにこっちから誘ってあげる」と言ってくれたそうである。常識的に考えて、数年間誘い続けてデートひとつできていない時点で脈は無さそうな気がするのだが、質問者は有頂天だ。そこで、こんな質問を書き込むのである。


「こういう仕事(=マッサージ業)の女性についてどう思いますか?
別の省出身の、社会的身分もかけ離れた相手と結婚することについて、
なにか思うところはありますか? 
もしも僕たちが今後お互いに恋人同士になった場合、結婚できると思いますか?」


いくら中国社会で評判がよくない業種とはいえ、好きな女性について話す際に「こういう仕事」などと言ってしまうあたりに、彼がモテない原因が隠れていそうな気がしないでもない。付き合う前から結婚を考えてしまう点も、純情と言おうか世間知らずと言おうか...。こちらに寄せられたアドバイスを見ていこう。


「自分が本気なら他人がどう言ったって腹をくくればいいんじゃないのか?」(浙江省 25歳♂)

「真剣にそう思っているなら俺にはなにも言うことはないよ。ただ、彼女の職業を軽蔑するようなことはするな。この手の仕事をやっている女性は、なかなか他人を信用しないものなんだ。好きならしっかり愛してやれ。そうでなければ、自分でも意識せずに彼女を傷つけることになるぞ」(♂)

「彼女がもうすこし自重できる人なら、そんな仕事はしなかったはずです。他の人を探した方がいいと思います」(江西省 ♀)

「絶対にムリ、あり得ない! 最後は悲惨な目に遭いますよ!! 別れてください!」(♀)

特徴的なものをピックアップしてみたが、男性と女性の回答内容がガラッと違う印象だ。 マッサージ業や肉体労働系の仕事には地方の農村から出稼ぎにきた労働者が就業するケースが多いため、「ヨソ者」を嫌いがちな中国人の心理が偏見に拍車をかけている側面もあるようだ。

職業に貴賤はないし、マジメなマッサージ師だってたくさんいるはず。質問者の男性は、余分な先入観を持たずに彼女に接してあげて欲しいものだが――。

第13回 実際に『中国式離婚』をしてみた男女の内緒話

中国現代ドラマ、『中国式離婚』が好評レンタル中だ。ドラマの内容を少しだけおさらいしておくと、主人公は中国の都市部に暮らす30代後半の男女。妻のシャオフォンは当初、夫の稼ぎに不満を持ち、後には夫が浮気をしているという妄想にとりつかれてさまざまなトラブルを引き起こす。現代の中国の家庭問題が透けて見えるドラマだ。

そこで気になるのが、ドラマの主人公たちと同世代で、離婚してしまった男女の姿である。彼らのリアルな声を、現実社会における『中国式離婚』の例として紹介してみることにしたい。

今回の引用元は、中国の大規模掲示板『百度貼吧』の「60後」(=1960年代生まれ世代)板。そこに、こんなトピックが立てられていた。

【「60後」世代で離婚経験者の男女のみなさん、語りましょう】 http://tieba.baidu.com/f?kz=865898495


「サラリーマンだし、経済的には何とかなっている。
一人で過ごすのは拘束がなくていいよ。
でも、もう40代だしいろいろな責任が肩にかかってくるなあ...。
結婚は運だ、理想の相手に巡り合うのは難しい!」 (男女いずれか不明)

「若い頃は中国の西南部の田舎にいて、現地で結婚して女の子が1人。
離婚してもう7年だな。5年前に故郷の浙江省に戻った。
生活はそこそこイイよ。仕事をしてネットをしてね。
でも、仕事関係の知り合いばかりで周囲に心を通じ合えるような人がいないんだよな。
娘にも1年に1回しか会えないし。
再婚はしたいしチャンスもあったが、どうも踏み切れない...」(浙江省 44歳♂)

「別れた。でも後悔はしていない。
前妻はいつも「離婚するわよ!」って脅してくるような人だったんだ...。
自分の子どもも、「パパとママは合わないね」と言っていた。
俺は10数年頑張って結婚生活を続けて、稼いだカネも全部渡してきたのに。
返ってくるのはガミガミと文句ばかりでな...」(♂)

「離婚はメリットもデメリットもあったかな。
たまに1人で寂しくなって友達に電話したのに、誰も出てくれなかった時とか。
でも、とりあえず現時点で再婚は考えていないわ。彼氏は欲しいけど」(♀)


中国の古典『論語』には、「四十にして惑わず」という一節がある。だが、現代の中国の40代は(日本と同じく)まだまだ迷い中。むしろ中年になってから、「本当にこの人でよかったのか」と悩んで離婚に踏み切ってしまう人も少なくないようだ。

中国の既婚者にとって、決して他人事ではなかった『中国式離婚』。本国での放送当時の人気の秘密はここらへんにもあったようで――。

アジアの歌姫、フェイ・ウォンが主演の『ウソコイ』というドラマが、2001年に放送されたことがある。視聴率がふるわずに途中で打ち切りになってしまったらしいが、中国人の「偽装結婚」という刺激的なテーマを日本のドラマで取り上げた勇気は立派だ。もしも中国で放送されていれば、『中国式離婚』や『知らない男と話をするな』に負けないくらい話題をさらったかもしれず、まことに惜しいところだと思う。

ちょっと古いデータだが、2006年に日中間で成立したカップルの件数は約1万3千人。中国人との国際結婚は2002年に1万人弱の件数を数えて以来、毎年数百件ペースで増加している(ちなみに、内訳の9割が日本人男性と中国人女性の組み合わせだ)。もちろん、本当に両者が愛し合って結婚をするカップルが大多数のはずなのだが、なかには不届きな連中もいる。偽装結婚である。

偽装結婚にはいろいろとパターンがある。一番よく知られているのが、中国人女性が仲介業者に金銭を支払い、偽装に合意する日本人男性と書類の上で「結婚」するケース。中国人女性は日本の配偶者ビザを得られ、日本人男性や仲介業者には金銭の報酬があるため、当事者だけに限ってみればウインウインのビジネスだ(ただし違法)。ほか、日本人男性側は本気で結婚するつもりなのに、いざ結婚するや中国人女性が逃げてしまう――というケースも最近は増加傾向にあるらしい。国際結婚お見合いなどで結婚に至った場合に、比較的多く見られるようだ。

日本人としては疑心暗鬼になってしまいそうな話である。だが、一般の中国人の立場からは、偽装結婚はどう見られているのだろうか。中国の質問サイト『百度貼吧』に、面白い質問が載っていたので紹介してみよう。

【日本人との偽装結婚】 http://zhidao.baidu.com/question/101922843.html


質問内容を要約すると、「偽装結婚」をしたいのは日本留学中の女子留学生。成績が振るわず、これ以上学生生活を続けても学費のムダなので(!)、配偶者ビザで日本に滞在したいのだという。

馳星周さんの小説『不夜城』に出てきそうな凄まじい話。こちらへのネットユーザーの反応は以下のようなものである。


中国人が日本に行ったってなかなか成功しないよ。日本に移民なんてアホのすることだ。中国に残って、玉の輿を狙えばOKじゃないか。(♂)

質問者みたいな人を軽蔑するね! 日本人とわざわざ偽装結婚するなんて、まともな中国人ならそんなことはしない。恥さらしもいいところだ。(遼寧省出身上海在住 27歳♂)

偽装結婚なんてやめておけって...。今日ニュースで見たけれど、偽装結婚した韓国人が逮捕されて牢屋に入れられたって言っていたよ。(北京出身 26歳♂ ※おそらく日本在住)


回答者の論調は、日本が嫌いなので反対する人と、違法だから反対する人に分かれる。だが、基本的に偽装結婚は中国人の間でも眉をしかめられる行為なのだ。ちょっとホッとする内容だ。

本気で国際結婚をする大多数の日中カップルにしてみれば、偽装結婚なんて迷惑な話でしかない。反対する風潮が、もっと盛り上がってくれるといいのだけれど...。

筆者紹介:安田峰俊(迷路人)

1982年滋賀県生まれ。広島大学大学院文学研究科修士課程修了(中国史)。中国の大規模掲示板を日本語に翻訳するブログ『大陸浪人のススメ』管理人。近著に『中国人の本音』(講談社)。ほか、2010年6月4日発売の講談社のノンフィクション誌『G2』VOL.4にて「中国『禁断のメディア』紀行」を発表。日本人の先入観に捕らわれない中国の姿を追う。メールはmeirojin@gmail.com。

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