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ロングインタビュー前編|「奇蹟」脚本家リン・ペイユー(林珮瑜)、亡き友人に捧げた原作小説をドラマ化

台湾BLファンの間で、一番ドラマ化してほしい小説NO.1として名高い『奇蹟』。その原作者であり、ドラマ化にあたって自ら脚本も手掛けたリン・ペイユー(林珮瑜)さんのインタビューをお届けします。ドラマ化の経緯をはじめ、キャスティングや撮影裏話についてもお伺いしました。

リン・ペイユーさん
リン・ペイユーさん

【プロフィール】リン・ペイユー(林珮瑜)=脚本家、作家、プロデューサー
高校生のときに作家デビュー。以降、呂希晨、七草など複数のペンネームで恋愛小説を多数上梓。近年は「アニキに恋して」(15)、「リーガル・サービス -最大の利益- 」(19)シリーズなど、アイドルドマから職業ドラマ、ファンタジーまで幅広いジャンルを手掛ける脚本家として活躍。特にBL作品で圧倒的な人気を誇り、「台湾BLドラマの母」「BLドラマの女王」の異名を持つ。代表的なBLドラマは「HIStory ボクの悪魔」(17)、「HIStory2 是非~ボクと教授」(18) 、「HIStory3 圈套~ラブ・トラップ」(19)、「We Best Love:永遠の1位/2位の反撃」 (21)、「My Tooth Your Love ラブリー・クリニック」(22)など。最新作「奇蹟」(23)では脚本だけでなく、アニタ・ソン(宋鎵琳)と共に プロデューサーも兼任した。

  

「約束を果たすため、再び小説を執筆」

——まず原作小説『奇蹟』執筆のきっかけについて教えてください。

リン・ペイユー 以前、小説を書いていた当時の編集者との約束がきっかけです。いつかまた文学界に戻るという約束を交わしていました。彼女は元々私の小説の愛読者で、後に私の担当編集者となった友人でもあります。執筆料が比較的いいこともあり近年はドラマ脚本を手掛けていましたが、彼女は「文学界に戻ってきてほしい」とずっと私を鼓舞してくれていました。彼女はすでに他界してしまいましたが、彼女との約束を守るため、一緒に見た夢を叶えるためにもう一度小説を執筆しようと思ったのです。彼女の闘病中も、物語やプロットについて話し合っていて、たくさんのアイデアを彼女と共に積み上げましたが、カムバック一冊目を見せることはできませんでした。

——きっとどこかでご覧になっていると思います。「奇蹟」のプロットもその編集者の方と考えられたのですか?

リン・ペイユー 実はそういうわけではありません。不況の出版業界にあっても大衆文学はある程度の実績があったので、これまで自分が脚本で手掛けてきたBLという切り口から始めようと思い、それがたまたま『奇蹟』でした。これまで彼女とブレインストーミングしてきた物語はまだ書いていないので、今後小説なり漫画なり出版という形で皆さんにお見せできればと思います。

——それも楽しみですね。『奇蹟』のドラマ化は、小説執筆時から想定していたのでしょうか?

リン・ペイユー 明確に想定していました。小説家であると同時に脚本家でもあるので、まず考えたのは、この小説を基に映像化やコミカライズなどIPコンテンツとして展開できるかという点です。メディアミックスはコンテンツをより多様化し、さらにその価値を高められますし、IPコンテンツの管理面にも興味があったので、試してみたかったのです。ですから『奇蹟』の出版当時、MVやティザー映像を制作し、メディアミックス的なプロモーションを展開したところ、再生回数、小説の売り上げどちらを取ってもウィンウィンな結果となり、小説の販促に非常に効果的でした。

「奇蹟」場面写真1
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

——ではドラマ化の際、原作を忠実に再現されたのでしょうか?

リン・ペイユー 実はかなり違う点もあります。小説では白范(バイファン)CPの恋愛模様を軸に執筆したので、陳艾(チェンアイ)CPは行間に隠されています。

註)
白范CP:「奇蹟」のメインカップル、白宗易と范哲睿を指す略称
陳艾CP:「奇蹟」のサブカップル、陳毅と艾迪を指す略称

——割合で言うとしたら、小説では白范CP 9に対し、陳艾CPは1くらいだそうですね。

リン・ペイユー ええ。映像化では原作の再現度も大切ですが、原作を既読の方には新鮮さも感じてほしいと考えていました。100%忠実な再現ではワクワク感がなくなるので、ずっと存在していたけれど原作には描かなかった陳艾CPの物語を膨らせました。ドラマ化された映像を通して、2次元と3次元が融合した作品世界を皆さんにお見せできれば嬉しいです。

「奇蹟」場面写真2
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.


「BLに興味を持ったきっかけは日本の作品」

——小さな出来事が積み重なって相手に惹かれていく過程が、とても丁寧に描かれていました。こうしたエピソードのアイデアはどのように得られるのですか?

リン・ペイユー もちろん友人から聞いたエピソードもありますが、自分自身これまで何度も片思いをしてきた経験からです(笑)。人を好きになると、相手の小さな仕草や些細なことに気づきますよね。それにドラマや小説の中の愛は、現実では手に入らないことが多いので、自分が想像しうる起こりそうなこと、あるいは実際に見たり感じたりした記憶や観察を積み上げています。愛とは、大枚をはたいて得られるものではなく、日常のほんの些細なことで誰かを愛している、愛されていると感じられることだと思います。

——キャラクターもそれぞれ魅力的ですが、どのように作り上げたのですか?

リン・ペイユー それは日本の漫画に感謝しなければなりませんね。実はBLに興味を持ったのも、日本の漫画や小説がきっかけです。元々日本のアニメも大好きですし、日本のキャラ設定の概念はとても立体的なので、キャラクター設定資料集もたくさんコレクションしています。(先述の)編集者の友人が、日本のキャラクター設定の基本理念を私にごり押しして植え付けてくれました(笑)。いえ、私がもっと上手に書けるよう教えてくれたというべきですね。おかげでキャラを作り込む際は、嗜好などの細部まで慎重に、かつ立体的に作り上げることを意識し始めました。それから自分の中にそういうスタイルが培われていき、脚本家に転向しドラマの脚本を担当するようになってからも、同じやり方を心掛けています。

「奇蹟」メイキングカット
©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.

——影響を受けられたという日本の作品を教えてください。

リン・ペイユー 高校3年のとき初めて読んだBL作品が、友達に薦めてもらった尾崎南先生の『絶愛』でした。ほかに森本秀先生の作品は『G・DEFEND』をはじめ全部読んでいます。

——時折きれいな日本語を話されていますが、もしかして日本語で読まれたのですか?

リン・ペイユー 
当時は繁体字版を読みましたが、(翻訳される前に)最新巻を読みたいので、日本語も少しわかるようになりました。

——BLで日本語を勉強されたわけですね!

リン・ペイユー (日本語で)はい、愛のために(笑)。


後編につづきます


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「奇蹟」
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©2023 “KISEKI: DEAR TO ME” Partners All Rights Reserved.
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聞き手・文:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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