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【インタビュー】「悪との距離」ウー・カンレン "神格化しない、美化しすぎない"

圧巻の金鐘奨6部門受賞、史上最多14ノミネート!台湾ドラマの歴史を変えた、いま見るべき傑作ヒューマンドラマ「悪との距離」。本作で無差別殺人事件の犯人を弁護する人権弁護士・王赦(ワン・シャー)を演じたウー・カンレンに本作について話を訊いた。


 — 「悪との距離」に出演することになった経緯や、出演の決め手を教えてください。

ウー・カンレンさん(以下、ウー・カンレン) 脚本家のルー・シーユエンさんは、本作を執筆している段階から脚本をいろいろな人に見せて、意見を交換していました。僕はその当時からこの脚本が好きでした。その後、制作会社から僕に出演オファーが来て、出演することになりました。


— "王赦"を演じるにあたり、監督や脚本家からリクエストやアドバイスはありましたか?

ウー・カンレン 監督と脚本家は、このキャラクターに対する意見が必ずしも一致するとは限りません。僕は脚本を読み込んでいる段階でキャラクターの仕草やセリフに不明点がある場合は、脚本家に意見を求めます。ルー・シーユエンさんからはたくさんのアイディアを頂きました。一方、お芝居をする時には、監督はもっと広い視点でこのキャラクターを解釈してくれました。お二人からそれぞれ異なる刺激を頂きましたね。


— ウー・カンレンさんは、演じられた"王赦"という人物をどのように解釈し演じましたか? 演じる上で大切にした点や、特に意識した点があれば教えてください。

ウー・カンレン このキャラクターを演じるため、僕はある人権弁護士とお話しをし、裁判に関する書類も読みました。僕が思うのは、人権弁護士は人から見ると「正義」のあることをしていますが、もちろん彼らにも個人的な悩みや欠点があります。例えば短気な人もいます。なのに、こういう人たちはよく世間で「正義感が強く、強い信念を持っている」などの印象になりがちです。なので、僕がこのキャラクターを演じた時に一番重視していたのは、このキャラクターを神格化しない、美化しすぎないことです。そうしてしまうとリアルじゃなくなるので。

— どのシーンの撮影が特に印象に残っていますか?

ウー・カンレン 王赦が妻の美媚(メイメイ)の家族の前で、酔っ払って死刑に対する考えを吐き出すシーンです。


— 「悪との距離」の名場面または名台詞を挙げるとしたら?

ウー・カンレン 一番好きなセリフは、王赦が言った「善人と悪人を分ける基準に正解はあるか?」です。一見これは二択の問題に聞こえますが、よく考えると「基準に正解はあるのか」というとても意味深くて討論すべき問題だと思います。その「基準の正解」とは?なぜこの社会に「正しい基準」がなければいけない?その「正しい基準」を決めたのは誰だ?少人数だったり物事を見る基準が違えば、聞く価値がない基準だと扱ってしまっていいのだろうか?

— 本作には様々なキャラクターが登場し、その全員にドラマがあります。本作に登場するキャラクターの中で、どのキャラクターが印象に残っていますか?

ウー・カンレン 一番印象に残るキャラクターは王赦です。僕が演じたからですね。ハハハ(笑)


— 共演されて印象に残っている俳優さんはいらっしゃいますか?

ウー・カンレン 僕と共演シーンが多い(丁美媚役の)チョウ・ツァイシーさんです。彼女との共演は初めてで、よくコミュニケーション取ってお互いにアイディアを交換していました。
彼女に対する印象は、最初と最後では随分変わりました。僕たちのシーンは多くないですが、撮影が全部終わった後、本当にこの人と一緒に人生の大事件を経験した感じがしました。離婚寸前の危機を一緒に乗り越えたみたいで、子供を失った悲しさを一緒に経験したみたいで、仕事での難関を一緒に直面したみたいな感じがしました。彼女が真剣に、様々な深い事件に付き合ってくれた感じがしました。

— 社会現象になるほど人々の心をつかんだ「悪との距離」ですが、その魅力はどんなところにあると思いますか?

ウー・カンレン 現在の社会では、重大事件が発生した時に人は冷たいリアクションを取ることになっています。なぜなら、答えがない問題がいっぱいあるからです。単純な批判者にはなりたくないし(批判するのは簡単だけど問題解決にはならないから)、自分の意見も批判されるかもしれない(特にインターネットの世界では、何かを話せばすぐ批判されてしまうから)。このドラマは、そういった沈黙を貫こうとした人々を起こしました。


— 「悪との距離」は視聴者に様々なことを考えさせる作品です。ウー・カンレンさんご自身もこの作品を通じ、強く考えさせられたことがあれば教えてください。

ウー・カンレン もっと勇気をもって自分の考えを伝えるようになりました。今まで、自分の考えを伝えることは難しいと思っていました。信念が揺れることも多く、自分の立場の関係で、多くのことに対して誠実に答えることができなかったり、重大な点を避けて些細な点ばかり取り上げたりして、勇気が足りませんでした。特にインターネットの世界では。ですが本作の放送期間中、僕は勇気をもって自分の本当の考えを伝えるようになりました。


— これから「悪との距離」を見る日本の視聴者へメッセージをお願いします。

ウー・カンレン 僕は子供の頃から日本の映像作品を見てきました。日本の幾つかの悲しい社会事件も映像化され、台湾視聴者の共感を呼んでいました。やっと台湾でも社会事件をテーマとした、国境を越え視聴者の共感を呼べるドラマが誕生しました。とても嬉しく思っています。日本の視聴者の皆さんも「悪との距離」で描かれていることに共感し、本作を通して傷に向き合う勇気をもらって、悲しさを癒すことと、社会に対立や分岐がなくなることを祈っています。

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