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「妓女」ってどんな存在だったの?|中国時代劇トリビア#2

中国時代劇の中で、ひときわ華やかないでたちで登場する「妓女」。この「妓女」と呼ばれる女性たち...いったいどんな存在だか知っていますか?日本でいうところの遊女?妓女が集まる妓楼は、今風でいうならキャバクラ!? そんなちょっぴり妖艶でナゾめいた「妓女」について、今回はご紹介していきます。

「金蘭良縁」場面写真

「金蘭良縁」より ©China International TV Corporation.

中国で妓女という言葉が登場するのは、後漢代からとも言われ、「妓」という文字には「伎」「技」という意味があり、妓女という言葉と同じように使われていた娼妓の「娼」の文字は「唱」の仲間であることから、いずれも歌や踊りなどの芸技の才を持った女性たちを意味する呼び名として「妓女」としたようです。わかりやすく「妓女」本来のイメージを表すとしたら、選ばれた女性アーティストということになりますね。しかし、妓女の提供する「技」は、芸術に限ったものだけでなく、身体的提供も時に含まれていたので、ドラマや映画では男性の身も心もとりこにする妖艶な存在として描かれるのです。

「賢后衛子夫」場面写真

「賢后 衛子夫」より。©Huace Media International Limited

妓女は仕える対象、場所によって身分や呼称が異なっていました。その分類をいくつか紹介していきましょう。

・宮妓...皇帝の後宮に所属し、皇帝に仕える。戦争に敗れて服従(奴隷化)させられた高い身分の女性や、漢代以降は罪を犯した高官の妻子たちが採用された。外国や諸侯からの献上品として差し出された女性の場合もある。教坊・梨園と呼ばれる訓練機関で芸技を磨く。代表は「賢后 衛子夫」の衛子夫、「クィーンズ―長安、後宮の乱―」の趙飛燕など。

「賢后衛子夫」場面写真

「賢后 衛子夫」より。©Huace Media International Limited

家妓
家庭に所属し、家長に仕えてその寵愛を受けるものは妾・姫と呼ばれることも。高官、貴族の家だけでなく、のちに商人や豪農の身分でも家妓を所有するようになっていく。家に招いた客人の接待、芸の披露も仕事の一つ。代表は「麗姫と始皇帝~月下の誓い」の始皇帝の母・趙姫。

営妓
軍隊の管轄下に置かれる。軍営に所属する官人や将兵をその芸妓で楽しませる。

官妓
府や州の管轄下に置かれる。主に地方官僚やその土地の有力者に供せられる。

民妓
民間の妓館にいた私有の妓女。下級官僚から庶民の相手をし、身体的提供を主とする女性も含まれる。代表は「水滸伝」の李師師など。


「花と将軍~OhMyGeneral~」に登場する宋代の官妓は、官の管轄下でも実際は妓楼や酒楼に属していて、官僚たちだけでなく、一般酒客のお相手もしていました。そしてその収益は州府の財源へ...。ドラマで、葉昭ら将軍チームと玉瑾らお坊ちゃまチームが同じ妓楼で鉢合わせするのには、こんな理由があったのですね!


「花と将軍」場面写真1

「花と将軍」場面写真2

「花と将軍~OhMyGeneral~」より。©上海興格文化傳媒有限公司 ©Shanghai Xingge Culture&Media Co., Ltd

上層に属する名妓たちは、優れた教養の持ち主であり、高官や名だたる文人たちとの交流によって文化を発展させ、政治にも深くかかわっていくようになっていきました。そんな才気あふれる妓女たちが盛り上げる酒宴は、いったいどんな様子だったのでしょうか?

唐代では、食事の後にお酒を飲むのが通例なので、午後に宴が開かれて、日暮と共にお開きになるのが一般的。夜に宴を開くのは灯りが高価だったため、非常に贅沢な催しとなり、妓館で宴を開く場合、夜は倍の値段を取られたのだとか! そして宴の席では「花と将軍~OhMyGeneral~」の玉瑾のように、妓女だけなく客や主人が音楽や舞いを披露したり、勝負事に負けたほうがお酒を飲むゲーム、酒令が盛んに行われたりしました。酒令には壺に矢を投げる「投壺」のような武術を競うものがゲーム化されたものから、詩や音楽的感性を取り入れたもの、儒教の教養を背景とするゲームなど様々な種類がありました。こうした遊びごとを取り仕切り、座を持たせるのも妓女の技量。多少見た目が控えめだとか、年齢が若くなくとも、話術に長け、知性をくすぐる粋な酒令ができる妓女が酒宴では大人気となり、客人を大いに喜ばせたそうです。

「花と将軍」場面写真3

「花と将軍~OhMyGeneral~」より。©上海興格文化傳媒有限公司 ©Shanghai Xingge Culture&Media Co., Ltd

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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<参考文献>
東方書店 斎藤茂著「妓女と中国文人」
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