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【きゅんとあじあ】台湾映画memo 「太陽的孩子」

(写真:台北電影節提供)

皆さん、こんにちは。
シネマート六本木 元支配人の村野です。
今回は、〈2015台北電影節〉にて鑑賞した台湾映画「太陽的孩子」をご紹介いたします。


太陽的孩子 Wawa No Cidal
[2015/台湾/99分]  ※ワールドプレミア

監督:鄭有傑(チェン・ヨウジエ)、勒?.舒米(Lekal Sumi)
出演:阿洛.?力亭.巴奇辣(Ado?kaliting?pacidal)、徐詣帆(シュー・シーファン)


台北電影節にてグランプリを獲得した『一年の初め』や、「ヤンヤン」で知られる鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督の待望の最新作!
7月の〈2015台北電影奨 授賞式〉では、見事、観客賞に輝きました。

美しい観光地というイメージが強い台湾東部の花蓮を舞台に、一度は手放そうとした土地と再び向き合おうとするアミ族の人々の姿を、様々な社会の壁を織り交ぜ描いた感動作。
勒?.舒米監督の初ドキュメンタリー作品「海稻米的願望」に感動した鄭監督が、合作を提案。水田を甦らせようとした、勒?.舒米監督の母親の実体験がベースになっているそうです。

テーマからするとシリアスな作品を想像されるかもしれませんが、子供たちの伸びやかさが、作品に清々しい風を吹き込んでいます。

主演はこれが映画初出演となる、アミ族出身の歌手、阿洛.?力亭.巴奇辣。
家族を残し台北のテレビ局で働くヒロインが、父が倒れたのを機に故郷に戻り、やがて民族の誇りに目覚めてゆく姿を力強く演じ、作品に説得力を持たせています。

冒頭、日本でも報道されていた学生運動、「ひまわり運動」の模様を各局が一斉に取り上げている様子が映し出されます。その裏では、同日に行われていた原住民のデモのニュースがかき消されていたのです。その事実に腹を立てたヒロインが抗議するシーンは、非常に考えさせるものでした。

(写真:台北電影節提供)

また、『セデック・バレ』で花岡一郎を演じた徐詣帆(シュー・シーファン)が、リゾート開発を推進する企業の仲介役として登場。民族の尊厳を貫こうとした『セデック・バレ』とは異なり、祖先から引き継いだ土地を売ろうとする青年の姿に、原住民が直面している現実を考えさせられました。

さらに、とても重要なシーンで、「演技以上の感情が溢れたのでは?」と思わせる印象的な青年が出てきて、確認しなきゃと思っていたところ、なんと『KANO』の3番ショート上松君を演じた鐘硯誠(ジョン・イェンチェン)さんだと教えてもらいました! どうりで目についたわけです。短いのですが、とてもいい演技でした。ご覧になる方は是非探してみてください。

最後に、本作のエンディングテーマ《不要放棄》を、アミ族出身のSuming(スミン)が書き下ろしています。Sumingといえば、彼が所属していた、原住民により構成されたバンド圖騰(トーテム)のドキュメンタリー『トーテム song for home』をシネマート六本木で公開した際に、登壇していただいた思い出があります。懐かしい...

(写真:台北電影節提供)


【ストーリー】
故郷に二人の子供と父を残し、ジャーナリストとして台北で働くアミ族出身のパナイ。父が倒れたのを機に故郷に戻った彼女は、多くの土地が売りに出され、役所公認のもと、リゾート開発の交渉が進んでいることを知る。祖先から受け継いだ土地を守ろうと、水路の再建に尽力する彼女の訴えに、諦めていた町人たちもようやく理解を示すようになった。そんな折り、近所のおばあさんの土地が、国の所有に変わっていたという問題が発覚。稲が実った田を前に、座り込みの抗議活動をする住民たちだったが...


「太陽的孩子」公式Facebook
https://www.facebook.com/wawanocidalmovie






(文:村野奈穂美)


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