―いやまだ、もうちょっと(笑) 台湾はどうですか?
村野:実は私が劇場で働きたいと思ったひとつの要因に、台湾映画祭がありました。
1997年かな? 三百人劇場で台湾映画祭が開催されていて。チャン・チェンが来日したりして。ほんの数本しか観られなかったのですが、これがすばらしいラインナップで。
私もこんな映画祭をやってみたいなと。


―それが、村野さんの台湾愛に繋がっていくわけなんですね?(笑)
村野:そうですね(笑)
香港映画から入って、韓国映画に対しては尊敬と言いますか、すごいなという気持ちでずっと触れてきた中で、台湾映画に行きつきました。
香港映画を見ていくと、自然と台湾映画に触れていくんですよね。ウォン・カーウァイ作品でトニー・レオンを知って、さっき話したビデオ祭りでトニー・レオン週間がやってくるわけです。それでトニー・レオンを調べていくと、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の『悲情城市』(89)が必ず紹介されていました。トニー・レオンは広東語を話すので、普通語(北京語)も台湾語もしゃべれない訳なんですよ。なので、口のきけない設定になった、という前知識だけはあって。

映画は日本の敗戦から始まっていくんですけど、そこに描かれている事が全く解らないわけなんですよ。その事にまず衝撃を強く受けて。すぐお隣という距離で、日本が関わっているのに日本人である自分が知らないという。「なんでこんな悲劇が起きているのだろう?」という事が全然解らないことに、愕然としたんですね。

その事があり「アジア映画を観るのであれば、ちゃんと相手のことを学ぶべきだ」と思って、台湾の歴史を勉強したんですね。
で、台湾に行ってみたいなと思うようになるのですが、頭でっかちになっているから、すごくこう、日本人に対して嫌悪感を抱いているんじゃないかとか、少しビクビクしながら台湾に行ったんですね。
でも台湾の空港に降り立った瞬間から「あれ?また成田空港に戻ってきたの??」という感じで(笑)同じ風景が広がっていて懐かしい気持ちにさせてくれたり。
あとはよく言われますけど人が本当に親切で、街で地図を広げると人が集まってくるみたいな。「どうした?どうした?どこに行きたいんだ?」という状況になったりという体験をして、最初はビクビクしながら行ったのに、全然温かく受け入れてくれて。

しかも、着いていきなり、チャン・チェンと遭遇するという(笑)


―それはハマりますね(笑) それで台湾映画祭は?
話しが長くなりますけど......
台湾映画に限らず、韓国映画なども、ブームに火が付く瞬間があるじゃないですか。
私は90年代後半にファンになっているので、80年代の〈香港ニューシネマ〉を体験してない訳なんですよ。だからリアルタイムで体験している人達が羨ましくて。憧れがあった訳なんですよ。

その後韓流ブームが起きますが、じゃあその次はどこだ?と。あ、台湾だ、と。
台湾映画ってすごく落ち込んでいたんですね。ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンなどを排出した後、台湾の人すら台湾映画を観ないとか、1本も製作されていないという時期があったんですよね。


―自国の人達が観ないという時期があったんですね?
村野:むしろ日本人の方が台湾映画を観てるのではないかという冗談がでるくらい。
ただ映画製作における実力はあるわけなんですよ。だからこのまま終わってしまうという事は絶対にないと思ったんですね。
そこで今、台湾映画を見続けていたら、これから台湾映画が来るぞ!という瞬間に立ち会えるじゃないかと思ったんです。


―出待ちみたいな?
村野:そうですね、出待ちみたいな(笑)
そして2008年の『九月に降る風』という作品で、「わっ、きた!」と思ったんですよ! 身震いしました。しかも私がちょうどシネマート新宿に異動した時に日本公開という。まさに運命(笑)
台湾映画復活の決定打と言われているのは、『海角七号 君想う、国境の南』(2008)ですね。国民映画になり台湾の人達もこぞって台湾映画を観にいくようになりました。


―台湾映画史上№1の興行収入でしたもんね。
村野:興収何億円なんて、考えられなかったですもんね。 映画が産業になるところを眺めていました。その頃、SPOが『台湾シネマ・コレクション2008』を開催するわけです。

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