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「ツンデレ」を考える。

世の中(特に日本)において「ツンデレ」という言葉、

あるいはその行為が市民権を得てからひとつの時代が過ぎようとしている。



しかし考えてみて欲しい。

いわゆる「デレ」の部分に関しては、知るまでにはそれなりの接点、

また関係性に(親密度に?)ある程度の時間をかけないと把握できない部分であり、

普通ならいくら後になって「あの人、本当はこういう良いとこがあるんだよ。」

と言われたところで、あるいは知ったところで、

常日頃から「ツン」の部分ばかり散々喰らっていればもはやノーサンキューである。

むしろ二度と関わりたくないと思いながら過ごしているだろう。

感情が「デレ」を受け入れるところまで辿り着かない。辿り着こうとしないのである。



大嫌いなセロリを「実はビタミン豊富なんだよ。」と言われたところで

「おっそうか!じゃあセロリ大好き!」とはならないのと同じである。

ビタミンなら他でまかないますから嫌いなもんは嫌いです。

と、この心理と同じである。(違う)





あくまで表面上のパーセンテージであるが、

ツンが90%、デレが10%だなんて果たしてそれは本当に魅力的な人なのだろうか。

その10%のために、日頃のロクでもない90%のツンを受け入れる度量は

少なくとも僕にはない。

せめて半分は優しさで出来ていて欲しい。



不良少年がたまに掃除してるとイッキに好感度が上がり、

優等生がたった1度でも誰かの陰口を叩いた日にはもう"そういうヤツ"扱いとなり

わすかな10%のその(意外な?)部分が、キミは1000%くらいのイメージにはね上がる

巧妙なトラップと同じである。(違う)







しかし、人はなぜ「ツンデレ」に惹きつけられるのか。

なぜ入江直樹はこうも受け入れられ、魅力的なのか。





答えは簡単である。





既に「入江直樹」を知っているからである。





ツンだけのただのイヤな奴だけではないのはもちろん、

デレも決して10%ではない事を既に知っている安心感こその人気であり、

さらには彼自身の未完全な愛情表現や人間性の成長過程こそが

「イタズラなKiss」という物語全体を含めての最大の魅力なのである。





既に「デレ」を知っているからこそ成立する「ツン」、

既に「ほろ酔いの楽しさ」を知っているからこそのビールの「苦味」、

現実社会で出会ってずっと「キミ嫌いだから近寄るな」などと振舞われていたら

「ツンデレ好き」とはならない。それこそただの苦い人生である。

冒頭に書いたように、相手の良い部分を後から知ったところで

心は既にノーサンキューだからである。





ちなみに琴子の場合は入江君のツンを知る以前から既に一目惚れだったので

ツンデレ好きの論点とは対象外とする。



琴子自身は「恋は盲目・ネコまっしぐら日本代表」としてがむしゃらに健気に

頑張っているだけであり、決して本人がツンデレを好きな訳ではないのだ。







「こんなモノもらっても全然嬉しくないんだからねっ!!!」と言われて

ツンデレ萌え~!となるのも、

こちらに好意を持ってくれてる事をなんらかの形で既に知っている安心感であり、

言葉の裏を知らずに直訳だけで受け止めてしまうと、頭の中は「世界の終わり」である。

通常ならせっかくの贈り物に対してそんなセリフ吐き捨てられた日には

明日会社休みます状態である。



いくら白ヒゲのぽっちゃり先生に「諦めたら試合終了ですよ」などとけしかけられても

とてもじゃないが逆転のシュートを放つ気力なんてないだろう。その時は。





つまり現実において「ツンデレ好き」という表現は

安心感という精神の余裕から派生する言葉であり、

逆に言うとデレという安心感を、ツンより先に得られるシチュエーションは

そうそう無いって事も人生の難しさでもあると言える。



世の中のツンデレ(自称含む)に属される諸君は、

ぜひそのあたりのサジ加減は上手く立ちふるまって欲しいものである。



また、この言葉が浸透したばかりに「こいつどうせツンデレだろ?」と決めつけ、

調子に乗って深入りすると本当に氷河期なみのツンしかなくて低温やけどしました、

という報告も聞いた事があるので軽はずみな思い込みには注意が必要だ。





逆のパターンで実は「デレツンでした」の場合、それはそれでやっかいだが

それはまたどこかの機会で。







<筆者プロフィール>

名前:UMS(エスピーオー男性社員)

出身地:福岡県北九州市

現在地:文京区

部屋:Yシャツと私

どうぶつ占い:ひつじ

好きなサッカー選手:なし

好きなタイプ:ツンデレ











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